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「聞いてない、知らない、言ってない」

2013年01月号 コミュニケーション OCP-プロジェクトマネジャー(L5)   伊藤 泰子

今回のテーマはエビデンスです。英語で書くとEvidence。

要件定義、開発、内部での結合テストが終わり、ユーザーテストの段階になって、お客さまのおっしゃる
「仕様と違う、こんな動きになるとは聞いていなかった」
「こんな事は知らない」
「そんな事は言っていない」
に対応する場合、必要になってくるのは「そんな事はありません。ほら、ここにこうあるではないですか」と言えるエビデンスです。

なぜそれが必要かというと、こういう話になった場合すべての立証責任はこちら側にあるからです。まあ、PMに限らず、この業界でお仕事をしてらっしゃる皆様には既知のお話しだと思いますが・・・。

前に某元請の下でサブシステムを担当していた時、某メーカーのPMが途中交代する・・・という事態になりました。その時のお客さまがあるパッケージの仕様について「聞いてない。これでは困る!」と言い出された事がありました。某メーカーの新PMは自分の知らない頃の話なので、「何か、この件について書いた議事録はありますか?」と担当チームを管理していた私に質問がきました。

その時は議事録は無かったのですが、説明した資料がありましたので、この資料を用いて説明したのですが・・・と言ったところ、再確認した某社PMからお客さまはこんな資料は知らないと言っていると聞かされ、びっくり・・・。
「・・・そうですか・・・」と、言った私のあまりの落ち込みぶりに某社PMが、これはこちらが真実・・・と思ってくださったのか、取りなしていただき、なんとか落としどころが見つかったのですが、これは希有な例です。

プロジェクトが半年を超える場合、怖いのは人の交代です。プロジェクト側は基本的に核となるメンバーを交代させないのが、原則だと思いますが、お客さまは別のルールで動いていらっしゃいます。

ずいぶん昔になりますが、仕様を確認していたキーパーソンが後任者に引継ぎ無しでカットオーバー直後に異動になられまして、後任の方からは「聞いてない、知らない、言ってない」のオンパレード。(それはそうですよね、そのころ後任の方はいらっしゃいませんでしたから・・)
世の中こんな事もあるのか?と呆然としながら、プログラムを修正するはめになりました。

プロジェクトの節目節目にはレビューや報告会などをきちんと計画し、どこで何が<どこまで>決まっているかを確認する事。仕様についての確認がどこでとられているかを<後で>確認できるようにしておく事。それを計画しておく事。
PMとしてはあたり前・・・と、思われるでしょうが、そのあたり前がやはりプロジェクトを守ります。

プロジェクト管理にウルトラCはありません。あたり前の積み重ねの上に、奇跡のウルトラCがあるように思います。(・・・本当の極意はウルトラCをしなくてもよい状態をつくる事です・・・たぶん)

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