PMマガジン
「知りながら害をなすな」

2013年01月号
  • 「知りながら害をなすな」
    OCP−プロジェクトマネジャー(L5) 山道 正英 

「マネジメントたるものはすべて、リーダー的地位にあるものの一員として、プロフェッショナルの倫理を要求される。 それはすでに、2500年前のギリシャの名医ヒポクラテスの誓いのなかにはっきり表現されている。知りながら害をなすな、である」(P.F.ドラッカー著『エッセンシャル版マネジメント』より引用)

私は、あるプロジェクトで「知りながら害をなし」そうになりました。(人によっては「知りながら害をなした」と判断されるかもしれません。)読者の皆様には「他山の石」としていただければ幸いです。

■「口出ししない」と決意
数年前、あるお客様で基幹業務へのパッケージ導入プロジェクトに、お客様側メンバー(お客様側リーダー・業務担当への各種作業支援及び助言)として参画していました。※1

このプロジェクトでは、当社とは別のベンダーさんのパッケージ製品を導入すること、私の主たる役割が「パッケージ導入時のノウハウ・テクニックの伝授」であること、「口を出しても、それを実行する権限がない」ことからプロジェクト運営に関して、お客様やベンダーさんにコメントすることを極力控えてきました。

■プロジェクト運営に関して、不安がよぎる
しかし時間が経過するにつれ、「プロジェクト、このままで大丈夫なのか?」と疑問を感じ始めていました。今回のプロジェクトは小規模で、またプロジェクトメンバーの作業負荷も考慮して、いわゆる教科書的なプロジェクト運営を必須としていませんでした。

しかし、プロジェクトが進行するに従い、

  • 各種作業の予定と実績に関する報告がない
  • 議事録の作成が遅れがち(1週間以上経過しても議事録なし)
  • ベンダー側、お客様側それぞれの残作業が不明確なまま
  • お客様側からの打ち合わせ回数増加要望に、ベンダー側が応えられない
  • お客様側メンバーから、ベンダーさんへの不満が聞こえてくる

など、「うまくいってないプロジェクト」の兆候が現れ始めました。

■やはり「遅れます」との連絡が...
そんな折、お客様側リーダーから「ベンダーさんから、基本設計書の作成完了が2週間遅れるとの連絡を受けた。ついてはベンダー側にプロジェクト運営に関する改善の申し入れをするので、プロジェクト運営の問題点を率直に指摘してほしい」との相談がありました。

期間が短いプロジェクトで、かつ要件定義・基本設計という最初のフェーズで2週間も遅延すると、後のリカバリーに相当な労力が必要ということは、直感的にお客様も理解されていました。
そこでプロジェクト運営に関して気になる点を、お客様側リーダーと意見交換しました。お客様からは「山道さん、ありがとう。大変参考になるし、ベンダーさんへはすぐに申し入れる」と感謝のコメントを頂きました。

■こちらから「提言」すべきだった
しかし、本当はお客様からの相談を待たずに、こちら側からプロジェクト運営に関して積極的に提言すべきだったのではないか、と考えています。

というのも、「プロジェクト運営に関して、不安がよぎった」時点で、すぐにお客様と意見交換していたら、「消火」ではなく「防火」出来たのではないかと...自分の役割に固執してしまったために、プロジェクトの成功に貢献するという大きな目標が見えなくなっていたのではないかと...

■「知りながら害をなすな」の大切さ、難しさ
今回の一連の出来事で、「知りながら害をなすな」という言葉の大切さ、それを実行する難しさを、改めて痛感しました。「害のあることを伝える」ことは、場合によっては勇気が必要です。伝えた結果、相手から非難を浴びたり、冷ややかな視線を浴びせられるかもしれません。

しかし、皆さんが自分が持っている経験・知識を生かし、相手のことを真剣に考えて発した言葉は、最後には必ず相手から感謝されると思います。「知りながら害をなすな」、ぜひ覚えておいてください。

※1:プロジェクトに関する補足

  • パッケージ・ベンダー決定方法:情報提供依頼書及び提案依頼書を作成した上で、ベンダーさんからの提案書を元に決定。
  • プロジェクト推進方法:ウォーターフォール
  • 参画作業フェーズ:プロジェクト計画立案・要件定義・基本設計

*本PMマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研の見解を示すものではありません。

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