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[シリコンバレー放浪記]


シリコンバレー放浪記 連載第2回

こんにちは。いよいよ2000年になりました。2000年になったから別に何が変わるというわけでもないのですが、人生の中でこうした大きな区切りの年を迎えることができるというのは、ちょっと得した気分にさせてくれますね。

さて、米国では新年を家族そろって家で迎える、あるいは、みんなで大騒ぎしながらカウントダウンダウン迎える、というのが一般的のようです。カウントダウンはパブなどのお店でイベントとして行われたりもしますが(入場料は割高)、シリコンバレーはサンフランシスコに近いため、サンフランシスコの街中でのカウントダウンに参加するために車を走らせた人も多いようです。

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2000年!!

サンフランシスコのダウンタウンでは、ミレニアム騒ぎによる被害を警戒する高級店が店の窓を板でガードしたり、人出がもっとも激しいと予想されるピア39やユニオンスクェア周辺が封鎖され、街中を多数の警察が警戒するなど、少しものものしい雰囲気でしたが、ちゃんとカウントダウン用の場所も確保されており(マーケットストリートの突き当たりの時計台前)、サンフランシスコ出身のミュージシャンによる音楽と世界各国のカウントダウンの映像で気分を盛り上げ、最後は約50万人(私の目測)そろってのカウントダウン、レーザービームと花火による光の演出、と日本の”しんみりと除夜の鐘”とは違った非常にショウアップされた楽しいイベントでした。

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暴動?を恐れて店の窓に板がはられた
Crowd
新年を祝う約50万人(目測)の人々

一方、新年を迎えるにあたって心配されたY2K問題も、社会に大きな影響を与える事件/事故があったわけでなく、田舎のクレジットカード認証端末に問題が発生、といった程度の軽微なものにとどまりました。
”IT産業の好景気はY2K対応に支えられている部分が大きく、Y2K対応終了後には景気が悪化する”、という予想もありましたが、いざ新年を迎えてみると、一時的に急落した株価もすぐに回復し、ドットコム企業群を中心とした e-Commerce などの情報システムに対する盛んな設備投資にも支えられ、株式市場は依然活況を呈しています。

最近では、米国のTVではドットコム企業群の宣伝が非常に多く、それら新興企業の積極的活動をますます身近に感じるようになってきています。米国一のスポーツの祭典といわれ、そのスポンサー争いの激しさと、広告費の高さでも有名なスーパーボウル(アメリカンフットボールのチャンピオンシップ)では、ドットコム企業群の参入により、例年よりさらに激しいスポンサー争いが繰り広げられたようです。昨年はスーパーボウルのスポンサーとなり、TVで宣伝を行った企業のサーバーが、放映直後のアクセス数の増加に対応しきれずダウンしてしまった、というくらいの影響力があります(これはスーパーボウルの宣伝枠の効果として、また企業側の準備不足の悪い例としてよく聞く話です)。
常識的に考えると、設立まもないベンチャー企業が、莫大な宣伝費をそのようなたった一コマのTVコマーシャルに費やすというのは非常にばかばかしく見えます。しかし、近年の米国産業においてはどのような分野であっても、市場シェアが1位か2位の企業しか勝ち残れないといわれており、新市場でシェア争いをするドットコム企業にとっては、競合他社に勝つために、早い段階でより多くの市場シェア確保する必要性が大きいといえます。したがって、それが危険な賭けだとわかっていても、莫大な宣伝費用をかけて認知度を高める必要があると考えられているのです。
さて、ここで興味深いのはたとえ設立間もないベンチャー企業であっても、そのような宣伝を行うための資金を持っているということではないでしょうか。米国では近年の好景気にも支えられ、ベンチャー企業が資金調達を非常にスムーズに行える状況にあります。そのおかげで、利益が赤字の企業であっても投資家から調達した資金をもとに、宣伝や情報システムといった先行投資を積極的に行うことが可能となります。逆にいえば、そうすることで市場シェアを確保していかないと、市場で生き残ることができず、結局投資家に損をさせることになるのです。よって、投資家のほうとしても先行投資に対して寛大であると思われます。そのようなことから、ドットコム企業の宣伝意欲は強まり、TV、雑誌を通じた宣伝合戦はより激しいものになるのです。

もうまもなくスーパーボウルが開催されます。
試合の行方はもちろんですが、今年は試合の合間に放映される宣伝合戦にも目が離せません。印象に残る宣伝があればまた来月にでも報告したいと思います。
それでは今月はこの辺で。

by iwade@亜米利加



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