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[レポート]SD Web Services Worldレポート





SD Web Services Worldレポート


OGIS International, Inc. 大場 克哉


「はじめに」

8月29日から31日にかけてボストンで開催された「SD Web Services World」に参加してきました。今年に入って日本でもWebサービスの話題にはこと欠かないようですが、米国での動向について、筆者の視点からレポートしてみたいと思います。

SDでは、毎年西海岸と東海岸で、それぞれSD West, SD Eastというカンファレンスを開催していますが、今回はSD Eastに併設してWeb Services Worldが開催されたという形です。カンファレンスのトラックは、.NET, C++, Design and Process, Java Programming, XML Developmentの5本がSD系のもの、そして、Web Services: Business-Implementation, Web Services: Components & Services, Web Services: Standards & Vocabraryの3本がWeb Services Worldとして、それぞれ毎日4本程度の講演が行なわれました。

Design and Processトラックでは、XPに関連する講演が何本かありましたし、Scott AmblerさんのAgile Modelingの講演もあって、「オブジェクトの広場」の読者のみなさんには、こちらの方に興味がある方も多いかもしれません。実は、私もScott Amblerさんの講演には行きたかったのですが、今回私に下された業務命令は「Webサービスの動向をしっかり見極めてくること」でしたので、Agile Modeling関連の講演は、泣く泣くあきらめたのでした。

さて、本題に入りましょう。



「Webサービス標準化動向」

Webサービスは、SOAP, WSDL, UDDIが出揃ったことで、サービスを開発、使用していくために必要な基本的な材料が整ったといえるそうです。とくにSOAPについては、当初の提案からの時間もたっており、また実装も整ってきたことから、採用が進んでいるようです。Web Services: Standards&Vocabrariesのトラックでも、単に仕様を説明するだけではなく、どのようにSOAPを活用するかという事例的なセッションが目立ちました。

また、Web Services: Business Implementsのトラックでも標準化に関するコメントがいくつか聞かれました。代表的なものは、Webサービスが真価を発揮するためには、SOAP, WSDL, UDDIの上位の規定が必要だというものでした。現状の技術では、UDDIのWebサービスアーキテクチャのトライアングル、つまり、サービスブローカ、プロバイダ、リクエスタ間のpublish, find, bindまでは実現できるが、Webサービスを実用化していくためには、QoS(Quality of Services)の保証や、ワークフロー(ビジネスプロセス)の定義が必要だというものです。なお、QoSには、WSEL(Web Services Endpoint Language), ワークフローにはWSFL(Web Services Flow Language)がそれぞれ提案されています。またセキュリティについても、HTTPR(HTTP Reliable)が紹介されていました。

図1

この他、最近書籍のタイトルで増えてきた"Modeling xx with UML"シリーズの一環というわけではないでしょうが、Chris Armstrong氏は、"Modeling Web Services with UML"と題して、WebサービスのUMLによる記述に取り組んでいました。この中では、Jim Conallen氏の"Building Web Applications wtih UML"の中で提案されていたUMLのWeb Application Extensions(WAE)も紹介されていました。

また、UNISYSのShridhar Iyengar氏が"OMG Model Driven Architecture(MDA) meets Web Services"というタイトルで、MDAとの関係、XMI2.0におけるMOF-XML Schemaマッピングなどを紹介していました。



「Webサービス開発事例」

さて、このカンファレンスでは実際にSOAPやWebサービスを使った事例もいくつか発表されました。

IBMのAnton Fricko氏からは、"Tasting SOAP, Early project experiences with Web Services"のというタイトルで、SOAPベースのプロジェクト経験が発表されました。

このプロジェクトでは、ノルウェー最大の金融会社Storebrandの生命保険部門を対象にしています。ここでは、法人顧客(法人の従業員)の情報を管理するために、従来は顧客の給与システムから出力されたデータを紙ベースで受け取って、それを再度Storebrand側のシステムへ手入力していたそうです。このプロジェクトでは、法人顧客の給与システムとStorebrandシステムを直接SOAPベースでつなぎ、コスト削減を実現したとのことです。

また、このプロジェクトで直面した問題として、UDDIにおける情報モデルであるtModelsの標準化の必要性ですが強調されていました。このプロジェクトでは、給与システムとのやりとりにXMLを使用します。保険業界にはすでにいくつかのXMLスキーマが存在するため、それら評価したところ、そのどれもStorebrandには不十分であったということです。結局、その中からXMLifeという標準を選び、拡張したそうですが、業界特化のtModelsが必要であるという認識だそうです。ほかのセッションでもtModelsが汎用的であるがゆえの問題点が指摘されていました。

キーノートスピーチのひとつでは、会場の聴衆に向かって、すでに業務でWebシステムを使っている人がどの程度いるかという問いかけがありました。これに対して、挙手したのは数%程度でしたから、米国でも、まだまだ様子見の人が多いのかもしれません。



「Webサービスの今後は?」

さて、最後に私がこのカンファレンスに参加して感じたことについて少し触れさせてもらいたいと思います。

Webサービスという言葉自体があいまいに使用されている状況ですが、現状はまだ、限定された範囲でのWebサービスが実現可能になったに過ぎません。このような状況では、考えられる多くのサービスは、必ずしもWebサービスである必要はなく、たとえば既存のServletベースのWebシステムで十分であったり、あるいはCORBAで事足りるということになります。

私は、Webサービスの最大のメリットは、サービスプロバイダ(主として企業)の競争と協調を促進するところにあると考えています。インタフェースを統一し、サービスコンポーネントの置き換え可能性を高めることにより、プロバイダ間の競争が促進され、サービス品質も高まることはユーザにとっての利点です。また、ワークフローが実現されれば、ユーザが複数のプロバイダ相手に、いちいち個別にリクエストをあげる必要がなくなります。この実現に必要な規格が標準化され、製品が実装され、私たちが利用可能になると、そのときには、現在のインターネットを大きく変える力になるのではないかと感じています。



「追記」

さて、この記事を書いている間に、東海岸でとても悪質なテロ事件が発生しました。とても信じられない、卑劣な、許せない行為です。尊い命をなくされた、多数の方々のご冥福をお祈りしたいと思います。


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