ObjectSquare

[ObjectDay2001特集]




21 Century Squeakzoid Man

- Object Day2001 "SqueakMore!" 体験レポート -

by (株)SRA 西原聡士(*1)


前回の Object Day 2000 でも開催された Squeak イベント "Speak Squeak!" では涙を飲んで不参加のため、今回 Object Day 2001 は是が非でもの勢いで行って参りました、 "Squeak More!" セッション、阿部、梅澤、大島 (五十音順、敬称略) という Trio the Squeakers によるライヴ・アクトは予想を裏切らぬ充実した内容で、 PFM 的な「幻想の世界」かどうかは不明なれど (とは言え、すでにこれはファンタマスゴリアではありません。リアルです)、少なくとも、 King Crimson 的、"One More Red Nightmare"、いやいや "Larks' Tongues In Aspic, 2001" ぐらいのインパクトはあったと申せましょう。Squeak はどんどん進化というか変貌しているのでありました。まさに万物流転、「生きてるオブジェクト指向、しかも pure」、やはり時代は、「21 世紀のちゅぅちゅぅ男」、これしかありません。こやつ Smalltalk ベースの「優れたマルチメディア関連ライブラリ」に留まることなく、Web系、PDA系を巻き込みながら、鼠算的にどんどこ増殖しつつあります。

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150 名収容の会場 RoomD は、ほぼ満員で熱気ムンムン、現役 Smalltalkers、かつての Smalltalkers、熱狂的な Squeakers が集結し、ときおり笑い声が混じるという、一見「和気あいあいとした雰囲気」でしたが、やはり熱気は隠せません、 みな食い入るようにスクリーンを注視 していたのでありました。

今回の Squeak セッションはソナタ形式に則り、提示部:梅澤さん、展開部:大島さん、再現部:阿部さんという順番で粛々と進行されました。

序奏なしに主和音 2 発、いきなりアレグロの提示部は梅澤さんです。誕生、コンセプトをきっちり提示したあと、マルチ・メディア、分散デスクトップ (!) という第三主題も提示。まるでブルックナー。

大島さんによる展開部、これがもう凄かった。実際に Squeak の組み込んだ専用 PDA を開発し、そいつ 100 台をディズニーの『アニマル・キングダム』で観客に配り、いろいろやってみせたプレゼンです。会場案内から始まって、現在地の表示や、行く先案内、レストランの予約、果ては行列待ち時の Killing Time with Filling Time ということで、ゲームまでこなしてしまうというアグレッシヴさ。小さな子どもたちや、およそパソコンとは縁のなさそうなおぃさんおばさんまでが、楽しそうにいじくってる姿がたいへんに印象的です。しかも、これらのプログラムは、八人のデザイナ等を相手に、たった二人のプログラマが鼻歌まじりに (ここは違うか知れん) 作り上げたそうです。

阿部さんの再現部では、もちろん日本語を含む多言語 Squeak や各種 PDA 移植事情の紹介など。ちなみに、 Squeak は web 用のブラウザやメーラはもちろん swiki と呼ばれる「Web を使って直接文書を編集するための Web 用ソフトウェア」も含んでいます。そこで動いている、実際に眼で観る多言語 Squeak は強烈な印象を与えます。アイディア賞もののリモート・システムや PHS (ぬわにぃ〜!!!) でも動いてます。それはともかく、Squeak を載っけた自律型潜水艇 MicroSeeker に至っては (もちろん佳い意味で) 爆笑。実際に風呂場に浮かべてテストしてるそうです。 をいをい、ここまでやるか、ふつぅ〜〜〜。 \(^o^)/

ライヴ終演後は Trio the Squeakers を囲んで、抜き打ち的な Squeak BOF。某所で怪気炎を上げていたと、古老は語ります。

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Squeak は 1996 年 9 月、当時アップルに所属していた Alan Kay や Dan Ingalls ら、錚々たるメンバーによって version 1.1 が公開されました。翌年の OOPSLA97 で Dan Ingalls, Ted Kaehler, John Maloney, Scott Wallace, Alan Kay というコア・メンバーが "Back to the Future, The Story of Squeak, A Practical Smalltalk Written in Itself" という論文を発表し、一躍その名を轟かせました。コアの開発チームはディズニーに移籍しましたが、 Squeak は世界各国のオープンソースコミュニティを巻き込みつつ、順調にヴァージョン・アップを続け、Swiki など大きな機能アップを施しつつ、 2001 年 3 月現在、 3.0 (3.1 alpha) がリリースされています。以下の表は、 Squeak 1.1、3.1 alpha、ならびに VisualWorks(*2) の 3.0a、5i.3 におけるクラス・ライブラリの簡単な比較です。クラス数、メソッド数、および、クラス当たりのメソッド数を算出しています。ごく短期間 (4.5 年) に、どんどこ大きくなっている (クラス数にして 5 倍だって!?) のが判ると思います。もちろん、ユーザインタフェースのフレームワークを MVC と Morph の 2 種類抱えている勘定で、単純に比較してはいけませんが。

brief comparison of class library size
version or product classes methods NOM
Squeak
Squeak 3.1 Alpha (4041) 1652 37322 22.6
Squeak 1.1 327 7351 22.5
VisualWorks
VisualWorks(R) Non-Commercial 5i.3 1461 29317 20.1
VisualWorks 3.0a NC 953 20144 21.1


(*1)
Smalltalk/V 用『明』の拡張キット、 2-Dimensional Voronoi and Delaunay Diagram プログラム、 オブジェクト指向メトリクスプログラム、 はたまた 20 数個の Goodies など、 青木淳氏 (ら) の手による各種プログラムの Squeak への移植 作業を通じて Smalltalk を独学、いまだに勉強中。 多分死ぬまで学習中。 勤務中は JNI の泥沼にどっぷり浸かって沈没中の不良会社員。 自宅では Sonus Faber と Linn の組み合わせで電化 Miles、Coltrane、Magma、Area、Ginastera、Orff などの爆音再生に耽る。英国 Delius 協会会員。 Lucia Popp、 吉田美奈子のファン。

(*2)
商用 Smalltalk の最高峰。 Smalltalk-80 直系で、ズバ抜けた性能を誇る頑健な環境。商用環境とほぼ同等の機能をサポートし、用途を製品評価と個人の学習用に限った Non-Commercial 版がCimcomから無償で利用できる。

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