ObjectSquare [2013 年 3 月号]

[レポート]


Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013  参加レポート
- Jurgen Appelo氏による2つのセッション -

株式会社オージス総研
技術部 アジャイル開発センター
張嵐

去る1月15日と16日の2日間、秋葉原のUDXカンファレンスセンターにて「 Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013」が開催されました。 前日の大雪の影響で足元が悪いにも関わらず、1日当たり約250人の参加者が集まりました。 日本でのアジャイル開発に対する期待や関心の高まりを伺わせました。

今年のセッションは、基調講演及び特別対談が3本、3つの会議室に分かれてパラレルに開催されたワークショップが5つ、事例紹介を含む講演が14本と、多彩な内容でした。 また、スポンサーの展示ブースがあり、OpenJamの開催もありました。

今年のScrum Gatheringはオタク文化、メイドカフェ、AKB48などをはじめとした日本のポップカルチャー/サブカルチャーの発信地とも言える秋葉原での開催です。 初日には実行委員会の川口さんがアキバ系ファッションに身を包み、参加者たちをにこやかに出迎えました。 実行委員会の心遣い、努力に感服いたしました。

筆者は初日のセッションを聴講しました。 このレポートでは以下Jurgen Appelo氏による2つのセッションの内容を紹介いたします。

  1. 基調講演 -「Agile Management - Learning From Software Development
  2. 講演 - 「Let's Help Melly (Changing Work Into Life)

1. Jurgen Appelo氏による基調講演
「Agile Management - Learning From Software Development」

オランダ出身のJurgen Appeloの名前を初めて聞いたのは2年前でした。 当時、筆者はアジャイル開発の導入が組織に及ぼす影響、例えば「マネジメント」のありかたや、「自己組織化」がどのように行われるのかなどについて考えていました。 そんな中、Appelo氏の「Management 3.0 - Leading agile Developers, Developing agile Leaders」という本に出会いました。 それ以来、いつかAppelo氏の話を生で聞きたいと思っていましたので、今回の講演を大変楽しみにしていました。

基調講演では、Appelo氏は日々複雑になっていく環境とその環境に適応するための組織の形態とその進化の過程を示しました。 また、各種のマネジメント理論を参照しながら、Appelo氏自身の体験を語ったほか、組織に必要となる「マネジメント」とは何か、また、その「マネジメント」の導入によってどのような結果になりうるのかについて紹介しました。 最後に、現代の組織に必要な6つのビューを持つManagement 3.0のMartieモデルを解説しました。

Appelo氏の基調講演は氏の著作「Management 3.0」と同様、真新しい理論は特に含まれません。 しかし、そこで語られる、広範な理論の組み合わせによってもたらされる独自の見解や、自身の経験から有効性が検証できたプラクティスは示唆に富んでいます。 講演中、Appelo氏はまるで友人と語らっているかのような雰囲気で、複雑な組織論、組織のマネジメントを分かりやすく説明していたことが特に印象的でした。

ここから、基調講演のポイントについて紹介したいと思います。

2. Jurgen Appelo氏の講演
「Let's Help Melly (Changing Work Into Life)」

このセッションは初日の午後に行われました。人数制限のため、事前に参加希望者に対し整理券を配るという人気ぶりでした。

このセッションは「Mellyを助けてあげて」というタイトルでしたが、内容は午前中の基調講演のブレークダウンで、Management 3.0の基本となる「複雑系の思考」とManagement 3.0の訓練のプラクティスの1つ「制約を整える」に関する紹介と演習です。 以下はセッションの内容を紹介いたします。


1日に、筆者はAppelo氏の2セッションに参加し、情報量の多さ、考えさせることの多さに圧倒されました。
Appelo氏の講演の内容に関し、参加者が抱く感想は様々でしょう。 エネルギーをもらったと感じる人もいれば、自分の置かれている現状や組織を変えていけると思う人もいることでしょう。 筆者の場合、Management 3.0は理解しやすく、プラクティスもシンプルと感じましたが、自分の組織・環境の中で実践していくには、導入時に相当な工夫と労力が必要だと思いました。 そのための第一歩は、まず自分の組織そのものを十分に理解することではないかと感じました。

本レポートにある図2〜図4は、Appelo氏のご厚意により、氏のプレゼンテーション資料より引用させていただきました。




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