ObjectSquare [2012 年 8 月号]

[技術講座]


IEEE Software March/April 2012 目次と要旨(日本語訳)

翻訳:オブジェクトの広場

IEEE Software March/April 2012号は「クラウドに対するソフトウェア工学」についての特集を組んでいます。 クラウドにおける新たな課題としてテスティング、アクセス制御、性能評価などに関する記事が掲載されています。



IEEE Software

私たちの使命: 先導的なソフトウェアの実践者のコミュニティを作るために, IEEE Software誌は迅速な技術の変化についていかなければならない思慮深い開発者やマネージャーに対して先進的なアイデアや専門家の分析,確かなアドバイス,思慮深い洞察を提供します. ソフトウェアの理論を実践へと翻訳するオーソリティです.

March/April 2012 (Vol. 29, No. 2):Cloud Computing

謹んでIEEE Software March/April 2012 (Vol. 29, No. 2) 号の目次と要旨をお送りします. 各号では無償の記事(英語)やポッドキャスト(英語)がいくつか提供されており, それらは要旨の下のリンクから入手することができます. 有償の技術的な記事を入手するために, 英語の印刷版[www.computer.org/subscribe/sw-jp], またはデジタル版[www.qMags.com/ISW/jp]を購読することができます.お問い合わせは, 編集長であるBrian Brannon (bbrannon@computer.org)宛てに電子メールでお願い致します.

目次

編集長から (FROM THE EDITOR)

テスティングの素晴らしき新世界? Google 社の James Whittaker 氏へのインタビュー (A Brave New World of Testing? An Interview with Google’s James Whittaker)

Forrest Shull

クラウドコンピューティングがどんどん普及するにつれて,ソフトウェアテスティングのプラクティスの状況を変わってきている. Google 社の技術ディレクターである James Whittaker 氏に対するインタビューにおいて, 編集長の Forrest Shull がクラウドコンピューティングの重要なトレンドやそれが意味するところについていろいろお話を伺っている. お話の中では, モニタリングフレームワークへのより広範なアクセス, 大規模なユーザコミュニティ (品質管理の”クラウドソーシング”)から直接的なフィードバックを集約したり, 対応したりする能力, バグが見つかった際の正確なマシンの構成を知るための能力のような中心的な技術の変化を網羅している. これらすべての変化はソフトウェアテスト担当者にとってどのスキルが大事で, どのスキルが大事でなくなるのかという点に対して具体的な影響をもたらす. 付属するポッドキャストではすべてのやり取りの録音及びプライバシーテスティングのような, より詳細を提供している.
https://www.computer.org/csdl/mags/so/2012/02/mso2012020004.html

洞察 (Insights)

厳しいビジネスの世界のための次世代アーキテクト (Next-Generation Architects for a Harsh Business World)

Walter Ariel Risi

Walter Ariel Risi は, 生産性の高い人々を雇用するためのいくつかのパターンを提案している. これらのパターンは, パターンの初期の頃に Jim Coplien が行ったいくつかの研究を思い出させる. Jim Coplien は, 並外れて生産性の高いチームには多くの場合に音楽家が含まれることを発見したのだった! かつてはまだ, ソフトウェア工学やコンピュータ科学では大学で学位が認定されていなかったので, 会社はしばしば他の専門分野出身の頭のよい人々を雇った. いまや現在の学位重視の風潮となったが, 我々は何か重要なものを見失ってしまったのかもしれない. ― Linda Rising, 副編集長
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.37

インパクト (Impact)

インターネットを探す (Searching the Internet)

Mike Andrews

Microsoft 社のMike Andrews 氏がBing 検索エンジンについて魅惑的に少し触れながらWeb検索を成功させるために求められる, 入り組んだ膨大なリソースの一端を明かす.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.39

要求 (Requirements)

傾聴し, そしてEARSを使おう (Listen, Then Use EARS)

Alistair Mavin

Easy Approach to Requirements Syntax (EARS) テンプレートを用いると, 簡潔で明瞭な要求を書ける. 要求を簡潔な文として書くためには, まずシステムにやってもらいたいことを理解しなければならないが, これが難しいかもしれない. EARSテンプレートは簡潔なので, システムのやるべきことのあいまいな記述の裏にエンジニアは隠れることができなくなる.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.36

アーキテクチャについて (On Architecture)

未来に向き合う (Facing Future)

Grady Booch

ソフトウェアの比重が高いすべてのシステムは, そのシステムの存続する期間において後戻りができない地点に至る. 最精鋭の開発者の集団をすぐに投入し, それらの開発者が世界を動かすともはや期待できなくなる地点である. むしろ, 投入がきわめて困難になった開発者の集団がもはや適切な手段ではないということに気づかねばならない. 依然として価値を保ち, 組織の開発文化の種族の記憶を保ちながら, その地点を横切るのには厳粛な大人の監督が求められる.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.29

ソフトウェア技術 (Software Technology )

ソフトウェア並列化のためのテクニックとツール (Techniques and Tools for Parallelizing Software)

Hans Vandierendonck, Tom Mens

マルチコアプロセッサーやメニーコアプロセッサーの登場により, 技術者は, すべてのコアの計算力を活用するために, まったく新しい方法でソフトウェアを設計開発しなければならなくなった. しかし, 並列ソフトウェアの開発は, 並列性を分離するということが簡単にできないために, 逐次実行されるソフトウェアの開発よりも困難である. 著者であるTom Mens と Hans Vandierendonck は, この複雑で間違いを起こしやすいタスクに携わる技術者を支援するための, 技術とツールについて概観を示す.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.43

特集: クラウドコンピューティング (FOCUS: Cloud Computing)

ゲスト編集者の導入 (Guest Editors’Introduction)
クラウドのためのソフトウェア工学 (Software Engineering for the Cloud)

John Grundy, Swinburne University of Technology
Gerald Kaefer, Siemens
Jacky Keong, Hong Kong Polytechnic University
Anna Liu, National ICT Australia

クラウドコンピューティングは, アプリケーションを複合されたサービスの集合に分割し,賃貸しされた高度に分散されたプラットフォームでそれらのサービスをホスティングするというソフトウェアシステムに対する新たな考え方である. クラウドベースのソフトウェアアプリケーションを効果的に作るためのソフトウェア工学上の新たな課題は多い. 本特集ではクラウドコンピューティングアプリケーションの工学に実務的な貢献を, ソフトウェアプロセス, アーキテクチャと設計のアプローチ, テスティング, スケーラビリティエンジニアリング, セキュリティエンジニアリング, 高度に並列化されたクラウドベースのシステムの応用に渡って提供する.
https://www.computer.org/csdl/mags/so/2012/02/mso2012020026.html

自動化されたクラウドアプリケーションテスティングのための環境モデリング(Environmental Modeling for Automated Cloud Application Testing)

Linghao Zhang, Xiaoxing Ma, and Jian Lu, Nanjing University
Tao Xie, North Carolina State University
Nikolai Tillmann and Peli de Halleux, Microsoft Research

環境の振る舞いをシミュレーションしたり, 動的なシンボリック実行を適用することでクラウドアプリケーションに対して高い構造的なカバレージを達成するためのテスト入力やクラウドの状態の生成を支援できる.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2011.158

クラウドコンピューティングのための分散されたアクセス制御アーキテクチャ (A Distributed Access Control Architecture for Cloud Computing )

Abdulrahman A. Almutairi and Muhammad I. Sarfraz, Purdue University
Saleh Basalamah, Umm Al-Qura University
Walid G. Aref and Arif Ghafoor, Purdue University

クラウドコンピューティングのセキュリティの課題に対処するため、斬新な分散アーキテクチャにセキュリティ管理とソフトウェア工学の原則を組み込んだ.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2011.153

クラウドにおけるテスティング:プラクティスを探索する (Testing in the Cloud: Exploring the Practice)

Leah Riungu-Kalliosaari, Ossi Taipale, and Kari Smolander, Lappeenranta University of Technology

クラウドベースのテスティングは従来手法よりも効率的で効果的だが,広範に取り入れる前に組織はそれを理解し, 信頼しなければならない.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2011.132

Google App Engine上での高性能コンピューティングを評価する (Evaluating High-Performance Computing on Google App Engine)

Radu Prodan, Michael Sperk, and Simon Ostermann, University of Innsbruck

Google App Engineでは, リソースプロビジョニングのオーバーヘッドが相対的に低く, 1時間未満のジョブに対する低価格モデルを提供している.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2011.131

ソフトウェア品質 (FEATURE: Software Quality)

ソフトウェア品質改善を促進するために欠陥追跡システムを増強する (Enhancing Defect Tracking Systems to Facilitate Software Quality Improvement)

Jingyue Li, Tor Stålhane, and Reidar Conradi, Norwegian University of Science and Technology
Jan M.W. Kristiansen, Steria

経験的なプロセス制御に依存し, 頻繁に動くバージョンのソフトウェアを提供するプロジェクトにおいて, 開発者とプロジェクトマネージャーは定期的に自分達のソフトウェアの品質を調査する必要がある. 本研究は, プロジェクトのそれぞれの欠陥追跡システムの既存データに対するシンプルな目的指向の変更または拡張により, ソフトウェア品質評価および保証を改善するために価値のある情報や迅速な情報を提供しうることを示す.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2011.24

技術移転(FEATURE: Technology Transfer)

産学連携を後押しする成功要因(The Success Factors Powering Industry-Academia Collaboration)

Claes Wohlin, Blekinge Institute of Technology
Aybüke Aurum, University of New South Wales
Lefteris Angelis, Aristotle University of Thessaloniki
Laura Phillips, Macquarie Group
Yvonne Dittrich, IT University of Copenhagen
Tony Gorschek, Håkan Grahn, and Kennet Henningsson, Blekinge Institute of Technology
Simon Kågström, Net Insight AB
Graham Low, University of New South Wales
Per Rovegård, Factor10
Piotr Tomaszewski, ST-Ericsson
Christine van Toorn, University of New South Wales
Jeff Winter, Blekinge Institute of Technology

企業と学術研究機関との連携は, 産業の改良と革新を支援し, 学術研究における産業との関連性の確保に役立つ. 本記事では, ソフトウェア研究での産学連携を成功させる要因についての実地調査研究を示す.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2011.92

要求工学 (FEATURE: requirements engineering)

ソフトウェアプラットフォームに対する非機能要求の開発から得た教訓 (Lessons from Developing Nonfunctional Requirements for a Software Platform)

Xiping Song, Beatrice Hwong, and Johannes Ros, Siemens Corporate Research

大規模な共用ソフトウェアプラットフォームのための非機能要求の開発によって学んだ教訓には, 非機能要求の管理やプラットフォーム性能テストの自動化に役立つテクニックが含まれている.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2011.69

現実的なアーキテクト (The Pragmatic Architect)

コードは大事! (Code Matters!)

Frank Buschmann and Jorg Bartholdt

アーキテクトはコーディングすべきであるということには幅広い意見の一致が見られる. それでも敢えて問われるのは, 「アーキテクトはどうやって無数の局所的なコードの詳細の中で見失うことなくプログラミングできるのだろうか」ということである.プログラミングする時でさえ, アーキテクトはシステムのアーキテクチャ全体を完全に制御すべきである. それゆえ, アーキテクトは楽しんだり, 開発者に受け入れられるためにプログラミングをするべきではない. 代わりに, アーキテクトはアーキテクチャの実現を導き, 自らの設計の持続性および居住適性に関するフィードバックを得るためにプログラミングすべきである! アジャイルなプラクティスにより, アーキテクトはプログラミングとプログラミングするシステムの一部や関心事に割く時間をコントロールできるようになり, コーディング作業と他の仕事とのバランスを取ることが可能になる.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.27

商売道具 (Tools of the Trade)

パッケージ管理システム (Package Management Systems)

Diomidis Spinellis

パッケージ管理システムは, ソフトウェアの集合の作成と消費を標準化し, 組織化することでソフトウェアの導入と保守を整理し, 簡単にする. ソフトウェア開発者としてあなたがパッケージマネージャーから2通りの恩恵を受けることができる.手厚く安定した環境による恩恵と摩擦のない再利用による恩恵である. 有望なことに, パッケージマネージャーは開発プロセスにおいて利用するツールとプロダクト中で再利用するライブラリの両方にもたらされる構造はソフトウェア開発とIT運用を統合する最近のDevOps (development operations) を強調する動きとうまく結び付く.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.38

ご意見箱(Sounding Board)

男女格差: IT業界の問題? それとも単にコンピュータ科学の世界の問題? (The Gender Gap: Is It a Computing Problem or Simply a Computer Science Problem?)

Robert L. Glass

コンピュータ科学の世界に男女格差が存在することは, ほとんどの人が同意している. この分野に参画している女性はほとんどいない. しかし, この格差はIT業界全体で発生していることなのだろうか? 今回のご意見箱では, その格差はコンピュータ科学の世界に特有のものであり, IT業界全体ではなく, コンピュータ科学という分野内で解決されるべき問題であるという意見について検討する.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.44




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