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UX, ユーザーエクスペリエンス

個人の部屋に泊まるというユーザー体験

株式会社オージス総研
技術部 仙波真二
2014年5月8日

plane

ゴールデンウィーク終わりましたね。みなさんはどこか旅行に行かれましたか? 私は近場でゆっくり過ごしました。遠方への旅行といえば、かなり前に行ったパリが最後です。飛行機と宿泊場所のみ旅行会社に手配してもらって、現地では家族で好きなところに行きました。

旅行といえば、旅行代理店が用意しているパックツアーが定番ですが、最近は体験重視のツアーが人気のようですね。更に斬新なのが「個人の部屋に泊まる」という Airbnb(エアビーアンドビー)のサービスです。私がAirbnbを知ったのは、林千晶さん(ロフトワーク)のスピーチ(XPD2014のオープニング)がきっかけでした。林さんはバルセロナに行った際にAirbnbを利用されたそうです。私はまだ利用したことがありませんが、今度旅行する際に利用する予定です。今回のコラムでは、ユーザー体験の視点でこのサービスについて感じることを記述したいと思います。実際に利用したユーザー体験は別の機会にシェアさせていただきます。

まず、AirbnbのWebページを見てみると、列車を再利用した家やツリーハウスのようにユニークなものから、おしゃれな部屋まで、いろんな部屋があって見ているだけで楽しくなります。また、ふつうのアパートの一室もあるようです。宿泊者のニーズも多様なので、宿泊場所の多様性も魅力のひとつだと思います。

Airbnbの特長は「個人の部屋に泊まる」点ですが、もう少し具体的な特徴をAirbnbのトップページから抜粋しました。

  • 暮らすように旅しよう。
  • 世界192ヶ国、34,000都市に家がある。
  • 世界中どこでも、予算内で、現地のユニークなお家を借りぐらし。
  • 家でつながる人。住民目線で世界を回ろう、ひとつずつ。

「暮らすように旅する」「家で人と人がつながる」「住民目線」という言葉が特に印象的です。考えてみれば、知らない土地に行く場合は「不安」なので、「安心」を求めて旅行会社が提供するパックツアーに落ち着いてしまうことが多いと思います。しかし、その土地の良いところを一番よく知っているのは、そこに住む人なので、現地の人におすすめの場所を教えてもらった方が、楽しいスポットやおいしい食事場所に出会えるかもしれません。また、ホームステイ感覚で宿泊し、ホストと交流できるというのもAirbnbの特長だと思います。(Airbnbでは、部屋を提供する人をホスト、宿泊する人をゲストと呼ぶそうです)

私がパリに旅行した際のことを思い出してみると、朝はホテルのモーニングを食べて、日中は主に美術館巡りでした。その他は、ぶらぶら散歩して街の雰囲気を楽しんだり、レ・ミゼラブルによくでてきたリュクサンブール公園でのんびりしたり、カフェでコーヒーを飲んだりといった感じで、まったり過ごしました。夜は近くのスーパー(日本で言えばダイエーやイオンのような感じ)で食材を買ってきて、ホテルで食事をすることが多かったです。パックツアーのような団体行動ではなく、自分の行きたい場所に自分の足で行くという点では満足のいくものだったのですが、Airbnbのような現地の人と知り合いになることができれば、もっと楽しめたのではないかと思います。

room

他人の部屋に泊まるとなると、不安な要素もいろいろありそうです。その点は、それぞれの部屋にコメントされている、ゲストのレビューが一つの参考になりそうです。また、事前にホストとコミュニケーションできるようです。レビューはゲストの主観的な感想ですが、利用者にとっては唯一の客観的な判断基準で、ホスト側への意識づけとしての役割も果たしていると思われます。レビューと言えば、サービスや商品の購入サイトでよく見かけますが、サービスや商品を購入する際にかなりの影響力があります。「ユーザーの体験」という主観的な感想をレビューという形で可視化し、それをシェアすることがビジネスモデルとして当たり前になってきており、改めて「ユーザー体験」が重視される時代になっていることを感じます。

旅の体験を提供するというAirbnbのビジネスモデルはよくできているなあと感心したのですが、それと同時に感じたのは、バーチャルな世界とリアルの世界の距離感が縮まっているという点です。facebookはリアルな世界の延長にバーチャルな世界があり、twitterはバーチャルな世界がメインという感触を個人的には持っています。そして、Airbnbはバーチャルな世界の延長にリアルな世界があるイメージです。ゲストのユーザー体験が満足のいくものであれば、リアルな世界の関係が長く続くこともあるでしょうし、サービス提供者とホストとしてはそうなってくれることを望んでいるのではないでしょうか。

今回は、旅のユーザー体験についてAirbnbから感じたことを記述しました。ビジネスモデルとしては模倣されやすそうなので、同じビジネスモデルの競合他社の新規参入が今後活発化しそうで、ビジネスとしてはその点がまず気になりました。でも、よく考えてみると、こういうサービスへの需要は増えていきそうなので、既存のホテルや旅館などの方が危機感を抱くかもしれないなあと思ったりもします。読者のみなさんで利用した人がいらっしゃれば、ぜひ感想を教えてください。友人を紹介すればインセンティブが得られるそうですよ。ってまんまとAirbnbの思惑にはまってますね。

追記

このコラムを書いた直後、Airbnbを利用しました。東京出張の際には行くことがない高級住宅街に足を運び、清潔感のあるお部屋で快適な時間を過ごすことができました。