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[JavaOne 2001 Japan 特集]




「J2EEフレームワークとコンポーネントビジネス」

今回のJavaOneは、米国以外で初めて行われたものでしたが、予想以上に多くのセッション・BOF(Birds-of-a-Feather )が用意されていました。しかしながら、時間的制約もあり、個人的に興味のあった2つのテーマに絞って、関連のあるセッションを受講しました。このレポートでは、その感想を紹介していきたいと思います。





テーマ1:J2EEアプリケーションのデザイン及びフレームワークについて


■ TS-3404 J2EE Blueprints

SUNのWebページで公開されている「J2EE Blueprints」と呼ばれる、エンタープライズアプリケーション向け設計ガイドラインについての説明が主な内容でした。スピーカのGregory Murrayさんは、流暢な日本語で話し、ときおりジョークを交えながら、特に最近お馴染みになってきたMVCアーキテクチャについての重要性について力説していました。
「J2EE Blueprints」については、既に日本語の書籍も出ており、内容についてはそちらに詳細な解説がありますが、J2EE自体も進化しており、JMS(Java Message Service )やJCA(J2EE Connector Architecture)等の規格も追加され、それに合わせて、次のバージョンの作成にかかっているとのことです。これについては、Early Access 版が以下のURLで参照できます。

https://java.sun.com/blueprints/earlyaccess/index.html

「J2EE Blueprints」で参考アプリケーションとして解説されている「Pet Store Demo」ですが、これもJ2EE 1.3で追加された仕様を利用した「Pet Store Demo Ver1.3」が公開されてます。技術的に多くの論議がなされ、大体コンセンサスが得られているWeb層に対して、EJB層(EarlyAccess版では、EIS層という名称に変更されている)は複雑過ぎで、中・小規模のアプリケーションで、あそこまでする必要があるかなというのが正直な感想です。

 

≪関連 URL≫
https://java.sun.com/blueprints/ja/index.html




■ BOF-15 The Struts Web Application Framework

Apache Jakarta Project が提供しているオープンソースフレームワーク「Struts」 の概要説明を中心に、Strutsが登場にいたる経緯や今後の予定等についても紹介されました。SUNのエンジニアでスピーカーのCraig McClanahanさんは、Strutsの開発者の一人であり、Jakarta Project Project Management Committee(プロジェクト管理委員会)のメンバーでもあります。このような経緯から、会場からはStrutsがJSR(Java Specification Requests)として提案されないのかという質問も挙がっていました。(JSRの対象領域ではない気がするが?)特に予定はないとの回答でしたが、Struts自体は今後もJ2EEの進化と共に、改定・改良は続くようです。
Jakarta Projectが提供しているソフトウエアのライセンス形態は、GNUライセンス とは異なり、一定条件を満たせば商利用も可能なので、第3者が販売する製品に組み込むことも可能です。
例えば、Jakarta ProjectのApacheは、インストールベースでは、他の商用Webサーバ製品より圧倒的に多くのサイトで導入されているという報告されています。又、商用Webサーバのなかにも、このApacheを改良して、商品化されたものもあります。
オープンソースのソフトウエアを利用するには、ソフトウエアのバグ等それなりにリスクもあります。しかし、利用形態にもよると思いますが、そのリスクを補って余りある程のメリットがあるのではないかと感じました。

 

≪関連 URL≫
https://jakarta.apache.org/struts/
https://www.ingrid.org/jajakarta/struts/index.html (日本語ページ)




■ BOF-27 Leveraging STRUTS, J2EETM, and XML, a Case Study

Strutsの概要と共に、具体的な利用例や、タグライブラリの使い方についても実例をあげて紹介していました。タグライブラリとは、HTMLやカスタムタグを用い、Web画面の静的な部分を定義する部分と、動的なHTMLを作成するコード部分を分離する技術です。このことによりプログラミングの知識がないが、Webデザインに長けたデザイナとの役割分担がしやすくなります。(確認はできていませんが、マクロメディアからこのタグライブラリに対応しているWebオーサリングツールがでるとかいう話が、BOF-15で挙がっていたと思います。)
この便利なタグライブラリに関して、会場から気になる意見がでていました。それは、タグライブラリで定義されたカスタムタグを多用すると、パフォーマンスがかなり悪化するという実開発での経験談です。質問していたその方は、結局パフォーマンスを優先してカスタムタグの利用を一部を除いてやめたとのことでした。この点についてはかなり気になるので、実際に一度評価してみようと考えています。いずれにせよ、このような便利な機能と、パフォーマンスはトレードオフになることが多いので、この特性を考慮したうえ取捨選択することになるでしょう。





テーマ2:コンポーネント流通について


■ BOF-28 再利用コンポーネント開発のためのヒント

19:00からという時間からの開始にも関わらず、かなり多くの聴講者がいました。スピーカの株式会社イーシー・ワンの方々も、この盛況を予想していなかったとのことで、少々お酒も入っていて、いつも以上に口が滑らかだったようです。
スピーカの一人は、システム開発の前線でプロジェクトマネジメントに携わっている方とのことでしたが、イーシー・ワンでシステム開発を受託する場合は、まず顧客との間で、そのシステム開発で構築するソフトウエアを、コンポーネント化することを提案するそうです。 コスト面でのメリットにはあまり触れられませんでしたが、コンポーネント化することによるオーバーヘッドについては、顧客企業側でのコンポーネントの再利用や、他企業での再利用によるインセンティブ等で中・長期的にみれば、メリットがあるのでしょう。
あともう一点、彼らがメリットを強調していたのが、フレームワークを利用することによるチームエンジニアリングへの貢献です。イーシー・ワンでは、「J2EE Blueprints」準拠の「cFramework」という製品を出していますが、彼らが手がける、ほとんどのシステム開発にこれを利用することによって、チームの意思疎通や、アーキテクチャ構築・標準化に対するコストが抑えられるとのことでした。
コンポーネントの構築・再利用を前提とした開発プロセスのノウハウについて、徐々に溜まってきているので、いずれ何らかの形で公開していきたいとのことでした。
是非期待しています!




■ BUS-3601 J2EEコンポーネントに関するマーケット・トレンド(パネルディスカッション)

このセッションでは、J2EEコンポーネントの再利用ビジネスに関わっている企業の方々が、今後のマーケット・トレンドについて、意見を述べるというものでした。パネルディスカッションということなので、何らかの議論が飛び交うのを期待していたのですが、やはり50分という時間でそれを期待するのには、無理があったかもしれません。
今回パネリストを出している、コンポーネント流通の為の団体には、大きく分けて3種類に分類されると思います。

  1. 大手システム会社と、その関連企業で構成されるもの。
    例)NEC、富士通
  2. 独立系ソフトウエア企業と、協賛企業で構成されるもの。
    例)株式会社イーシー・ワン
  3. 協賛企業と、コミュニティ運営専門会社で構成されるもの。
    例)株式会社コンポーネントスクエア

それぞれの形態毎に、ビジネスの制約や企業文化等による、メリット・デメリットはあると思いますが、いずれにせよ「コンポーネント流通」という共通の大きな課題に向け、必要によっては協業しながら、マーケットを開拓していく必要がありそうです。

(株)オージス総研 山口 健




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