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レポート

動物が使えるソフトウェアコンテスト本選レポート

本選の模様と受賞作品のご紹介
株式会社オージス総研 OSCA事務局 木村 めぐみ
2017年12月13日

今年で8回目を迎えるオージス総研主催のソフトウェアアイデアコンテストOGIS-RI Software Challenge Award 「動物が使えるソフトウェアコンテスト」の本選と最終審査を2017年11月15日(水)に開催しました。本レポートでは受賞した全6作品を中心に本選の様子をご紹介します。

OGIS-RI Software Challenge Award「動物が使えるソフトウェアコンテスト」とは

osca

OGIS-RI Software Challenge Award(OSCA)は今年で8回目を迎えるオージス総研が主催するソフトウェアアイデアコンテストです。今年は「動物が使える」をテーマに設け、このテーマと関連するソフトウェアのユニークで革新的なアイデアを募集しました。コンテストに応募できるのは、コンテスト期間中に日本国内の高校、高専、専門学校、大学、大学院に在籍する個人またはグループです。

「動物が使える」と言うなかなか難しいテーマの中、今年は44チームから54作品とたくさんのご応募をいただきました。応募いただいた作品が対象とする動物も、家庭で飼うペットから動物園にいる大きな動物までバラエティに富み、各チームさまざまなアイデアを考案してくださいました。

54件の全応募作品は、書類による一次審査、二次審査を経て、最終的に6チーム6作品が見事、本選出場権を獲得。本選に勝ち残った6作品は、審査員の前でアイデアをプレゼンし、厳正なる審査の結果、受賞作品が選ばれました。

本レポートでは本選の様子と全受賞作品をご紹介します。

本選の一日

本選は2017年11月15日(水)オージス総研東京本社にて開催しました。宮城、長野、大阪、和歌山から全6チーム19名が参戦しました。

定刻になり本選の開幕です。まずは、本選出場権を見事勝ち取ったファイナリスト、本選出場チーム全員に拍手を送りました。本選出場権獲得まで勝ち抜いたことが十分に名誉であり誇りに思って欲しいとの思いを伝え、決戦に臨んでいただきました。

今年はゲスト審査員に株式会社エクサウィザーズ 取締役フェロー 古屋 俊和様をお招きし、当社審査員6名を加えて全7名で審査を行いました。

古屋様
株式会社エクサウィザーズ 取締役フェロー 古屋 俊和様

ゲスト審査員の古屋様は学生時代に起業されており、プレゼンの質疑ではビジネス視点のアドバイスをしていただき、また、審査講評では学生時代の起業のメリットをお話いただいくなど、本選出場者にとって実践的で刺激のあるコメントを提供くださいました。

プレゼンの順番を決定し、いよいよ各チームの発表が始まりました。

本選では、各チーム30分(発表20分、質疑10分)の持ち時間でプレゼンを行っていただきます。短い休憩時間を入れる以外はノンストップで全6チームの発表を行いました。

審査員からの質問
時には笑いありの審査員からの質問時間

全チームの発表終了後、全審査員は別室で審査に入ります。審査時間中は本選出場メンバには当社若手社員との懇談を行っていただきました。

そして17時半、全出場メンバと審査員が集まり、表彰式が始まりました。それまでにぎやかだった会場も表彰式が始まるとピンと緊張した空気が張り詰めました。各チーム、いろいろなことを考えながら発表を待ったことだと思います。審査員長より受賞作品が一点ずつ発表され、当社社長、ゲスト審査員より受賞チームに表彰状、トロフィー、目録が授与されました。

表彰式の後は、懇親会を持ちました。懇親会では、本選出場メンバが審査員からの更なるフィードバックを受けるべく積極的に話をし、懇親会場は活気にあふれていました。本選の受賞結果を聞くだけで終わらず、もっと伸びたい、もっと学びたいという今後に向けた強い姿勢や意気込みが伝わってきました。

コンテスト本選出場者の皆さんにとって、本選の一日が、少しでも今後のご活躍の糧になれば幸いです。

本選の風景
懇親会場の風景

受賞作品のご紹介

ここからは本選の発表内容をもとに、受賞した全6作品をご紹介します。各作品の詳しい内容については、受賞チームの方々のご了承を得て「アイデアを説明する文書」を掲載していますのでご覧ください。

優勝

優勝

チーム「猫の目」
タイトル「インタラクティブ猫じゃらし:CATouch!」
宮城大学大学院 佐々木 梨菜さん

猫の目チーム

人とペットが一緒に快適に生活できる環境を

情報通信技術の発展により、私たちの生活は日々快適に、便利になっています。その一方で、共に暮らすペットに対する支援や配慮がなされたものは少なく、生活環境の変化から取り残されています。ですが、理想的な未来の生活は、人だけでなく、人とペットの双方が快適に生活できる環境だと考えます。

猫の目プレゼン

”猫の目”目線でcat typing対策

人がPCを操作しているとき、ディスプレイに表示されるマウスの動きやキーボードの打鍵音に興味を示した猫がキーボードの上に乗ってしまう行動はcat typingと呼ばれています。かわいい行動ではありますが人にとってはPCでの作業がはかどらず、猫を退ける対策を考えたくなります。実際に、PCに寄って来る猫を退けるための既存の製品として、仕切りでガードしたり、猫が嫌がる音や光を出したりする複数の製品が存在します。

しかしこのような猫を退ける対策は、猫の快適さを考慮していません。PC操作をしたい”人”とPC操作に興味を示した”猫”の双方の気持ちを尊重するということがどうにかできないか・・・。このような観点から、既存の対策とは真逆のアプローチで、猫の興味を惹きつけて猫の意思を尊重しながら猫を退けるアイデア「CaTouch!」を考案しました。

CATouch!の概要

CATouch!は飼い主のPC操作に応じて、CGアニメーションが表示されるシステムです。

デモ

飼い主用PCで飼い主がマウスやキーボードを操作すると、その操作情報が猫用タブレットに送信され、受け取った操作情報を元に猫用タブレットにCGアニメーションが生成されます。猫がCGアニメーションに触れるとアニメーションが変化したり音が出て、猫をじゃらすことができます。

夢中で遊ぶ猫の様子も

猫の目デモ

CATouch!を5匹の飼い猫で試用した様子が映像で紹介されました。このうちの1匹はアニメーションで表示されるヘビやネズミにすぐに興味を示し、アニメーションに触れたり、触れることでタブレットの画面外に飛び出すヘビやネズミを追いかけたり、夢中で楽しそうに遊んでいました。(タブレットの画面外へのアニメーションの表示は、タブレットを覆うように設置されたプロジェクタから投影して実現している)

プレゼンで流された、猫が無邪気に遊ぶ映像を、本選聴衆者がほほえましく見守りました。正に、猫の興味を惹きつけて猫の意思を尊重しながら猫を退けることを実現。人のPC作業もはかどり、はかどることで猫がもっと遊べそうです。今後の展望として、アニメーションだけでなく、おもちゃなど実物体での実現も考えているとのことでした。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「インタラクティブ猫じゃらし:CATouch!」 (PDF: 約 1.2MB)

ゲスト審査員賞

ゲスト審査員賞

チーム「kbylab2017」
タイトル「DemocraSea~魚論調査~」
信州大学大学院 石原 義久さん 中村 俊輝さん シャルマ・ナラヤンさん 下林 史弥さん 長沼 一平さん
信州大学 竹内 一希さん 瀧澤 祥太朗さん 中村 彰吾さん 宮下 玖留美さん

kbylab2017チーム

魚の環境を、魚が本能で選ぶ

魚の気持ち、あなたは分かりますか? 魚は多くの人にペットとして飼われていますが、魚が住む水槽の環境が本当に良い環境なのか、魚の気持ちを察することはなかなか難しいことです。しかし、魚が快適に生活できる環境を提供したい。そこで、住みたい水槽の環境を魚が本能で選ぶという本アイデアを提案します。

タイトル

システムの概要

システムは、設定を行うアプリケーション、サーバー、水槽で構成します。

システム構成

水槽はアプリケーションで設定した環境(えさ、水流、背景画像、LEDの色)を反映できるようになっています。ユーザーがアプリケーションで環境を設定すると、水槽内に、初期の環境と設定した環境の二つの環境が反映されます。二つの環境が反映された水槽にいる魚がどちらの環境を選んだかは魚の数で判断し、魚が多くいた環境が魚に選ばれた環境と判定して、その環境が水槽全体に反映されます。魚の数は画像による差分で判定しています。

水槽

「群知能」と「集合知」を利用

このシステムで本当に魚の意見が反映されるのか?と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。本システムは動物の本能を利用しています。一つ一つの個体が弱くても群れを作って協力する「群知能」と、集団は本能的に正しい意見を持つ「集合知」という動物の本能を利用して”魚”が使えるシステムとして設計しました。

将来的には複数の水槽とサーバを接続し、複数の水槽で投票された結果を水槽に反映させることを考えています。

魚による投票が水槽に反映される、魚による民主主義、魚の世論ということで本アイデアのタイトルがネーミングされたようです。デモで使った水槽には金魚が泳いでいたり、一票の格差を話題に盛り込んだり、聴衆を飽きさせることのない変化に富んだプレゼンが展開されました。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「DemocraSea~魚論調査~」 (PDF: 約 0.7MB)

準優勝

準優勝

チーム「やまぶき」
タイトル「Aquaplant」
和歌山大学大学院 山本 知輝さん 野上 留未さん

やまぶきチーム

動物が生き物を育てる

動物だって生き物を育てたい・・・? 動物である熱帯魚が生き物を育てる、という本アイデア。熱帯魚に家族の一員として観葉植物への水やりをしてもらいます。熱帯魚と一緒に家族で植物を育てることで、新しい家族間コミュニケーションが生まれます。

システム構成

熱帯魚が植物を育てる仕組み

システムは、熱帯魚が暮らす水槽、植物、家族向けの通知アプリで構成します。植物には水やり器と土壌センサを設置。水槽にはカメラを付け、カメラの前を熱帯魚が通ると赤外線センサが動きを感知して、水やり器から自動で水やりすることができます。でもこれは、水やりを確実にするためだけのアイデアではありません。飼っている魚に家の仕事を担当してもらい、「今日も水やりありがとう」や、「もう、きちんと水を上げてね」などの会話を生み出し、魚を家族の一員にするという狙いがあるそうです。また、家族全員が共通の話題を持つことによって家族の絆が深まることも狙えます。

デモ

植物の湿度は土壌センサで常に計測して水のやり過ぎを防ぎ、水が不足している場合は家族向けに水不足を通知することで、水やりを促します。

自動水やりのデモ

デモ機材

デモでは、センサの前を魚(の人形)が通るとポンプが稼働して自動水やりをする様子が実演されました。

審査員からは熱帯魚にとってのメリットは?という質問も。熱帯魚のエサになるものを育ててもよいかも、という意見が出ました。今後の展望として、他のペットへの応用も考えているそうです。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「Aquaplant」 (PDF: 約 0.9MB)

審査員特別賞

審査員特別賞

チーム「すりーぱー」
タイトル「Dearpets」
和歌山大学 山本 ひかるさん 永井 比奈乃さん 松下 真央さん 貴志 友郁さん

すりーぱーチーム

もしもの事があった時、君がひとりにならないために

日本では数多くの犬や猫がペットとして飼われています。高齢の飼い主の中には、自分に何かあった時にペットがどうなるのか心配な方もいるでしょう。本アイデアは、ペットのセカンドライフが心配な飼い主と、ペットを飼いたい人をマッチングし、ペットが幸せなセカンドライフを過ごすことができるよう、新しい飼い主を探すシステムです。

Dearpets

IoT×首輪でペットの生活リズムを記録

ペットと新しい飼い主をマッチングする際、ペットの生活リズムを重視しています。そこで、本システムを利用する際には、ペットにセンサーを搭載した首輪を付けて1週間の生活リズムを記録します。

首輪
この記録に加えて、システムに入力した飼い主とペットの情報、動物病院から提供されるデータがプロフィールとして保存されます。ペットを飼いたい人も、飼育環境や散歩できる時間など自分の情報を会員情報として登録します。

お試し期間を経て、最終決定するのは飼い主

システムに登録された会員の中からお試し期間を過ごしてもらう人を選んだら、ペットはその人と1週間のお試し期間を過ごします。この期間もセンサー搭載の首輪を付け、生活リズムを記録。お試し期間終了後、システムが生活リズムからマッチング度を判定します。その人を新しい飼い主とするか、最終的な決定は飼い主自身が行います。

デモ

残されたペットをひとりにしない、という課題設定に共感した審査員の涙も誘った本アイデア。ペット譲渡後の保障も検討ずみで、元の飼い主があらかじめ利用料金を支払っておくことで、譲渡後のペットの治療費が保障されるそうです。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「Dearpets」 (PDF: 約 1.7MB)

審査員特別賞

審査員特別賞

チーム「MAC-8」
タイトル「アニドル育成計画」
和歌山大学 辻本 結良さん 内海 誠一郎さん 武田 悠さん 長田 颯斗さん

MAC-8チーム

動物園の動物をアイドルに

動物園の入園者数は近年、減少傾向にあります。一方、SNSで大人気のカワウソや、写真集まで出してしまうイケメンゴリラなど、動物界のアイドルとも言える存在の動物もいます。

プレゼン

そこで、本アイデアでは動物園の動物に注目し、動物園の動物がアイドル(=アニドル)となってファンとつながり、動物に会いに来るリピーターを増やして入園者数を増やすことを提案します。

アニドールと連動アイテムで推しアニを応援

ターゲットは動物が好きな人と動物園を訪れた子供連れです。まずユーザーは動物園で好きな動物を選びます。これを「推しアニ」と呼びます。そして「推しアニ」のIoT化ぬいぐるみ「アニドール」と「連動アイテム」を購入し、「アニドール」の情報をスマホアプリに登録します。

推しアニ

園内の「推しアニ」がセンサー付きのボールで遊ぶと、家にいる「アニドール」が連動して動きます。

アニドール

また、エサ型の「連動アイテム」を「アニドール」にあげると、実際に園内の「推しアニ」におやつをあげることができます。スマホアプリからは「推しアニ」のライブ映像を見ることもできます。

アニドル総選挙まで

動物園を盛り上げるため、期間限定で人気アニドルを決める「アニドル総選挙」を行います。動物園に行って投票したり、アニドールにエサをあげた回数などもカウントします。

デモでは大きなペンギン(の被りもの)が出てきて会場を沸かせてくれました。プレゼン資料のコンテンツも素晴らしいと評されていた本アイデアでした。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「アニドル育成計画」 (PDF: 約 2.1MB)

審査員特別賞

審査員特別賞

チーム「ubiquitous TARMY」
タイトル「Nature Calls Hamsters」
大阪工業大学 鈴木 悠太さん 平田 将人さん 山中 晶絵さん 中久保 諒さん 名桐 豊大さん 中野 晶仁さん 信川 祐人さん

ubiquitous TARMY

ハムスターの生活を快適に

野生のハムスターは夜間に数十Kmもの距離を走ってエサを探します。しかし、ペットとして飼われているハムスターはケージの中で生活するなど生活空間が限られてしまい運動不足になりがちです。このため運動をするよう飼い主がサポートしてあげる必要がありますが、ハムスターは夜行性なので人間が細かく管理してあげるのは困難・・・。そこで、ハムスターの健康管理をサポートし、ハムスターの生活を快適にするソフトウェアを提案します。

運動とエサのサポートに加えて風景や風も変化

プレゼン

回し車の軸にロータリーエンコーダーとRaspberry Piを取り付け、ハムスターの運動量を確認。エサの量は米びつのような仕組みで制御し、運動量に応じた適切な量のエサを与えます。これらはすでにあるケージなどにすぐに取り付けが可能。スマホからすべての装置をコントロールできます。

プレゼン

オプションでディスプレイを設置して、風景を変えることも可能。また、回し車の前方に小型のファンを設置すれば、回し車の回転に応じて風を送ることができます。いずれもハムスターのストレスにならないよう、ディスプレイの明るさや風の強さを調整します。

メンバー

ハムスターの着ぐるみを来た発表者がいつ動き出すんだろうと待っていたら最後の質疑応答が出番でした。ハムスターを飼った経験のある審査員が多く、機能に関する具体的な提案も複数飛び交いました。

アイデアを説明する文書

アイデアの詳細は応募の際に提出いただいた以下の文書をご覧ください。
アイデアを説明する文書「Nature Calls Hamsters」 (PDF: 約 1.3MB)

おわりに

本レポートでは2017年度に開催したソフトウェアアイデアコンテスト OGIS-RI Software Challenge Award の本選の模様と受賞作品をご紹介しました。

本コンテストは第1回目の開催当初から、オージス総研の多様な社員がそれぞれの得意分野で貢献する形で企画・運営してきました。コンテストのテーマ決めでは入社して数日の新入社員も貢献、審査員には育児のため時短勤務中の社員も参画しています。このようにオージス総研で作り上げてきたコンテストに今年もたくさんの応募をいただき、また、一次審査から本選まで全力で戦っていただき、応募チームの皆さんには今一度、心から感謝の意を述べたいと思います。ありがとうございました!

集合写真
表彰式後の集合写真(前列中央はオージス総研社長 西岡信也、後列は審査員)