ObjectSquare [2007 年 6 月号]

[上海見聞録]


上海 見聞録

- 本屋 -

上海にも日本人向けのフリーペーパーが沢山あって日本語の活字には事欠かないのですが、少し時間ができた時には本屋に立ち寄ることにしています。中国語はまだあまり分からないのですが、日本の本屋とも共通する独特の雰囲気の中で上海の街の騒がしさを忘れることができ、落ち着きます。

上海の本屋街といえば、福州路です。本屋に加えて、文房具や画材の専門店も多くあり、私としては時間潰しにはもってこいの街です。この周辺では南北の道には中国の省の名前、東西の道には都市の名前が使われています。福州路も観光名所である外灘(バンド)から人民広場まで東西を結びます。福州路は昔は四馬路と呼ばれおり、現在の南京路である大馬路から数えて南側に四筋目の路になります。四馬路は昔は歓楽街として有名だったようですが、今ではすっかり文化的な街となっています。

福州路にある本屋のいくつかを紹介しましょう。『外文書店』は、輸入書籍や外国語・中国語のテキストを多く取り扱う本屋です。日本語の古本や雑誌なども販売されていますが、欧米向けの方が充実しています。ここで見つけた 1 冊の書き出し、「口自(←一文字)家是猫。名字嘛...」。世界的名著の日中対訳です。日本語では、「吾輩は猫である。名前は...」です。隣の『芸術書坊』には、絵画や書道関連の書籍、漫画の描き方などの書籍も販売されています。

上海城
写真 1 上海書城

福州路の数ある本屋の中でも一際大きいのが福建路との交差点にある『上海書城』 (写真 1) です。売り場は1階から6階まであり、入口の壁には「本は、人類進歩の階段である」(書是人類進歩的階梯)といったレリーフ (写真 2, 3) がかかっています。休みの日は、どこのフロアーも混みあっていますが、特に3階の参考書売り場が親子連れで混んでいるように思います。1人っ子政策の中国での教育熱が感じられます。コンピュータ関連の書籍は5階です。恐らく仕事も沢山あるのだと思いますが、CAD関連の売場面積が広くその周囲に人が多いのが印象的でした。

レリーフ(日本語あり) レリーフ(日本語なし)
写真 2 上海書城レリーフその1 写真 3 上海書城レリーフその2

さて「布謝、朗博、雅各布森」って何だか分かりますか?答えは、UML のスリーアミーゴ「Booch, Rumbaugh, Jacobson」の当て字です。ここで UML 関連書籍の中国での状況をみてみましょう。中国で良く利用されているインターネット書店で"UML"で検索してみると、www.dangdang.com では 134 件、www.china-pub.com では 154 件がヒットしました。ちなみに amazon.co.jp では、和書で 129 件のヒットですので、中国でも相当数の UML 書籍が入手できることが分かります。『上海書城』でも1年半程前に訪れた時にはなかった UML の陳列コーナーが今回は出来ていました。上海でも UML が確実に普及しつつあるようです。

UML 書籍としてはバイブル的存在である「UML参考手冊(第2版)-UML Reference Manual」[2005.8 出版, 75 元=約 1,200 円] (写真 4) や「UML 用戸指南(第 2 版)-UML User Guide」[ 2006.6 出版, 49 元=約 800 円] (写真 5) も中国語で読むことができます。それ程多くはありませんが、UML 2.0 の書籍も出版されています。また中国語に翻訳されていなくても影印版といって、原書(英文)を中国で印刷した書籍を安く購入することが出来ます。例えば「UML User Guide 」の影印版は、2006.4 の出版で 59 元= 約 950 円 で購入できます。価格は原書の 1/7〜1/8 (定価ベース)です。信頼のおける出版社から出版されていますので、ニセモノではありません。紙質や印刷はあまり美しくはありませんが、原書を安く読みたい日本人にとっても影印版は狙い目かもしれません。

中国の状況で特筆すべきは、Rose関連の書籍の多いことです。今年になって新たに出版された書籍もあります。翻訳に加えて大学の先生が教科書として執筆しているものが多く、教育機関には Rose が普及しているようです。Rational 社(当時)のマーケ戦略の巧みなところです。

それでは次回があるかどうか分かりませんが、再見!

(オージス総研 正田 塁)

リファレンスマニュアル(中国語版) ユーザーガイド(中国語版)
写真 4 UML 参考手冊 写真 5 UML用戸指南


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