パナソニックホームズ様:未来の暮らしを考える

パナソニックホームズ様では、「強さ」と「暮らしやすさ」を追求した住まいをお届けするという考えの基、弊社オージス総研と共に、一歩先の未来の暮らしを考えてこられました。また、その未来の暮らしが、生活者のこれからに本当にフィットするかの検証も進めてこられました。
住まいの建物本体だけでなく、より良いくらしの提案もできる企業として、今回の取り組みに関わられた、朝尾様、田頭様にインタビューでお話しいただきました。

朝尾 夏子 様
パナソニックホームズ株式会社R&Dセンター くらし研究室 室長。2006年入社。
入社当時は戸建営業を経験。その後、「家事楽」や「こどもっと」など自社のくらし提案に向けた研究に長年携わる。2020年よりR&Dセンターのくらし研究室に所属。


田頭 英梨 様
パナソニックホームズ株式会社R&Dセンター くらし研究室。2017年入社。
「未来デザイン」の取り組みを主に担当。現在はリフォームのくらし提案に向けた研究に取り組む。



1.事業内容と本活動の背景

インタビュアー: パナソニックホームズ様の事業内容やサービス、強みや特色について教えてください。

朝尾様: パナソニックホームズは大きく4つの事業を展開しています。戸建や賃貸住宅の新築、医療・介護施設等を手掛ける土地活用を行う「新築事業」、マンションの分譲、賃貸住宅・オフィスやホテル等の複合施設を含めた建設・保有運営を行う「都市開発事業」、リフォームや不動産流通、買取再販等を行う「ストック事業」、そしてアジアでの請負やデベロップメント、ニュージーランドでの部材販売を行う「海外事業」です。
当社の祖業である戸建事業については、60年前、部材販売のメーカーとしての事業から開始し、現在ではビルダーとして東北から沖縄まで直接お客様の住宅建築を請負う営業活動を行っています。また、当社は先述のように4つの領域に事業を広げてきましたが、それぞれの領域にも戸建住宅事業で培った技術やノウハウを活用しています。
くらしの提案においても、60年の当社の歴史の中で、社会や生活者ニーズの変化にお応えしながら、生活者調査を基に、「家事楽※」や「こどもっと※」等、さまざまなくらし提案を発信してきました。
※「家事楽」「こどもっと」はパナソニックホームズ様の登録商標です。

インタビュアー: いろいろなハウスメーカーさんがいらっしゃる中で、ここは強化していきたいと考えておられることは何でしょうか。

朝尾様: お客様からはパナソニックホームズに対して、「先進的な住宅を提案してくれそう」という印象を持っていただくことが多いです。当社はブランドイメージとして、お客様の命と財産を守り抜く「強さ」と、幸せで豊かな日常が続く「暮らしやすさ」を掲げています。ご購入いただいたオーナー様からは、特に耐震性をご評価いただいております。一方で、お客様のイメージの中では、「強さ」に比べると「暮らしやすさ」についてはまだまだ具体的な印象をお持ちいただくという点で課題があると感じています。私は、くらし研究に携わっている者として、当社の住まいを「暮らしやすい」と感じていただける、またそのようなブランド強化に貢献していきたいと考えています。

2.主な活動(「未来の暮らしデザインプロジェクト」)

インタビュアー: そういった背景がある中、2016年に「未来の暮らしデザインプロジェクト」を発足した経緯について教えていただけますか?

朝尾様: 私たちの従来のくらし研究手法は、いわゆる「課題解決型」で、現在の生活者のお困りごとやニーズを確認し、それに対して新しいくらしの提案を考えるという方法でした。ただ、普段実施している定量調査、定性調査において「現時点」のことだけを調べる手法でいいのかという観点で、調査手法の進化を模索していました。つまり、今後、国内の新築着工戸数が減少すると言われる中で当社がお役立ちを続けていくためには、「今」の困りごとの解決だけでなく、「未来」の暮らしに目を向け解決策を準備することができないかという思いがありました。ちょうどその時にオージス総研の営業さんから、「バックキャスト」の考え方を提案いただいたんです。当社は当時、既に20年近くオージス総研さんに生活者調査のご協力をいただき、ノウハウを勉強してまいりました。ですので、今回も是非、オージス総研の「バックキャスト」の考え方で「未来の暮らしデザインプロジェクト」に取り組もうということになりました。

インタビュアー: 実際に取り組んでみていかがでしたでしょうか。

朝尾様: 「バックキャスト方式から今後ありたい暮らしを描く」という新たな手法と着眼点を学ぶことができました。約3ヶ月間のプロジェクトは、ステップを踏んだワークショップ形式で進めていきました。まず、オージス総研さんが準備した膨大なマクロやミクロの情報を読み込むことに多くの時間をかけ、これは結構大変な作業でしたが、これこそが世の中の兆しを掴む重要なフェーズだということを教えていただきました。次のステップでは、「未来の暮らしがどうありたいか」、「どんな暮らしになっていたらいいか」を自由な視点で発想しました。普段あまりそのような頭の使い方をしていなかったので、インサイトの掘り下げはなかなか難しく、そこはオージス総研さんに上手くフォローしていただき助かりました。
次回までの検討課題を負担のない形で提示していただき、集まってのワークショップ内では、しっかりメンバーがディスカッションして発想を発散させるというスタイルで取り組むことができました。こうした活動を通じて、最終的には、今後の暮らしの着眼点を抽出するという成果を得ながら、検討手法自体も学ぶことができたのが私たちとしては大きな学びとなりました。このワークショップを通じて得た、世の中の動きや兆しを起点に未来を見通すというアプローチは、自分たちの新たな情報の引き出しを作ることに繋がり、大変良かったと思っています。

インタビュアー: この経験は、このプロジェクト以降も活かすことができたのでしょうか。

朝尾様: はい。このプロジェクトでの取り組みが「未来デザイン」を描くという活動開始に繋がりました。社内でのプロジェクトの最終報告にて、当時の部門トップから活動への理解を得ました。「これからは従来の『住宅すごろく』の考え方が終わり、人生の歩み方がより多様化する。それがどう変わり、どう生活者の価値観が変わっていくのか、そこから未来の暮らしを描き、くらし研究を進化させてほしい」というコメントから、新たな活動を始めることに繋がっていきました。

3.主な活動(「未来デザイン」の活動について)

インタビュアー: 「未来デザイン」という社内活動はどういったものでしょうか?

朝尾様: 2030年という一歩先の暮らしを、フォアキャストだけでなく、バックキャスト方式で考え描く活動です。「将来求められる暮らし」を先回りして、常に時代にあったお住まいの提案をタイムリーにお客様に届ける、またそのための研究・開発テーマを見出していくというのが狙いです。

田頭様: この「未来デザイン」では、まずは私どもが価値を提供したい生活者ターゲットを定めることが起点となります。オージス総研さんには、生活者分類のクラスター分析にご協力いただきました。私たちからは、「未来の生活者の価値観はこういう風になっているんじゃないか」、「未来の生活者はこんな住まいを望むのではないか」という仮説を提示しました。
前述のように、「従来の『住宅すごろく』は終わる」と言われています。人生100年時代においては、同じ家にずっと住み続けるだけではなく、さまざまな生き方・住まい方が想定されるので、性別や年代といった従来のデモグラフィックだけではこれからの生活者分類は難しいのではないかという気持ちがありました。価値観、考え方による分類で生活者ターゲットを捉えていかないといけないと感じました。

インタビュアー: クラスター分析は他の調査会社でも行っていますが、その中でもオージス総研を選んでいただいた理由はございますか。

田頭様: オージス総研さんは、生活者に近い目線で調査していただき、丁寧に分析していただける安心感があります。当社との長いお付き合いの中で、私たちの事業内容も把握いただいているので、私どもがどのようなアウトプットを求めているのかということを理解してくださっていることも大きな理由の1つです。

インタビュアー: オージス総研とご一緒いただいた中で、その「丁寧さ」を感じられた具体的なエピソードなどはございますでしょうか。

朝尾様: いくつかありますが、まずは調査手法・分析のクオリティの高さです。インタビュー調査にもよくご協力いただいたのですが、インタビュアーのレベルの高さを感じています。話の引き出し方はもちろん、こちらの目的や確認したいことを漏らすことなく尋ねてくださいます。

田頭様: また、アンケート調査では、調査を設計する際に的確なアドバイスをいただけます。例えば、お尋ねしたいことが増えてしまい質問数が増えた際にも、オージス総研さんから「今回はこういうところが目的であれば、ここに絞りませんか」という導きがあり、より精度の高い調査票を作ることができます。

インタビュアー: ありがとうございます。この「未来デザイン」活動でのクラスター分析の結果は、社内でどのように活用されましたか。

朝尾様: 「未来デザイン」におけるクラスター分析の結果は、最新の「未来デザイン」まで繋がっております。まず最初のクラスター分析では、一般生活者の2030年の生活者の価値観の軸を導き出しました。ここで得られた軸に基づき、戸建住宅の新しい間取りのあり方や、そこでの暮らし方を考案し、社内展示会で発信しました。これが当社での「未来デザイン」活動の始まりでした。
次の取り組みは、パナソニックホームズにお住まいの方の価値観をベースにした「2030年に向けた未来デザイン」です。前回の「未来デザイン」の取り組みでは一般の生活者の方を対象に価値観分析をしましたが、今回は当社の住宅にお住まいの方に着目し、のクラスター分析をオージス総研さんにご協力いただき実施しました。私たちパナソニックホームズの提供するコンセプトに親和性の高い方々の価値観をきちんと把握し、その価値観をお持ちの方々が、将来どのような暮らしの価値を求めるのかということを検討し、住まいや暮らし方を描きました。当社と親和性のある生活者に対し、当社の提供する住宅商品を最大限に活用する観点で進化を図りました。
クラスターの分類はオージス総研さんに何度も解析しなおしていただき、しっくりとくる軸とクラスターを見つけることができました。

インタビュアー: 翌年は、受容性評価を実施しましたが、こちらの目的はコンセプトや住まいの提案のお客様評価をする形だったのでしょうか。

朝尾様: そうです。ターゲットとなる生活者クラスターに向けて提案したアイデアが、本当にそのクラスターの価値観の人に受け入れてもらえるのかということについて、インタビュー調査を行いました。

田頭様: 「未来」についてのインタビューですので、「今」の一般生活者に対して定量的な確認をしても、今は必要ない、と回答される可能性がありました。ですので、インタビュー対象者には、一歩先の提案である、ということを事前にご理解いただいた上で回答いただく必要がありました。

朝尾様: 未来のくらし提案なので、社内での説得力を増すには、やはり確からしさが必要となります。私たちとしては、課題やニーズへの解決策は提示だけで終わってはいけないと考えています。実際に効果があるのか、生活者に喜んでいただけているのかという振り返りによって、確からしさまでを検証・確認していくことが重要と考えています。

田頭様: このインタビューでは、ターゲットに合致したインタビュー対象者を見つけることに苦労しました。特に、ターゲットの1つが「単身50代男性・イノベーター的な考え方を持つ人」でしたが、まず、そのような対象者にたどり着けるのかというのが課題でした。私たちが考えている人物像のイメージをオージス総研さんにお伝えし、募集用の調査票を設計していただいたところ、その調査票がズバリはまったんです。まさに望んでいたターゲット像に合う方が参加してくださり、無事に受容性評価を実施することができました。

4.今後の展望

インタビュアー: この「未来デザイン」のプロジェクトは、この後どのようになっていくのでしょうか。

朝尾様: 「未来デザイン」という大きなプロジェクトを経て、今は、「これから着目すべき暮らしの価値」の一つ一つを研究テーマとして掘り下げていくフェーズに進んでいます。「未来デザイン」は毎年一から描きなおすものではありませんが、どのように変化しているのかということは定点で追跡し、3年、5年後といったスパンで見直していきたいと考えています。

インタビュアー: オージス総研と生活者視点の調査を実施するようになって、お2人に変化はありましたか。

田頭様: 私はパナソニックホームズに入社した当時から、オージス総研さんにお世話になっています。オージス総研さんには、調査結果だけをご提供いただくというよりも、打ち合わせから一緒に考え方や調査設計の方法を教えていただいています。また、レポートの内容だけでなく、まとめ方自体も参考にしています。結果だけではなく、資料としての見せ方や、調査のプロセスや進め方自体を学んでおり、私自身のスキル向上にも繋げています。

朝尾様: 長年ご協力いただく中で、基本的な調査の手法を始め、私も沢山勉強させてもらいました。オージス総研さんがセミナーでもおっしゃっているように、生活者が発信する言葉そのままを受け取るのではなく、言葉の裏に何が隠されているのか、それを掴むことが非常に大事で、そこに優れたノウハウやスキルをお持ちだと感じています。
以前も、インタビュアーの方から「インタビュー対象者の方のこの発言は、私たちが仮説として考えていたことの受容性が確認できた発言でしたね」とおっしゃったのをお聞きし、驚いた経験があります。仮説に対して直接的ではなかった発言に対して、その発言に至る背景をかみくだき教えていただき、そのような捉え方があるんだという気づきに繋がりました。
私たちが気づかない部分を、上手に掴み取られている。これからもオージス総研さんにご協力をいただきたい気持ちと共に、私たち自身でもそういうものの見方ができるようになりたいとも思います。

インタビュアー: せっかくの機会ですので、パナソニックホームズ様のアピールをどうぞ。

朝尾様: ありがとうございます。私たちくらし研究室は、オーナー様約1,100名に参加いただいている「くらし兆しラボ」という生活者モニター組織を有しております。一般の生活者かつ、当社の住宅を建てていただいたオーナー様という両面の視点から、暮らしや当社の住まいに対してご意見をいただき、くらしの研究の深化に繋げています。この「くらし兆しラボ」という名前は、未来の暮らしを描いていく中で、生活者の暮らしの変化や「兆し」を掴むことがいかに重要かという経験・想いを込めて名付けました。

田頭様: くらし兆しラボのオーナー様の声は大変大切であると痛感しています。ずっと良い暮らしをしていただくためには、新築の時点でどのようにしておけば良いか、既に建てていただいた方も建てて終わりではなくずっとより良い暮らしをしていただくためには、住んでからもどのようにリフォームしたら良いのか、そういう観点でも、オーナー様のお声からの気づきは大きいです。

朝尾様: これからも「未来デザイン」のノウハウを活用し、またオーナー様や生活者の声を基に、「どの時代も不変の暮らしの課題」や、「時代の変化と共に変わっていく暮らしの課題」を見つけたく思います。また、そこから常に一歩先の暮らしの価値を創出し続け、暮らしやすい住まいの提案をし続けてまいります。

インタビュアー: 本日はどうもありがとうございました。

(インタビュー: 2023年5月29日実施、インタビュアー: 弊社ソリューション開発本部 水澤 麻衣)

2023年9月12日公開
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