ObjectSquare [2013 年 9 月号]

[技術講座]


IEEE Software May/June 2013 目次と要旨(日本語訳)

翻訳:オブジェクトの広場

IEEE Software May/June 2013号の特集は「セーフティクリティカルなソフトウェア」です。 「セーフティクリティカルなソフトウェア」とは、鉄道、航空宇宙、医療などソフトウェアの不具合で人命が失われかねないような高度な安全性が求められるシステムの一部として使われるソフトウェアのことです。



IEEE Software

私たちの使命: 先導的なソフトウェアの実践者のコミュニティを作ること.

IEEE Software 誌は迅速な技術の変化についていかなければならない思慮深い開発者やマネージャーに対して先進的なアイデアや専門家の分析,確かなアドバイス,思慮深い洞察を提供します. ソフトウェアの理論を実践へと翻訳するオーソリティです.

セーフティクリティカルなソフトウェア (Safety-Critical Software)

謹んでIEEE Software May/June 2013 (Vol. 30, No. 3) 号の目次と要旨をお送りします. 各号では無償の記事(英語)やポッドキャスト(英語)がいくつか提供されており, それらは要旨の下のリンクから入手することができます. 残りの技術的な記事を入手するために, 英語の印刷版[www.computer.org/subscribe/sw-jp], またはデジタル版[www.qMags.com/ISW/jp]を購読することができます. お問い合わせは, 編集長であるBrian Brannon (bbrannon@computer.org)宛てに電子メールでお願い致します.

目次

編集長より (FROM THE EDITOR)

あなたの話を共有する (Sharing Your Story)

Forrest Shull, Fraunhofer Center for Experimental Software Engineering

IEEE Softwareの編集長であるForrest Shull が経験報告の価値とそれらの報告がどのように単純なメトリックスが提供できないこともある実践的なアドバイスや観点を提供できるかについて論じている. さらに, Software Experts Summit 2013 について論じるとともに本誌が新たなマルチメディア編集者を探していることを告知する.
https://www.computer.org/csdl/mags/so/2013/03/mso2013030004.html

洞察:ストーリーテリング(Insights: Storytelling)

ソフトウェアプロフェッショナルのためのストーリーテリング (Storytelling for Software Professionals)

Arjen Uittenbogaard, inspearit

ストーリーテリングについて初めて読んだ本は, のちにArmstrong International社の副社長となったDavid Armstrongの書いたものだった. 始めは懐疑的だったものの, 今ではストーリーに入れ込んでいる. パターンについて深く関わるようなって, 読み手にコンテキスト, 問題, フォース, 解法, 結果として生じるコンテキストを伝えようとすることは, 単によいストーリーを語ろうとしているだけであることだと気付くようになった. 時がたつにつれ, よいストーリーであるほど有効なパターンであると考えるようになってきた. 20年たった今もそう信じている. 本記事はストーリーテリングについての記事であるだけでなく, それ自身よい寓話でもある. 気楽に楽しんでいただきたい!
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.59

要求 (Requirements)

要求はまだ活きているのか? (Are Requirements Alive and Kicking?)

Jane Cleland-Huang, DePaul University

利害関係者のニーズを発見・理解し, そのニーズに合った高品質な製品を納品する重要性はいつまでも変わらないものである, だが, ここ数十年のIT環境の劇的な変化によって、要求プロセスは課題を突きつけてられてきた. それによって, そのほぼすべての面に影響するような、新しく革新的なアプローチが求められてきた.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.47

コンピューティングについて (On Computing)

退屈なことを弁護する (In Defense of Boring)

Grady Booch, IBM

一方で, 我々は革新的で, エレガントで, 非常に役に立つソフトウェアを集約したシステムを構築しようとしている. 他方では, コンピューター技術それ自体は価値を持つ場所ではなく, それゆえコンピューターが我々世界の空間を満たすにつれてそれは退屈なものになってきている. そしてそれはとてもよいことであり, 望ましいことなのである.
https://www.computer.org/csdl/mags/so/2013/03/mso2013030016.html

商売道具 (Tools of the Trade)

システムズ・ソフトウェア (Systems Softwares)

Diomidis Spinellis, Athens University of Economics and Business

システムズ・ソフトウェアは, アプリケーションがその上で動作する低レベルのインフラである. アプリケーションプログラマーとして, システムズ・ソフトウェアを一から書くのではなく,既存のものを探すことをまず試みる. 一旦システムズ・ソフトウェアを書き始めると, 処理量に優雅に収まるように最も効率的なアルゴリズムやデータ構想を用いる. エラー返り値をすべてコードでチェックさせ, 対処の方法がない場合はブロックし, メモリーで繰り返しデータを処理することを避ける. 境界条件でテストを行うようにテスティング環境を構成することでストレステストを加速することができる. ソフトウェアをデバッグするために, 膨大な量の構成可能なログ出力を仕込む.
https://www.computer.org/csdl/mags/so/2013/03/mso2013030018.html

ソフトウェア技術 (Software Technology)

産業用自動化システムにおけるソフトウェアエージェント (Software Agents in Industrial Automation Systems)

Stephan Pech, BASF SE

エージェント指向は, その起源であるコンピューター科学から応用自動システム工学へと移動しつつある. 産業自動化でソフトウェアエージェントを使う主な恩恵は, エージェント指向ソフトウェア工学とセマンティック技術のような成長しつつある分野とを一緒に適用することにある. ソフトウェアエージェントは柔軟性ももたらし, それは実行時に発展できるソフトウェアシステムアーキテクチャーを作るために大事な要求であることが多い.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.57

ゲスト編集者の導入 (Guest Editors’ Introduction)

セーフティクリティカルなソフトウェア (Safety-Critical Software)

Xabier Larrucea, Tecnalia
Annie Combelles, inspearit Group
John Favaro, Intecs SpA

我々は自らの安全性がソフトウェアを集約したシステムに依存している世界で生きている. これは, 航空, 自動車, 医療, 原子力, 鉄道分野やそれ以外のより多くの分野に当てはまることである. どこの組織もそれらのシステムの安全性に対するニーズを尊重しながら, 規模と複雑さの膨大な増加に対処するコスト効果の高い手法を見つけようと奮闘している. その結果として, セーフティクリティカルなソフトウェアシステムの開発の更新された教えが安全性に関する観点で再検討された広範なソフトウェア工学手法, ツール, フレームワークとして無秩序に出現していることを我々は目撃している. それらの複雑で不可欠なシステムの台頭が安全性に関係する文脈での利用に適していると認定された成果物や手順と技術的な成果物の両方を促進する近年のいくつかの取り組みを生んだ. 間違いようがない1つのトレンドは, セーフティクリティカルなシステムの開発の全ライフサイクルに渡るモデル駆動工学テクニックの適用における強い興味である.
https://www.computer.org/csdl/mags/so/2013/03/mso2013030025.html

セーフティクリティカルなソフトウェア (Safety-Critical Software)

鉄道業界におけるモデルベース開発と形式手法 (Model-Based Development and Formal Methods in the Railway Industry)

Alessio Ferrari, CNR-ISTI
Alessandro Fantechi, Università di Firenze
Stefania Gnesi, CNR-ISTI
Gianluca Magnani, General Electric Transportation Systems, Florence

コードベースのプロセスからモデルベースのプロセスへの移行は, セーフティクリティカルな分野で操業する会社にとっては特に, 簡単ではない. ある鉄道信号機のメーカーは, 製品開発のために, 形式手法を使った汎用のモデルベース・ツールを採用したが, それは困難にぶつかりながら, 教訓を得ながらのものだった.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.44

統計的なモデル検査でソフトウェア信頼性を早く検証する (Validating Software Reliability Early through Statistical Model Checking)

Youngjoo Kim, S-Core
Okjoo Choi, Korea Advanced Institute of Science and Technology
Moonzoo Kim, Korea Advanced Institute of Science and Technology
Jongmoon Baik, Korea Advanced Institute of Science and Technology
Tai-Hyo Kim, FormalWorks

提案されたフレームワークは, 早い段階でソフトウェアの信頼性を検証するために統計的なモデル検査を採用している. これにより後の段階での信頼性割り当てエラーや設計エラーの波及を防ぐことができ, その結果としてセーフティクリティカルなシステムをより安全でより安くより速く開発できる.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.24

モデル駆動アプローチで航空管制システムを工学的に検討する (Engineering Air Traffic Control Systems with a Model-Driven Approach)

Gabriella Carrozza, SESM
Mauro Faella, Critiware
Francesco Fucci, Federico II University of Naples
Roberto Pietrantuono, Federico II University of Naples
Stefano Russo, Federico II University of Naples

航空管制システムのソフトウェアのテスティングはそれを構築するよりもはるかに多くのコストがかかる. ソフトウェア開発者は, 全開発フェーズの間で検証の労力をよりよく分散し, コストのバランスを取るための手法とプロセスレベルの解決策を見つけようと奮闘している. モデル駆動アプローチが解決策をもたらすかもしれない.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.20

テスティングあるいは形式的検証: DO-178Cの代替と産業界の経験 (Testing or Formal Verification: DO-178C Alternatives and Industrial Experience)

Yannick Moy, AdaCore
Emmanuel Ledinot, Dassault-Aviation
Herve Delseny, Airbus
Virginie Wiels, ONERA
Benjamin Monate, TrustMySoft

商用機のためのソフトウェアは, “航空システムと装備の認証におけるソフトウェアの留意点”を記したDO-178B 標準に記述された厳しい認証プロセスを受ける. 2011年末に発行されたDO-178C では, ある形式のテスティングを形式的検証で置き換えることを許している. Dassault-Aviation社とAirbus社は テスティングに対するコスト効果のある代替として形式的検証を早期に適用することに成功している.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.43

セーフティクリティカルなプロジェクトに対する戦略的な追跡可能性 (Strategic Traceability for Safety-Critical Projects)

Patrick Mader, Ilmenau Technical University
Paul L. Jones, US Food and Drug Administration
Yi Zhang, US Food and Drug Administration
Jane Cleland-Huang, DePaul University

米国食品医薬品局でのレビューに備えた製造業者の10件の応募書類について追跡可能性の評価により, タイムリーを製品の安全を評価する規制当局の能力に影響する9つの広範な追跡可能性に関する課題が明らかになった.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.60

航空管制ソフトウェア: 発生した間違いと教訓 (Flight Control Software: Mistakes Made and Lessons Learned)

Yogananda Jeppu, Moog India Technology Centre

航空宇宙や航空管制のソフトウェア開発は厳格なプロセスに従っているが, それにも関わらず依然としてソフトウェアのエラーが発生する. 23年間にも渡り, 航空管制のテスト作業で発見された間違いをレビューした結果, 同じ間違いが繰り返し起きていることが分かった.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.42

SCEPYLT:テロとの戦いのための情報システム(SCEPYLT: An Information System for Fighting Terrorism)

Jesus Cano, Universidad Nacional de Educacion a Distancia
Roberto Hernández, Universidad Nacional de Educacion a Distancia

SCEPYLT と呼ばれるセーフティクリティカルなソフトウェアシステムは, 従来コンピュータ化されてこなかった分野に情報ソリューションを提供する. それは爆薬と, それらの運用, 保管, 移送, 使用における, 関連リスクについての分野である. SCEPYLTは, 複数のデータベースを同期させた, 分散協調システム工学プロジェクトのモデルである.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.23

主要記事:ソフトウェアツール (Feature: Software Tools)

ソフトウェアをスケッチする: ソフトウェア開発に革新を導入する (Software Sketchifying: Bringing Innovation into Software Development)

Zeljko Obrenović, Software Improvement Group

ソフトウェアをスケッチするとは, エンジニアリング段階に進む前に, 代替案の作成と検討により時間をかけることを促すソフトウェア開発活動である. Sketchletという柔軟なツールのサポートで, エンジニアと非エンジニアの双方による進歩し続ける技術の利用と可能性の探求を後押しする.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2012.71

インパクト (Impact)

ソフトウェアの世代の影響 (The Generational Impact of Software)

Anne-Francoise Rutkowski, Tilburg University
Carol Saunders, University of Central Florida
Les Hatton, Kingston University

これまでの18本のImpactのコラムは, 成長するソフトウェアについてのみ言及してきた. Anne Rutkowski氏, Carol Saunders氏, Les Hatton氏は, ビジネスに大きな影響を及ぼし, 我々の分野の成長を制限しかねない世代に関する要素も あることを示す.
https://doi.ieeecomputersociety.org/10.1109/MS.2013.63

ご意見箱 (Sounding Board)

データマイニングを超えて (Beyond Data Mining)

Tim Menzies, West Virginia University

前世紀に, データマイニングを行う人がソフトウェアプロジェクトに構造を発見しえるのかどうか不明だった. 今世紀において, 我々はより良く理解している: ソフトウェアプロジェクトの様々に異なる成果物へのデータイニングの適用に成功していることを理解しているのである. そのため, 今や“次は何だろうか?”に移る時期に差し掛かっている. 著者の見るところ, “議論マイニング”は予測モデリングコミュニティーの次なる大きな課題である. これらのマイニングを行う人達は予測や判断が重要だということを理解しているのと同時に, それらの結論に至る過程に生じた質問や洞察も大事だと理解している.
https://www.computer.org/csdl/mags/so/2013/03/mso2013030092.pdf




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