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「ドイツのサッカーリーグにみる競争力向上施策」

2013年10月号
  • 「ドイツのサッカーリーグにみる競争力向上施策」
    OCP−プロジェクトマネジャー(L5)  山道 正英 

*まえがき
もう4ヶ月ほど前になりますが、日本時間5/26(日)早朝に放送された、サッカーのヨーロッパチャンピオンズリーグ決勝をご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

決勝戦はバイエルン・ミュンヘン対ボルシア・ドルトムントのドイツ勢同士で、ドイツ勢同士の決勝戦はチャンピオンズリーグ史上初めてです。

ドイツのサッカーリーグ(通称:ブンデスリーガ)は、1990年台以降、イングランド、スペイン、イタリアの3大リーグの影に隠れて、やや目立たない存在でしたが、2000年以降競争力向上のため、サッカーリーグや各チームで地道な活動を実践しており、今回の決勝戦は長年の活動成果の現れ、と言えます。

ここでサッカーリーグと所属チームの関係を、(かなり強引ですが)会社と各プロジェクトチームという関係に置き換えると、会社と各プロジェクトチームがそれぞれバラバラで活動しても競争力は上がらず、それぞれ協調しながら活動していくことが、競争力を上げる唯一最大の方法、と言えます。

以下では、ドイツのサッカーリーグと所属チームが行った各種施策を、PMBOKの9つのエリアに記述し、会社/プロジェクトの競争力を上げるための参考にできないのか、考えたいと思います。

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■人的資源:自組織からの積極登用。
2012年、ドイツのサッカーリーグ1部に所属する全選手は525人で、そのうちドイツ人は全体の60%を占めます。これは他リーグと比較しても多く、(例.イングランドは40%)自分達の組織内で選手を育成していることの現れです。

→プロジェクトでは、主力メンバーは可能な限り自社社員を中心にする。
会社は、プロジェクトが自社社員を中心に運営できるよう、採用や教育で側面支援する。

■調達:高額な外部調達は最小限。
ドイツでは、高額の移籍金をオーナーのポケットマネーで補填するといった手段が採れず、お金任せに選手を集めることが困難です。よって、外部からの選手獲得は費用に見合った場合のみ行われます。

→プロジェクトでは、主力メンバーの調達を外部(パートナー)に依存しすぎず、最小限にとどめる。
会社は、外部調達時の交渉にて費用上限の目安を設けておく。

■コスト・リスク:収入と支出のバランス。
スポーツビジネスで総収入に占める人件費の割合は60%を超えると危険水準と言われていますが、ドイツはおおよそ40%以下となっていて、多少の収入減では経営はびくともしない構造となっています。
また、他国と比較して入場料収入・テレビ放映権収入・グッズ販売収入・スポンサー収入・移籍料収入・各種賞金のバランスが取れた構造となっています。

→プロジェクトの収支計画で無理がないか、会社全体で目安を設けて逸脱していないかを確認する。
会社としては、特定分野からの売上に依存しない。

■タイム:お客様、選手ともに無理をしない・させないスケジュール。
ドイツの冬は厳しく、屋外でサッカーをする・見るが困難な時期もあります。よって、一番寒さが厳しい12月中旬〜1月中旬に冬休みを設けて、お客様、選手の負担を減らしています。

→プロジェクトの作業スケジュールについて、お客様・当社とも無理がないのかをチェックする。

■コミュニケーション:お客様にまた来たいと思わせる体験。
ドイツのチームの各スタジアムは、2006年ワールドカップ時に整備され、安全で快適にサッカー観戦できるようになっています。
また、各チームの練習場にはファンとの交流ゾーンが設けられ、選手もファンサービスに熱心です。

→お客様に当社とまた一緒に仕事がしたい、と思ってもらえるにはどうすればよいか、プロジェクトで考えて実践する。

■品質:お客様が求めているものを提供。
ドイツは、2000年前後にサッカー選手への指導内容を刷新し、パワーと高さに頼ったサッカーから、ボールを扱うスキルを重視したサッカーに切り替えを図った結果、ここ数年他のリーグと遜色ないサッカーが展開されています。

→お客様が今何を求めているのかを考え、それを提供できるようなスキル・ノウハウを習得する。

■スコープ:各チーム間の格差の是正。
各チームの主要収入源の1つである、テレビ放映権収入について、リーグで一括管理し分配する方法を取っています。これにより一部の人気チームへの放映権収入の偏りをなくし、各チーム間で収入格差(≒チーム力)が開きすぎないようにしています。

→一部のプロジェクトに売上・利益を依存しないよう、会社内でプロジェクト間のバランスを取る。

■統合:徹底した情報開示、指導、統制。
毎年各チームに収支状況を開示させ、赤字が続くチームに対しては、降格やリーグ脱退も含めた厳しい規定を設けています。
また、各チーム内の指揮命令系統も厳格に守られていて、オーナーの独断、現場の独断といったことができないようになっています。

→プロジェクト内で計測できる数値は、かならず計測できる手段を設けて報告し、第三者にレビューしてもらう。またルールがあるのであれば、それに従う。
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*あとがき
まじめといわれるドイツ人らしく、ルールで決めたことはきっちり守ったことが結果として現在のサッカーリーグの繁栄につながっているようです。

*本PMマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研の見解を示すものではありません。

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