IFRSコミュニティ ワークショップ
ビジネスイノベーションセンターワークショップ誌上公開(サマリー)
ビジネスイノベーションセンター

 石島隆先生(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)をお迎えして、IFRSとファイナンス、リスク管理、管理会計との関係、さらにはGRC(Governance Risk Compliance)について、幅広くディスカッションを行いました。その議論の一部を誌上にてご紹介します。

 議論はまず、IFRSとファイナンス、リスク管理、管理会計との関わりに焦点が当たりました。

石島先生:IFRSでは、一般事業会社においても金融機関に求められているような金融商品の信用リスク、市場リスク、流動性リスクに関するリスク管理の方法について開示が必要となります。これらのリスクは、一般事業会社の場合には、必ずしも重要ではないことが多く、例えばメーカーの場合には、通常、信用リスクよりも在庫リスクや設備投資リスクの方が重要だと思います。
  したがって、製造、流通、サービスなどの産業では、より重要なリスクのカテゴリーにフォーカスして、これまで金融機関で培われてきたリスク管理のノウハウを上手く当てはめていくことができるとよいのではないでしょうか。このあたりは、管理会計とも絡む話です。


 さらにIFRSとの関わりについて、具体的に次のような例でご説明頂きました。

石島先生:例えば、IFRSでは、有形固定資産や無形資産に対する減損会計の適用について、従来よりもさらに厳しい見方が必要になります。減損の判定の基礎となる将来のキャッシュフローの把握は、まさに投資リスク管理に結びついています。特定の事業やプロジェクトへの投資の際の経営者としての投資リスク管理が体系化できると使えるものになるのではないかと思います。また、IFRSを企業グループ全体のキャッシュフロー管理と結び付けて捉えるともう少し身近なものになるのかもしれません。

 次に、IFRSのセグメント情報の開示におけるマネジメントアプローチについて、ご解説頂きました。

石島先生:セグメント情報に関するマネジメントアプローチは、経営者が意思決定に使っているセグメント情報を開示すればよく、新たに作る必要はないという考え方です。従来は、無理に事業の種類別に分けた情報を作成させられたり、意思決定に使われていない海外の所在地別の情報を作成させられたりしており、経営のためには役立っていないこともあったと思います。
  この意味では、割り切って、自分たちが使っているセグメントで公表すれば良いのですが、同業他社の動向への配慮もあって、難しいケースが出てくるでしょう。また、自信をもって開示できるような管理会計の仕組みが出来ていないこともあるかもしれません。この意味では、管理会計のレベルアップが必要であり、それがより品質の高い開示に繋がっていくことになります。


 最後にGRC( Governance Risk Compliance)についてご紹介頂きました。

石島先生:GRCとは、ガバナンス、リスク、コンプライアンス、または、ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスの略称です。日本においても、CSR(企業の社会的責任)に取り組んでいる企業が多いと思いますが、その実践にはGRCの仕組みが必要となります。
 米国のある大手会計事務所は、業績管理、リスク管理、コンプライアンス管理を統合するために、グループベースアプローチ、業務プロセスの連結・統合、関連する情報の集約化、プロジェクトベースではなく方針に従ったプログラムベースで取り組むことなどを提唱しています。私は、3年ほど前にその講演を聞き、以後興味を持っています。
 また、米国には、OCEG(Open Compliance and Ethics Group)という団体があります。 OCEGは、GRCの目的を「プリンシプルドパフォーマンス(Principled Performance TM )」としています。すなわち、方針に基づいたパフォーマンス、さらにいえば、まっとうな業績という意味合いです。
 そして、プリンシプルドパフォーマンスを実現するためには、ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス、それぞれ縦割りで別々に行ってきたものを一つのマネジメントシステムとして統合して行わなければなりません。
 すなわち、「連結ではなく統合」、はらばらのものを足し合わせ、重複部分を消去するコンソリデーション(連結)ではなく、一貫した考え方に基づくインテグレーション(統合)が必要だというのが基本コンセプトです。
 すなわち、ボキャブラリー、アプローチ、技術インフラを共通化あるいは統合化するとともに、リスクカテゴリーと部門を横断した活動やビジネスプロセスを含むGRCの活動の統合が必要となります。GRCのためのPDCAをカルチャーとコンテキストの上で全体に関連させる体系を作っており、Red Bookというテキストが出ています。


これ以外にも広く議論は行われました。今後さらにそれぞれの論点について別途検討していく予定です。

実施日時:2010年5月7日(金)14:00〜16:00
実施場所:オージス総研田町オフィス
参加者:
オージス総研
明神 知竹政 昭利依藤 裕俊
さくら情報システム
鍵川 毅遠山英輔


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