PMマガジン

「SE++と書いて、PMと読みます」

2013年05月号 人的資源 OCP-プロジェクトマネジャー(L5)   吉田 隆光

■ PMもSEです
プログラミング言語CとC++の上位互換関係を、少々もじってSE++と銘打ってみました。PMも下(もと)はSEです。SEの能力上位がPMならば、SEとPMの違いはなんだろう? 今回のコラムは、SE++となる良いPM像について記載します。

■ SEとPMの違いは?
SEといっても広すぎますので、まずは良いSEを考えてみます。良いSE像がイメージできれば、上位にあたる良いPM像が分かり易くなります。

良いSEとは?
『技術力があって、知識や経験があって、プロ意識があって、前向きで、営業プロモーション活動もできて、社会人・企業人としての意識が高く、しっかりしていて、頼り甲斐があって・・・』と褒め言葉が続きます。意外にITの技術力の評価ウェイトは少なく、むしろ持っていて当たり前という感じです。

良くないSEとは?
『受身で、指示待ちで、責任回避型の言動があり、必要なITの専門知識もイマイチ不足している』です。ここでは、ITの技術力への評価の言及がされることになります。必ずしも「ITスキルが高い=良いSE」ではありませんが、IT技術者としてSEとしての良し悪しは、大きな2つの構成要素から成るのではと思います。
それは『ITスキル と ヒューマンスキル』です。
ITスキルは担当する業務により、必要とされるスキルが異なりますが、ヒューマンスキルは全域をカバーします。(ERPパッケージなどでSIをしている場合は、顧客の業種・業態等のビジネススキルも挙げられるでしょうが、ここではITスキルに包括します)
よくあるピラミッド図で表すと、最下位のベース層にヒューマンスキルがあり、その上位層がITスキルで、『ITスキル+ヒューマンスキル』をバランス良く能力を保有しているのが良いSEと言えます。

では、良いPMとは?
『しっかりとした安定感と信頼感』です。
良いPMの視点は、顧客やその所属企業のラインの方々、プロジェクトメンバーなど多様なものが求められます。コミュニケーションといった言葉も活用場面が多用化して「交渉力」となり、「交渉力」は「折衝力」に、さらには「政治力」と高度になります。バランス良く培った『ITスキル と ヒューマンスキル』の上に、『しっかりとした安定感と信頼感』を出せれば、良いPMと言えます。

■ 私が求める良いPM
常々、私が考える良いPM像とは、
『感受性が鋭い/課題解決力が高い/環境対応力が優れる/人間性を尊重する/人的ネットワーク構築力が高い/責任感が強い』です。
上の項目は良いSEとしても必要な項目と考え、私自身十分に修行を積み、切磋琢磨してきましたが、私の思いとは異なりショックを覚えたエピソードがあります。

困難を乗り越え成功した、ある大型案件の完了打ち上げパーティで、キーマンでもある顧客の統括責任者に、弊社担当営業がたずねました。
「うちの吉田の何が良かったのですか? なぜここまでの大きなお仕事を任せていただいたのですか?」
当時、未熟だった私は(新規参入でこれだけ安定的にプロジェクト運営して成功させたんだから・・・IT力とかマネージメント力とかリスク管理能力とか・・・)カッコいいキーワードを連想して回答を期待していたのですが、答えは全く異なりました。
「熱意でしょ!」と、当然のことのように言われました。

顧客から見た良いPMの姿を理解していなかった私は正直かなりショックでした。
しかし、日が経つにつれ、『しっかりとした安定感と信頼感』以上に『熱意』は、カッコいいキーワードの域を卓越した最大の賛辞だったという実感に至っています。こういった形で顧客満足を獲得し、リピーターになっていただくというのも良いPMの「仕事」で、今回のコラムSE++を考え始めたきっかけです。

今でも「吉田さんは、その道のプロだから」という言い方で何かと助言を求められます。ブレインとして、また、ビジネス・パートナーとして扱われていることに誇りを感じる瞬間です。

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