ObjectSquare [2000 年 8 月号]

[シリコンバレー放浪記]


シリコンバレー放浪記 連載第7回

〜人材イテレーション〜



■フリーオンラインブローカー!

前回の放浪記の冒頭ではフリーのソフトウェアについて書きましたが、アメリカではソフトウェアの他に TheFinancialCafe.com や、ディスカウントオンラインブローカーの Ameritrade 系のオンライン証券会社 FreeTrade.com といった株式売買手数料が無料というサービスを提供する証券会社も登場してきました。
両社とも株式取引だけではビジネスが成り立ちませんから、株式取引以外のビジネス(パートナー企業のポータルとして、あるいは広告宣伝スペースを販売する事によって)での売り上げを見込み、長期的な戦略の一つとして、”株式取引手数料無料”を打ち出しているわけです。

一方、同じくオンラインでの株式取引を提供する Charles Schwab では最低手数料が $29.95 と非常に強気な価格設定をしています。同社では豊富なマーケット情報や、ファーストクラスの顧客サポートといった”高付加価値”をうたっており、現在のところ価格を引き下げるつもりはないようです。

利用者側からすると、自分の必要に応じたサービスを提供する証券会社を選択できるということで、多様性のあるサービス、価格設定はうれしい限りです。また、同時に野次馬として、一回あたりのコストが $6 程度といわれる株式取引を無料で提供する証券会社のビジネスが、どこまで成り立っていくのか、というのも非常に興味深くもあります。

■ITが支える米国経済と人手不足になやむIT企業

さて、近年の米国におけるIT好景気はご存知の通りだと思います。
例えば、IT産業の米国GDPに占める割合はここ10年間毎年約0.2-0.3ポイントづつ順調に上昇しており、1999年には8.2% を占めるにいたっています。さらにGDP成長に対するIT分野の貢献は更に顕著で、1999年におけるGDP成長の実に19.2%がIT分野によってもたらされているとのことで、まさにIT産業の"我が世の春"といった状況です。

しかしその一方で、IT産業における人材不足も深刻な問題となってきています。

例えば、米人材派遣大手マンパワーの報告では2000年第3四半期に人員増を予定している企業は、調査対象の1万6千社のうち35%にものぼるそうで、これは前年の32%を上回り過去最高水準だそうです。また、米情報テクノロジー協会が700社に対して行なった調査に基づくと、現在全米で約1000万人のIT労働者(公務員、NPO除く)がいるのに対し、2000年に必要とされる新規労働者は約160万人と急激な伸びを見せているのに対し、実際に見込まれる労働者の供給はおおよそ半分にしかならない85万に過ぎず、大幅な人材不足が見込まれています。

■IT産業は技術者天国!?

しかし、IT産業における人手不足が深刻になる一方、労働者にとってはIT産業はますます魅力的なものになっているのは確かです。
これは、社会人に限った事ではありません。
ちょうどこの時期は夏休みという事で、高校生、大学生もバイトに励んでいるようですが、かつてピザ屋やショッピングセンターといったところでバイトをしていた彼らも、最近はIT企業でのインターンを希望するようです。というのも、IT企業で働く高校生インターンの時給はなんと$15 になるところもあり、しかも、ストックオプションをつける会社もあるそうです!!

また、技術者にとっては、さらにIT産業は魅力的です。

Association of Internet Professionals が実施したインターネットカンパニーを対象とした調査によると、各ポジションにおける給料のうち、最も高い給料は Technical VP (技術担当副社長)の約11万ドルで、CEO、CFO の 約9万ドルを大きく上回っています(給料は中央値での比較)。
技術者の方が給料が高い、というのはその他の階層でも同様のようで、Director レベルで技術系約8万ドルに対し、営業、マーケティング系 Director では約6万ドル、一般の社員では技術系が約6万ドルに対し、営業などは約5万ドル、となっています。

技術者にとってはまさに魅力な状況ですね。

■今日の雇用、明日の解雇

とまぁ、薔薇色の話ばかりしてきましたが、IT業界はいい事ばかり、というわけではありません。流れの速い業界ですから、企業の浮き沈みも激しいですし、M&Aの活発です。人員の解雇もまた頻繁に行なわれています。

最近では BtoC 分野の状況が芳しくない事もあり、AltaVista.com の Shopping.com 部門で約60名の解雇が、 Beyond.com においては Btoc から BtoB への変換を計るという理由で75名(同社の約 20% )の解雇が行われましたし、BtoC 最大手の Amazon.com でさえ社員の約 2% にあたる150名の解雇を行なったという報道がなされました。

また、高騰する人件費がベンチャー企業の経営を圧迫しているのも事実です。
最近しばしベンチャー企業の Burn Rate (燃焼率:実際の営業活動により利益が獲得できる前に現金保有高を消費する率)が話題になります。
以前ならビジネスモデルの優劣が企業評価の一つの基準であり、莫大な広告費を使ったブランディングにも寛容さを見せていた株主たちも、 最近では Burn Rate を重要視するようになってきました。つまり、Burn Rate が高い企業は優れたビジネスモデル、ブランドを持っていたとしても資本家の評価を得られなくなってきています。したがって、予想したほどの売り上げ成長を見込めない、有力なクライアントを失った、など現金資金を確保できない企業は Burn Rate を下げるために、一つの手段として解雇という選択を行なわざるえません。

例えば、 Healthshop.com ではベンチャーキャピタルからの出資取り付けに失敗したために70名の解雇を、 InsWeb では最大手の顧客を失った事により 30 名の解雇を実施しました。

■すぐまた雇用

とはいえ、まだまだ人材不足の続くこの時期、解雇されたとしても能力さえあれば次の職場の引き合いは多いので、雇用不安といったものにはつながらないようで、さっさと次の企業へと就職が決まるようです。しかも労働者不足も手伝って、以前の職場よりも良い条件で雇用されたりする事もあるのだとか。
あまりに短期間で会社が変わっていくのもどうかと思いますが、解雇になってもすぐに次に行けるあたり、まぁ、うらやましい限りではありませんか、、、

それでは今回はこの辺で。

by iwade@亜米利加




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