デイリースクラムが静かすぎる。誰かが「困っている」と言ってもスクラムマスターが「どうしますか?」と訊くまでは誰も口を開かない。チームの為の”ちょっとした雑用”をするのは、いつも同じ人。こんなこと、ありませんか? 「日直さん」は、開発チームの自主性を後押しするためのアジャイルチームの小さな工夫です。
チームの皆もスクラムに慣れてきて、最近のスプリントは毎回とても順調!
勿論、毎日のように小さな困りごとは出るけれど、デイリースクラムで素早く共有して対応してるから、大きな問題に発展することも無い。いい感じに進めている!
……と思っているのだけれど、最近少し気になることが。
デイリースクラムが静かすぎる。誰かが「困っている」と言ってもスクラムマスターが「どうしますか?」と訊くまでは誰も口を開かない。チームの為の “ちょっとした雑用” をするのは、いつも同じ人。
こんなこと、ありませんか?
スクラムマスターに頼りすぎ? お互いに遠慮してる? いずれにせよ、「自律的なチーム」の姿とは、ちょっと違いますよね。
そこで、日直さんです!
これをやれば、開発チームのメンバー全員がチームの為に率先して行動する機会を得ることができます。チームの為に何をすればいいかを考えて動くことの大変さを知る機会にもなるので、チームの為に率先して動いてくれている人に対する感謝の気持ちを新たにすることにもなります。
そうやって皆でチームを運営していくようになれば、いずれスクラムマスターがお役御免に! という日が来るかもしれませんね。
日直さんとは?
いつやるの?
毎日です! 勿論、休日は別ですよ。
誰がやるの?
開発チームのメンバー全員が順番にやります。
勿論、スクラムマスターやプロダクトオーナーが混ざっても問題ありません。たまにやってみるのは、もしかすると、開発チームとより良いコミュニケーションをするのに役立つかもしれませんね!
でも、基本的には開発チームのメンバーがやるものです。
どんな時にやると良いの? どんな問題の解決に役立つの?
こんなとき
日直さんは次のような時にやるとよいプラクティスです。
開発チームはデイリースクラムをきちんと実施しています。遅刻する人も無く、全員がちゃんと、昨日やったことと今日やること、そして困っていることを言っています。でも、何となく皆つまらなそう。しかも、話をする人は、スクラムマスターに向かって喋っています。その間、他のメンバーは足元を見ていたり宙を見ていたり。勿論、「困っていること」についてスクラムマスターが問いかければ、誰かが手を挙げて解決への協力を申し出てくれます。でも、思い返してみると、その「誰か」も決まっているような……?
こんな悩みに
スクラムマスターの悩み
- 自分達の問題を自分達で解決するために、もうちょっと主体的に動いてくれないかなぁ。「困っていること」を誰かが言ったら、スクラムマスターが「どうしますか?」って訊く前に、「どうしようか?」って会話を始めてほしいんだけど。
- 開発チームが自分達の作業に集中できるように、雑用を引き受けるのは構わないよ。でもさ、この状態だとスクラムマスターが留守の日はどうなっちゃうんだ? なんだか心配で、おちおち休みを取れないよ。
開発チームの悩み
- デイリースクラムって毎日同じで、なんかつまんないんだよね。お決まりの進め方で、ぜんぜん面白味が無いっていうか、正直つまんない。ちょっと笑える小話をするとか、その日の気分で少しくらい変えたらどうなの? って思うんだけど。でも、わざわざスクラムマスターを捕まえてまで言うことでもないし、文句って思われても嫌だしなぁ……
- スクラムマスターがチームの為に雑用を色々とやってくれてるけど、アレっていいのかな? ちょっとした雑用は気分転換にもなるし、スクラムマスターがやるより自分がやった方がうまくやれるってのもあるから、そういう時はやりたいんだけど、でもそんなことしてたら「暇なヤツ」って思われちゃうかなぁ。そもそも、そういうのってスクラムマスターの仕事なのかな? もしそうなら、その仕事を取ったらいけないよね。
勿論、どんなチームでも 全員が平等にチームの運営に関わる機会を持つ為に、是非、試してみてくださいね!
やってみよう!
前提条件はあるの?
特にありません。
用意するものは?
ホワイトボードの一部 ★必須★
- ホワイトボードの隅っこを確保しましょう。
- もし、チームが占有しているホワイトボードが無ければ、小さなホワイトボードを買ってきて壁に吊り下げましょう。100円ショップで売ってます。
- それも無理なら、A3のコピー用紙(A4でも可)を壁に貼りましょう。
クリップボード ★必須★
- サイズはA4。縦型でも横型でもOKです。
- 無ければクリアフォルダ―(A4用紙サイズ)でも代用は可能ですが、クリップボードの方が使いやすいと思います。
A4用紙 ★必須★
- A4のコピー用紙です。1枚あれば十分です。
予算
会社の備品で揃えられれば、0円です。
壁掛けの小さなホワイトボード、クリップボードを購入する場合は、200円~300円程度あれば大丈夫です。100円ショップに行きましょう!
やり方はカンタン!
準備編
- ホワイトボードに日直当番表を書きます。
- A4用紙に「日直の仕事」とタイトルを書いて、「1.デイリースクラムの司会」と書きます。
- A4用紙をクリップボードに挟みます。
- ホワイトボードの最初の人の名前の前にマークを書いて「日直」であることを示します。
- 最初の日直さんにクリップボード【日直の証】を渡します。
実行編
- 日直さんは、デイリースクラムの司会をします。「15分以内」「昨日やったこと/今日やること/困っている事を全員が話す」というお約束さえ守れば、進行は自由です。自分で小話をしても、誰かに小話を要求してもいいです!(でも、他の人にも日直はまわりますからね?)
- 日直さんは、その日いちにちチームの皆の困りごとに気を配りましょう。困っている人を見つけたら、自分が手伝ってもいいですし誰かに頼んでもいいです。
- 日直さんは、「日直の仕事」に何か書き足したいことがあるか考えます。何かあれば書き足します。
- 日直さんは、その日の最後にホワイトボードの日直当番表の「日直」マークを次の人のところに書き換えます。
- クリップボード【日直の証】を翌日の日直さんの机の上にそっと置きます。
とあるチームの日直さん
実際の日直当番表はこんな感じ
これが憧れ(?)の【日直の証】だっ!
まとめ
スクラムチームは自律的であるべきです。特定の誰かがチーム運営に関する事を独占している(押し付けられている?)のは不公平ですし、それではチームの真の力が発揮されません。
日直さんは、開発チームの自主性を後押しする、みんなのプチ☆プラクティス(みんプチ☆)です。これによって、メンバー全員がチーム運営をリードする機会を公平に得られるようになります。
チームのメンバーが特定の誰か(例えばスクラムマスターや年長者)に頼りすぎている状態から脱し、メンバー全員が力を合わせてより良いチームにしていくのを助けます。
チーム運営をより楽しくしたい時に、是非お試しください!