PMマガジン
「PMの懐刀、PMOの存在意義について」

2014年04月号
  • 「PMの懐刀、PMOの存在意義について」
    OCP−プロジェクトマネジャー(L5)  松井 泰三 

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)とは・・・
今回はPMの片腕となりプロジェクトを推進するPMOについて私見を述べたいと思います。
一般的には、大規模な組織において組織のプロジェクトマネジメントの能力と品質向上を目指し、加えて個々のプロジェクトが円滑に運営されることを目的に設置される会社全体の専門組織がPMOです。一方、大規模なプロジェクト(ピーク時に数百人以上)になると、プロジェクト内にPMOを設置することがあります。これは、PMがプロジェクト状況を把握するために、さらにはPMと共にプロジェクト運営を円滑に行い、プロジェクトを成功に導くために設置します。ここでは後者の話をします。

PMOの役割は様々ですが、一般的には以下のような役割があると私は考えます。
1)プロジェクト運営の事務局
  全体の会議体(ステアリングコミッティ、進捗会議等)の管理運営
2)プロジェクトの基準、標準の策定
  開発プロセスの整備、レビュー開催局面整備、標準ドキュメントの策定、適用の促進
3)各種指標の基準値作成、収集、評価
  進捗率、品質指標、各工程での指標のサマリーや整理、状況の把握と評価
上記全体を踏まえて、PMとともにプロジェクトを成功に導きます。

他にも色々な役割があると思いますが、大きな役割はこんなところではないでしょうか。
また、プロジェクトによってはPMOとは言わず、別の組織名を付ける場合もありますが、こうしてみるとプロジェクト全体組織に関わり、PM以上に重要な役割だと言えます。優秀なPMOが設置されることがプロジェクト成功の重要な要素の一つです。

以下、私が経験した大規模プロジェクトのPMOの実例で、ピーク時400人以上が稼働するようなプロジェクトに参画した時の話です。
プロジェクト体制としては、PMおよびPMOの役割を担っている会社(以下、A社)と業務単位にアプリケーション開発を行う4社が参画し体制が構築されました。

A社のPMOは、PMOの役割を懸命にこなそうとしていたのですが、ある日の進捗会議でのやり取りです。

1)のプロジェクト運営の事務局として、ある会社が2,3分開始に遅れた時のことです。
「どうして遅れたのか?」「遅れると言うことは、やる気がないのか?」「あなた達が遅れたことで皆の時間が無駄になった」と、遅れたことを全体の前で延々と非難したのです。最終的には会社として正式な謝罪を出すよう指示しました。

また、3)の各種指標の収集、評価では、その週の進捗率が基準まで到達していなかった時のことです。
「どうして進捗率が遅れているのか?」「なぜ、遅れたままの進捗率を報告するのか」そして明日までにリカバー方法を検討し計画通りに開発が進むスケジュールを提示するよう指示しました。

みなさんはどのように感じられたでしょうか?
まず、最初の出来事ですが、確かに統制は取れるかも知れませんが、プロジェクト運営の統制に主眼を置きすぎていたように思います。遅刻の常習犯であれば叱咤することも少しは必要かもしれませんが、たまたま数分遅れた程度のことです。この出来事を機に、このPMO組織は各開発チームからの信頼を失い、プロジェクトに問題が起こってもPMOに協力するチームは無くなってしまいました。(事件はその他もいろいろあったのですが)
PMOがプロジェクト内の体制、メンバーを責めては良い結果が出ないと思っています。

次に、遅れた進捗率の報告の件では、それ以来各チームは進捗率の厳守が絶対的な使命になってしまいました。
結果、自分達以外の範囲の作業には極力関わらない、すなわち、進捗遅れの原因になる要因には極力関わらなくなってしまいました。大規模プロジェクトだと、チーム間にあるグレーゾーンの作業は絶対に発生します。ここを放置することは、プロジェクトの大問題に発展する可能性があります。しかし、PMOの言動によって問題よりも進捗率を厳守することが優先順位として高くなってしまったのです。

極端な例を2つあげました。もちろんPMOとしてはプロジェクトを統制することは大事です。しかし、プロジェクト全体の潤滑油的な役割も意識しないといけません。遅れた会社を責めるより、多少の世間話でもして場をつなぐくらいの配慮があれば良かったように思います。
進捗遅れの件についても、評価するだけの第3者になってはいけません。皆の目標はプロジェクトを成功させることなので、遅れた原因の究明、対策を一緒に考えるようなスタンスであるべきでした。そうすれば開発チームとの信頼関係は築けたと思います。

実際、高圧的にプロジェクトを管理しようとするPMOを何度か見てきました。問題を発見することが使命だと思い込み、開発現場の糾弾に走る。自分たちがプロジェクトを正しく導く唯一の存在だと錯覚し、自分達が偉いと思い込んでしまう。PMOの話として書いていますが、PMにも同じことが言えます。

PMとPMOは表裏一体です。お互いがプロジェクトを成功に導くために協力出来るような価値観の共有と信頼関係こそが必要なのではないでしょうか。
ちなみに・・・その後、上記のプロジェクトは大混乱に陥りました。

*本PMマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研の見解を示すものではありません。

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