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らぼなび!

第 5 回 専修大学 ネットワーク情報学科 飯田研究室の巻

飯田 周作 助教授, 小野 圭介 さん (B4), 片山 敬介 さん (B4),秋山 秀爾 さん (B3)

教授と学生のお写真

第 5 回目の「らぼなび!」は 専修大学 ネットワーク情報学科の飯田研究室へお邪魔しました。飯田研究室は、 形式手法や UML を使ったモデリングなどを使い、ソフトウェアシステムをどのように 抽象的に扱うことができるかということを研究しておられます。

理論と実践の繰り返しを大事にしながら、研究活動をされている飯田研究室は、学部学 生と一般企業の方との産学連携チームで、3 年連続、 ET ソフトウェアデザインロボットコンテストMDD ロボットチャレンジ にも出場し、優秀な成績も修められている活動的な研究室です。

実践を大事にする一方、プログラミングだけに傾倒せず、ソフトウェアシステムの抽象 化・モデル化に重点を置く飯田研究室の飯田助教授と学生 3 名へのインタビューです。


飯田 周作 助教授

 飯田助教授

研究と実践のサイクルをまわしながら活動しています。

-- まず始めに、飯田先生の研究の概要を教えていただけますか?

私の研究テーマは広く言えば、ソフトウェア工学になります。そのなかでも、システム の抽象モデルを研究のテーマとして捉えています。興味のあるものに対して、どのよう に表記するか、意味づけをどう考えればよいのか、ということを研究の対象にしていま す。

具体的には、形式手法と UML を用いたモデリングをやっています。形式手法とは、簡 単に言えば、数学的ないろんな記法であるとか概念を使って、システムの記述を行い、 その性質を調べる方法です。この研究を、学生時代から 10 年以上やってきました。 最近は学生たちと一緒に、UML を用いたモデリングで、教育と研究のちょうど間ぐらい のところを狙ったことをよくやっています。

-- ネットワーク情報学部は学部のみだそうですね。研究室としてはどのように研究を 進めておられるのでしょうか。

はい。大学院がないので、研究室に院生が居て研究することはありません。ネットワー ク情報学部は学部教育が中心です。

我々は、まず学部教育をしっかり行いたい。そこに、研究を絡めながらうまく進めてい きたいと考えています。私のプロジェクトでは、産学連携を実施し、そこで教育と研究 の両方を実施することを行っています。今は、いくつかの企業と一緒に研究し、システ ムの設計と実装を実践しています。学生と一緒になってなにかモノを作ったり、コンテ ストに出たりといった活動を大事にしています。

-- 産学連携で研究を進めるときに、何か工夫されていることはありますか。

UML のモデリングに関しては、やってみることが大事だと思っています。皆でやってみ て、そこから出たことで研究をする。それをまた企業に持っていき実践する、というサ イクルにしています。

実践については、3 年連続で ET ソフトウェアデザインロボットコンテストMDD ロボットチャレンジ にも出場しています。MDD ロボットチャレンジでは企業の方と学生が一緒になって UML のモデリングをしながら、実際にものを作る活動をしています。研究としては、 モデルベーステスト (*1) と呼んでいるものに力 を入れています。このときに、形式手法の技法を取り入れながらテストを実施していま す。形式手法における検証とは若干違いますが、同じような技術で出来ることがあるの で、そこを狙っています。

*1 モデルを対象としたテスト。設計などの上流工程でテストができるため、バグによる 作業の手戻り量が、通常行われるソフトウェアのテストよりも小さいのが特徴。

MDD ロボットチャレンジは,組込みシステムを対象として MDD (*2) をやってみようというコンテストなんですが、「チャレ ンジ」という名前がついているように、やはりまだ確立していなくて、実践に至るには まだまだ研究が必要だと思います。例えば、MDD と組み込みシステムが本当にマッチす るのか、あるいはどうすればきちんと開発ができるようになるかという問題ですね。こ れについても、研究と実践のサイクルをまわすことで、ヒントが得られると考えていま す。

*2 Model Driven Developments。モデル駆動型開発。開発対象を分析し作成したモデルを、 開発の出発点するソフトウェア開発の方法。

言語は思考の道具です。それは UML でも同じ。

 飯田助教授

-- 形式手法を研究のテーマとしてとりあげたきっかけは何ですか?

学生の頃ですが、最初はプログラム言語にとても興味がありました。ただ、効率の良い プログラムを書くことよりは、どうすればインデントがきれいになるだろうか、括弧の つけ方はどれがきれいだろう、どうすれば分かりやすくなるのか、関数の分け方はどう すればよいかなどの部分に興味がありました。それは無意識のうちにそうなっていまし たね。だんだん、それらはプログラムであること、システムであること、ソフトウェア をデザインしたり構造を考えることなんだと分かってきて、その先に、たまたまオブジ ェクト指向や形式手法があったので、この世界に入りました。

-- プログラム言語が好きなんだけれど、例えば実行スピードなどではなく視覚的な部分 に興味があったというのは、面白いですね。

結局は、言語の手触りのようなところが好きなんだと思います。私は、人間は言語がな いと思考できないと考えています。何を使って思考するかが、思考に強い影響を与えて いると思うし、非常に面白いと思います。

例えば、私は、学生と 1 年間かけて飛行船を作る産学共同プロジェクトをやっていま す。最初学生を集めて、「こういう風にやろうね」と話して UML でモデルを書き始め るんですが、当然、学生は全く書けません。UML を使って思考することができないから です。ではどうするかというと、参考書を 1 冊渡して、「これを真似て、ここに書い てある通りにやろう。」と伝えます。そうすると学生は意味も分からず、書いてある通 りにやってみる状態が半年程続きます。 その時点で企業の方々を交えてモデルレビュー等を繰り返します。それを一通りやった 後に「じゃあ今度はコンテストに出よう。」と伝えます。そこで学生は「最初からもう 一回考え直そう。」となり、その段階でやっとだんだん話が出来るようになってきます。 つまり、思考の考え方の道具、あるいはコミュニケーションの道具として UML が使え るようになってきているんですね。

この場合、思考が UML に限定されてしまい、考えが絞られてしまうという危険な面も ありますが、逆に言えば、簡単に考えられる。どうしようかな?と思ったときに、こう いう風にすればいいんだ!という流れが自動的に出てくる。言語は、このように考える ときの手がかりになるものだと思っています。


問題の本質を捉える --- それには抽象化能力が重要

 飯田助教授

-- 産学連携をされてきた中で、一般企業の抱えている問題を感じられたことはありましたか。

個別の企業がどういう問題を抱えているかは、大学からは見えませんが、世の中一般に、 ある種共通の問題があると思いますね。それは、ソフトウェアシステムを作る難しさで、 その問題の本質がどこにあるんだろうという疑問があることです。それに対して、私が 思うのは、抽象化能力が非常に重要であるということですね。

-- 抽象化能力は、本質を捉えるということを通してだんだん鍛えられていくのでしょ うか。

それは非常に難しいテーマですね。私は、学部に所属する 1 年生全員、240 名位の学 生に C 言語を教えているんですが、これがすごく面白いんです。教えてすぐ分かる学 生もいれば、すぐわからないが、あるところでそれが急に理解できる学生もいます。 さらに、1 年生の時はプログラムが苦手だった学生が、後になってプログラミングがや りたくて私の研究室に入ってくることもあります。当時は苦手だったが、その後の学習 で、適性を感じたり、もっとやってみたいと思うようです。

言語の習得過程を検証すると、外国語でも、プログラミング言語でもよく似ていて、 真似ることが非常に重要です。英語はただ単に教科書を買ってきて読めばで きるようになるかというと、そうではないですよね。真似なければならない。赤ちゃん が言葉を覚えるときも、真似ているのだと思います。しかし、真似るときに、ただ書き 写せば能力が上がるかというと、そうではなく、書き写しながら、「なぜこんなところ でこう書くの?」と考えたり、真似ようにも真似られない部分を、自分でどう埋めるか を、その人なりの観点なり興味で見ると思うんですね。この見る部分が人それぞれなの で、急に分かったりするんだと思うんです。想像ですが、興味をもっていろんなことを 自分でやってみると、どこか自分にはまるところがあって、それを何回か経験すること で、自分のものになっていくのかもしれません。

-- 抽象的、形式的に考えるということは、今まで普通の教育ではあまりなかったと思いますが、どうですか?

ないと思います。本来数学は抽象的・形式的に考えることを学ぶものですが、教育にお ける数学ではその点が欠けていると思います。例えば、複雑な自然現象をどういう風に 説明できるかを考えるときに、簡単に説明したいから数学を使ってモデルを書くわけで す。本来、数学はこのように使われるべきです。しかし、今数学を習うと、そういう方 向ではなく、既に定式化された問題をどう解きますか?という話になってしまう。それ はそれで必要な能力なんですけれど。モデル化という数学の本質のところは、教育では 扱いにくいのかもしれません。


 飯田助教授

モデリングに興味がある学生が増えていると思う

-- 240 名の学生に C 言語を教えていて、最近の学生に対して感じていることはありま すか。自分が学生だったときと、今、逆に教える立場になってみたのとを比べて。

コンピュータや情報を勉強したがる学生のタイプは昔と比べて明らかに変わってきてい ると思います。その理由は、学生が面白く感じるだろうと私が思うところと、実際に学 生が面白がることが違うからです。例えば、飛行船を作る話で言うと、私は、「どうや ってプログラミングし、制御すればスムーズに飛ぶのだろう」という部分を面白いと感 じるだろうと思うのですが、実際にやってみると、ほとんどの場合、最終的にはモデリ ングの方を面白いと思うようです。非常に意外でした。昔の、「コンピュータ=プログ ラミング」の世界ではなくなっているようですね。

-- 最近、一時と比べて IT 分野に進みたがる学生の数が減ってきているのは、プログ ラミングや製造の大変さばかりが強調されていることもあるのでしょうかね。先生がお っしゃったモデリングの楽しさがわかると、また違ってくると思いますか。

そうだと思います。やはり学生は、モデリングをやってみると楽しいと感じるんです。学生がどういうことに興味があるかということは、学生自身にも分かっていない。なんとなく情報系を選ぶんです。 本来、情報を勉強するということは、もっと広い話のはずなので、私たちも少しアピール不足なのかもしれませんし、理解されていない部分だと思います。


今後の研究内容

飯田助教授

-- 最後の質問になります。今後力を入れていきたい研究内容について教えてください。

2 つあります。これは漠然とした考えですが、モデルの作品集のようなものを作ってみ たいと思っています。プログラムに関しても同じことが言えると思います。どうしても 学生には真似る対象が必要です。教科書には、いくつかいいサンプルはあるのですが、 もう少し実践的なサンプルがあってもいいのではと思います。建築分野には建築デザイ ン集というものがありますよね。図面や写真がきれいに並んでいて、表紙の写真もきれ いで、手に取るといい感じに見ることができる。ああいうものが、もう少しモデリング の分野にあってもいいと思うんです。

私たちの学部にも、情報のデザインを行っている教員がいまして、彼らも同じようなこ とを言っていました。建築などの分野では、資料がものすごくたくさんある。いろんな 人が作った表現方法や、ポスターなどが、作品集として 1 つのまとまったものになる。 そのようなものは、教育上、とても重要なものであると考えています。これは、いつか 取り組みたいと思いますし、その際は学生と一緒だと、もっと面白いと思います。

-- サンプルは、産学連携で行うことでより増えていくのかもしれませんね。

そう思います。コンテストなどを開催すれば、サンプルもできるし、様々な側面で効果 があると思います。

-- 我々もほしいけど、意外にサンプルってなかったりするんですよね。

企業で作ると、そう簡単にオープンに出来ないかもしれませんね。建築の面白いところ は、作ったら「こんなのを作ったぞ!」と、どんどんオープンにして、場合によっては 図面まで出てきたりしますよね。それは、建築の文化なのかもしれませんが。ソフトウ ェアはそうではない部分があるので、同じようにするのは難しいかもしれない。ただ、 建築学部の学生は、自分の勉強の合間にこのような作品や図面を見て、「自分はこうい う作品が好きだな」とか考えたりできる。情報学部でも、同じような雰囲気で、何が見 れるだろうと。建築とは違ったものかもしれないけど、似たようなものがほしいですね。 要するに、学生たちの間で「○○さんの書いた△△ていうのがすごく面白いぞ!」とい う話題が上がって、それを手に取ってみれるような、そんな対象のものがほしいですね。

-- 最近オープンソースのコミュニティなどに興味持たれ始めているのは、そういう側 面が強いかもしれないですね。

ソースコードレベルの場合は、まさにそうですね。かなり有名な人、いわゆるヒーロー 的な人がいて、その人のコードを皆で勉強したり、改変したり。それはひとつの文化で それと同じようなことが、もっと広く出来ればよいなと思っています。

もうひとつは、私のもともとの研究テーマは形式手法ですから、形式的なもの・非形式 的なものを組み合わせながら、研究をやっていきたいですね。例えば、テストと検証を 組み合わせて、ある部分は意味を確保しながら、場合によっては検証でコアなことを保 証するようなことをする。それから、モデル上でどんなテストができるのかも検討して いきたいですね。最近はいろいろなところで少しずつ出来てはいますけど、もっと出来 ると思います。モデルを使っていると、学生が「合ってますか?」って持ってくるんで すね。でもそれが合っているか間違っているのかを言うのは難しい。そういうときに、 ツールがあると、自分でチェック出来て、もっといいモデルを検討できる。そういう仕 組みが必要だと思っています。

-- 本日は貴重なお話ありがとうございました。

ありがとうございました。

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飯田研究室の学生紹介

飯田研究室で研究に取り組んでいらっしゃる、学部 4 年の小野さん、4 年の片山さん、3 年生の秋山さんの 3 名にお話を伺いました。

研究テーマは、ソフトウェア開発におけるモデルの有用性

-- それではまず、皆さんの研究テーマについて教えていただけますか。専修大学では ゼミ・卒業研究というものがなくて、3 年でプロジェクトというグループワーク、4 年で卒業制作とい うように活動にわかれているそうですが、今やっておられる内容について、それぞれ お聞かせください。

小野さん

小野さん

私の卒業制作はモデルを用いた組み込みシステム開発がテーマで、レゴ マインドストーム という組み込み開発向け のツールを用いて、350 ミリリットル缶の液体をコップに注ぐロボットを作っています。 「なんか面白いものを作ってみたい」って思って始めました。

そして、設計で文章だけでなく UML やその他の図で作ったモデルを用いることで、 どれだけ円滑にシステム開発を行えるかを検証することと、興味を持っていた組み込み システム開発の難しさや面白さを、研究を通して見出すことを目的としています。

片山さん

片山さん

私は、卒業制作で組み込みシステム開発技術者の教育方法について研究しています。 今、組み込みシステムの開発技術者が足りないということです。そこで技術者を育てる 方法として、モデルを使ったシステム開発を教育することを考えました。学生向けの教 材を作って、それを使ってもらって、モデルを使わないときと比べて理解度がどう変わ るのかなということを研究しています。

-- 学生向けの教育用コンテンツを作っているってことでしょうか。

はい。それと、自分が経験のない分野のシステム開発を学ぶのに、モデルを使って学ん でみるっていうのもやっています。

秋山さん

秋山さん

私のテーマは UML でロボットを設計しようというもので、プロジェクトといわれる グループワークで行ってます。モデルベースのソフトウェア開発はどのくらい使える か調べることを目的としています。そして昨年は、 ET ソフトウェアデザインロボットコンテストMDD ロボットチャレンジに出場しました。 組み込み分野では企業でもまだ積極的にやってないと思われる UML モデルを使った ソフトウェア開発を、学生でやったことがアピールしたいところです。

-- 成績はどうでしたか?

秋山さん

大会には,キャッツ株式会社,富士通デバイス株式会社,富士通株式会社との産学連携チームで参加しました。ETソフトウェアデザインロボットコンテストでは,108チームが出場した中で6位入賞にあたるJASA特別賞をいただき,Embedded Technology 2006で行われたチャンピオンシップ大会にも選抜チームとして出場しました。また,MDDロボットコンテストでは,エキシビジョン競技に出場して,完全自律型の飛行船ロボットを披露しました。


動機は、ソフトウェア開発のプロセスや設計工程に興味を持ったから

-- では、そのテーマを選ばれた動機があれば教えてもらえますか。

小野さん

小野さん

今、「組み込み、組み込み」ってすごく言われ始めていますね。自分も携帯電話とか作 ってみたいなと思って、就職先も組み込み分野の企業に内定したので、「先に経験をし ておきたい、難しさを見ておきたい」っていうことから、このテーマを決めました。 350 ミリリットルの缶という重いものを持ち上げるロボットを、個人レベルで作ってい る例はあまりないと聞きまして、じゃあこれうまくいったらすごいんじゃないかなと勝 手に思っています。

-- モデルを使った設計というのもテーマに入っているということでしたが、モデルを 使って設計してみてどうでしたか。

小野さん

実はこれまでモデリング云々というより、設計がうまくできなかったんですよ。設計ど おりにプログラムを組んだりとか出来なかったので、設計どおりに作って気持ちよくき れいなコードでモノを作ってみたかったんです。モデルを使って設計してロボットを完 成できたので、今はモデルは大切だって感じています。

-- 逆に今までやっていなかったからこそ、その大切さががわかる...

小野さん

そうですね。自分の技量はまだまだですけれど。

秋山さん

秋山さん

私も 1, 2 年で、プログラミングはたくさん習ったんですけども、設計はほとんどやっ ていませんでした。それで、2 年の頃は、何千行っていうプログラムを、設計書も書か ずに頭ん中で考えて作って、これは駄目だと思いました。で、3 年でプロジェクトとい う授業があって、ソフトウェアの開発、設計というものがあったんで、やってみようっ てことで、このプロジェクトに入りました。あとロボットにも興味がありましたね。

片山さん

私は、去年のプロジェクトで、初めてモデリングをしてソフトウェアを作りました。 私も、授業でもいっぱい小さなプログラムを作ったり、ミニプロジェクトみたいな感じで システムを作ったりしましたけれども、設計とかっていうのは、なにもやってなかったんです。

片山さん

去年、初めてしっかりモデルを使って分析と設計をやってみて思ったのが、それまで 授業でやってきた「今日はこういう動きをするプログラム作りましょう」っていう方法 では、根本的なことをやっていなかったんだということなんです。根本的なことという のは、どうやって開発対象を考えて、ソフトウェアを設計すればいいのかってことです。 そう思ったときに、ひょっとしたらこれは自分だけじゃなくて、そもそも設計の方法を ちゃんと教育している大学はあんまりないんじゃないかと思って今の研究を始めました。

-- 片山さんはモデルを使えば分析・設計できるって思われて、教育にもモデリングを 積極的に使っていこうと思われた訳ですけれど、そう思われたきっかけは何なのでしょ うか?

片山さん

モデルと関係ないかもしれないけれど、私は UML を学ぶときに、UML を使った開発プロ セスも体験しました。最初に要求定義をして、分析して、設計してっていう開発の流れ を学びました。そういうのって、自分で経験しないと良さがわからないと思うんですよ。 だから みんなは書いちゃったほうが早いよってなってる気がします。 ということで、モデルやプロセスを教育したいと思いました。


意図を持ってモデル書かないと、伝わらない。

-- 「いきなり書いちゃったほうが早い」と思っている人に分析・設計の重要性を伝え るのって難しいと思いますが、どうですか?

片山さん

難しいです。そもそも学生が、自分と同じように分析・設計をしてきてこなかった人達 なので、そもそもなんでモデルを使うかをわかってもらうのは大変です。

-- 大変ですよね。そもそもなんでモデルを使うかっていう質問は、私もよく受けるんですけども。

片山さん

もちろん、その設計の方法を教育するのが自分の研究の1つなんですけれども、そのアプ ローチが難しかったです。

インタビュー風景

-- モデルはコミュニケーションにも使えると思うんですけれど、有効だと思われますか。

秋山さん

私はそう思います。やっぱり文字を羅列して、「はい。読んでください」っていうより 、図で表現して、わかりやすい形で表現すれば、コミュニケーションが円滑になると思 います。

-- 秋山さんはグループで作業されているということでしたが、コミュニケーション 良く研究ができましたか。

秋山さん

残念ながら今回のグループワークではコミュニケーションは良くなかったです。メンバー がモデリング担当と実装担当に分かれていたんですけれど、私はモデリング担当で、 それにかかりっきりだったんです。そして、自分ではしっかり書けたと思うモデルを 実装担当に見せて、「こうなっていますよ」って言ってもなかなか伝わらなかったです。

何が言いたいのか、何を伝えるために書くのかっていうことを優先して書くっていうこ とが大変でした。でもそれは、モデルだけじゃなくて、プレゼン資料でもなんでもそう なんですけれど、結局何を伝えたいかっていうのを一番最初に考えて書かなくちゃいけ ないですよね。そこが苦労しました。

-- そうですね。ただ漫然と書かれてあっても、読み手は何が言いたいのかわからない ですからね。

秋山さん

あと、自分の仕事はこれだって限定して考えすぎてしまって、他の人たちの仕事を自分 の領域じゃないって感じになってしまったっていうのがありました。自分はソースコー ドの中身がわからないのですが、実装の人は、モデルがわからないって言っていたので、 もっと話し合うべきだったのかなと反省しています。


-- 小野さんは、ロボットを作っていて苦労したこととかありましたか。

小野さん

私の研究は、先にレゴで作ろうって言うのがあって、それから制作物を考えたので、レ ゴの限界っていうのが苦労したことです。センサーの精度とか、ギヤのつくりが甘いと か、強度の問題があって、接着剤使おうって言う話もあったんですけれどね(笑)。で も、それもやっぱりハードウェアの制約なのかとも思うし、逆によかったです。そうい うのを味わえたから。

インタビュー風景

-- 組み込みプログラミングって制約との戦いみたいなところがありますものね。小野さんは、そういった中でモデルをどのように使用していたんですか。

小野さん

まず自分の中にあるイメージ、完成予想図みたいなものを書き出してみて、そこから H/W 設計してみたりとか、図とかそういうものを活用したりとか。あんまり UML には こだわらなかったです。最初は、“モデル= UML”という考えがあったんですけど、 今回の研究でモデルって何かがわかってきました。

-- なるほど。いろいろな方法を使ってみながらモデリングされていたんですね。確かに このようなロボットを作るときの最初のイメージみたいなのは、UML では書けないし、 とらわれる必要はないと思います。

小野さん

実は、最初は、自分がモデリングしているっていう意識は無かったんです。後になって これはモデリングだったんだって。

-- 自然に製造の前にイメージを作り上げていたんですね。


将来について

-- 最後の質問ですが、今後目指す姿や、夢があればお聞かせください。

インタビュー風景

小野さん

私は組み込み分野の会社に内定したので、そこでがんばっていきたいです。

組み込み面白そうだって言っているわりに実際に苦労も何も知らない。就職先を決めて は見たものの結局なにやっているかまったくわからなかったのですが、今回の卒業制作 でそれなりに、よく言われるハードウェアの制約ってことが少しだけわかりました。 それが就職したときになにか周りの人達よりも一歩先に足を踏み出せるきっかけになれ ばいいなって思っています。

片山さん

モデルを使った設計の良さをみんなに伝えたいです。

いまモデルを使って研究しているっていうと、教材を使ってもらう学生も、モデルって 何って顔をしますし、友達なんかに言っても「モデルなんかいらない、いきなり書けばい いんだよ」って言われるんですよ。分析・設計の重要さをわかってもらいたいなぁと思うので、それはなんでかっていうのを調べる。それを解決するにはモデルを使えばいいじ ゃないかっていうのが自分の考えです。そして、そういう考えの人達にもモデリングす るってことがいいものだということを気づいて欲しい。そういうことがしたいです。

秋山さん

私はモデルを使って設計してということが、まだかなり難しいなって感じています。モ デルを書いてみて、いざプログラムに落としてみようってなったら、うまくプログラム に落ちないことがあって、もうちょっと勉強が必要かなと思い、来年はまた飯田先生の 卒業制作に入ろうと思います。

あと、ソフトウェア開発プロセスも、興味があります。モデルをいくら書いても実装に 生かせなかったら意味が無いし、もっとうまくやるためにはどうすればよいのだろう ってことを考えています。

-- 今日はお忙しいところ集まってくださってありがとうございました。

皆さん

ありがとうございました。

デモ

ムービー

小野さんの作られたロボットをデモンストレーションしていただきました。

小野さん

この缶には半分くらい水が入っている状態なんですけど、このロボットは、缶をつかんで、持ち上げて、注いで、置くところまでを行ないます。

-- おぉ...すごく微妙な動きをするんですね。

小野さん

一気に動くと、注いでいるというより、ジャバジャバジャバってなっちゃうんですよ。

-- すごいですね。これは...。作るの難しそうですね。たくさんパーツも使われているし、結構苦労されたんじゃないですか?

小野さん

缶を持つアーム部分と、持ち上げる腕、そして肩の部分の3つの構成になっているんで すけどやっぱりレゴだけじゃ実現は難しかったです。

ロボット

-- 例えば、どこが難しかったですか?

小野さん

アームですね。すべっちゃうんですよ。レゴの部品では。アームのところにスポンジ を加工してあつかったりとか、そうゆう工夫はやっぱり必要でした。

--設計とかソフトウェアだけじゃなくって、ハードウェアの製造の部分が大変そうですね。

小野さん

ほとんどこうゆうところに費やしちゃって(笑)



インタビューを終えて

ロボット

ソフトウェアシステムの分析や設計を重要視されている研究室。まず、そういう印象を 持ちました。飯田研究室では、分析や設計を形式手法や UML を使ったモデリングでさ れていましたが、学生の方々がモデリングのシステム開発における有用性を熱く語って おられたのが、とても印象的でした。

けれども、飯田研究室は実践をとても大事にしておられ、コンテストにも積極的に参加 されています。理論と実践のバランスをよく保ちながら研究活動を続けていらっしゃる のだろうと感じました。

「学生はプログラミングよりもモデリングを面白いと思う」という飯田先生のお話はと ても興味深かったです。このような学生がこれからはどんどん増えるでしょうし、そう なると日本の IT 業界のありかたも変っていんだろうなと思いました。

さて、オージス総研もET ソフトウェアデザインロボットコンテストには、前身の UML ロボットコンテストの第 1 回目から参加しており、オブジェクトの広場編集部にもこの試練(?)を乗り越えているメンバーが多数います。参加レポートもありますので、ご一読ください。

研究室情報

研究室名 専修大学 ネットワーク情報学科 飯田研究室
助教授 飯田 周作
主な研究内容
  • 形式手法 (Formal methods)
  • 代数仕様 (Algebraic Specification)
  • 並行分散システム
  • 言語設計
  • 組み込みシステム
  • Smart Toys
  • CafeOBJ
Website

リンク・参考資料

インタビュアー

山口 健

山口 健(やまぐち たけし):オージス総研アドバンストモデリングソリューション部 エグゼクティブコンサルタント。1995 年頃から、多くのオブジェクト指向を用いたプロジェクトにアーキテクトとして参画。最近は、ビジネスモデリング支援、開発プロセス改善支援などのコンサルティングに従事。

(編集 : 角内 里江, 龍野 美羽, 水野 正隆)
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オブジェクトの広場では、「らぼなび!」で紹介させて頂ける研究室を募集しています。「是非、我々の研究室紹介をして欲しい!」という研究室は、オージス総研オブジェクトの広場編集部 (oosquare-editor@ogis-ri.co.jp) までご連絡下さい。