IFRSコミュニティ ワークショップ
第2回IFRSコミュニティワークショップ誌上公開(一部)
ビジネスイノベーションセンター

 お客様を招待して、セミナーおよびワークショップを行いました。ワークショップの内容の一部を公開致します。
 講師の特定非営利活動法人日本IT会計士連盟代表理事 株式会社アップライト代表取締役の坂尾氏に加えて。オブザーバーとして石島隆先生(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)と共に、固定資産におけるIFRS対応について議論を行いました。

 まず参加者から減価償却費の原価算入額が変わることによるIFRS初度適用時の棚卸資産の計上額への影響について質問がありました

坂尾氏:基本的には、過去から継続的にIFRSを適用していたとした場合の棚卸資産額で表示しなさいということになっています。教科書どおり受け取ると、IFRSの基準に従って減価償却費を行ったとした場合の減価償却費の原価算入額から求められる棚卸資産額ということになります。

固定資産に対応する場合、複数帳簿対応で考えるかについて。

坂尾氏:一般的に言われるものはやはり複数帳簿を持って、両方計算しろという話になってきます。原価に関しても部分的にやはり開示項目になってくる話を考えるのであれば、管理上の原価計算は横においておくとして、開示に影響する部分に関しては2種類もたせることになります。
 ただ、本当に各社が二重に帳簿を持つのだろうかということに関しては、実のところ私自身はかなり懐疑的です。二重化をした会社が貧乏くじを引くことになるんじゃ無いかという気がしています。IFRSが強制適用されると連結財務諸表をIFRSで開示することとなります。一方で個別財務諸表は日本基準であるために、IFRSと日本基準の2つの基準が並列することとなり、二重帳簿の必要性が叫ばれていると認識しています。しかし、私見ですが、IFRSの強制適用時点ではIFRSの基準と日本基準の乖離はさして大きくないのではないかと思っています。

さらに、税法との関係では。

坂尾氏:税法が足かせになって、日本基準で作成する財務数値とIFRSで作成する財務数値に大きな差異が生じると考える方が大多数だと思います。特に固定資産の償却方法や耐用年数は、その最たるものだと思います。しかし、税務メリットを捨てて、資産の将来の経済的便益が企業によって消費されると予測されるパターンに従って償却を行っている企業も増えてきています。税務的なメリットを捨てても、IFRSと日本基準の二重化を避けることによるメリットを享受するという考え方であり、このような考え方にも理があると思います。

税法が変わる可能性について。

石島先生:確定決算主義が長い伝統ですが、これさえ外してくれれば、いろいろ自由になると思います。しかし、現在は賛否両論入り乱れている状況です。アメリカのように税務申告を決算から切り離してくれたらよいのですが、税法は大企業と中小企業に共通に適用されるものであるため、確定決算主義からの離脱は当面難しいのではないかと思います。

遡及修正に関してのシステム化対応について

坂尾氏:遡及修正に関しては日本でも基準が公表されましたので対応をする必要があります。過去に遡って仕訳を修正するとか、固定資産の取得価額を変更するといったことができるに越したことはありません。しかしながら、一旦公表した財務諸表の基礎となる過去のデータを修正することは、データ管理上あまり望ましいことではなく、実際の経理担当者も抵抗を覚える方が多いと思います。そのため、実際の運用では翌期の期首に過年度に遡及して修正した場合の影響額の仕訳を切ることになるのだと思います。また、過年度の財務諸表はExcel等で作成するというのが現実的ではないでしょうか?

 参加者の方の会社では、固定資産システムは、ERPやオリジナルのものが多く、複数帳簿対応を考えることになりそうだという意見が多数でした。
 また、ERPを使用する場合、複数帳簿対応は比較的簡単だが、IFRSでは減損処理し、それをまた戻し入れをする可能性があるので、それらを全てシステムで対応するのは出来ないわけではないが、実際は運用が回らないという意見もありました。

コンポーネント・アカウンティング(飛行機の機体と、エンジンの耐用年数を変えるなど)の例について

坂尾氏:航空機や大型トラック、プラントを構成する設備や機械といった大きなものに関してはあると思います。機械などでもコアな部分、高価なモーターなどで、本体と耐用年数が異なっており、頻繁に交換しなければいけないということであれば、コンポーネント・アカウンティングを考える必要があると思います。
 逆に、上の例でいえばそのモーターがあまり高額なものでなければ、監査人もコンポーネント・アカウンティングを求めることはないと思います。そうでないと、あらゆるものがコンポーネント・アカウンティングの対象になってしまいます。

石島先生:この他、製鉄業などでも、かなり耐用年数が違うものがありそうですね。

坂尾氏:あまりコンポーネント・アカウンティングの対象となる資産の例が出てきません。先日も、金融業の方にお話をしなければいけないことになって、何か金融業の方がイメージできる良い例を出してくれと言われました。数名の会計士で考えたのですが、やはり良い例が思いつかなくて、結局IFRSの基準に書いてある航空機の話をしてしまいました。

再評価モデル、フェアバリューについて

石島先生:有形固定資産の再評価モデルは、不動産については適用可能と思います。日本の不動産市場の場合、上手く適用できるかどうか懸念もありますが、イギリスの会計では、古くから行われていました。イギリスでは、不動産市場が成熟しており、再評価が容易だったのではないかと思います。再評価を行えば、その不動産の収益性を資産価値の評価に反映させることが出来ることになります。

坂尾氏:大きな話で言うと、資産・負債アプローチです。財政状態計算書(貸借対照表)には「今あるものはいくらなのか?」を示すというIFRSの根本の考え方があるので、そこにどうしても合わせようとしています。メリットうんぬんの以前に制度がそのような立て付けになっています。あとは損益計算書に該当する包括利益計算書というのは包括利益を把握しようという話になっていて、固定資産だけ取得原価で計算するということになると本当の包括利益ではなくなってきます。資産・負債アプローチにより明らかにされる「今あるものはいくらなのか?」という数字は、投資家にとって、あるいはM&A局面での売り手・買い手双方にとって重要な数字になってきます。しかしながら、事業による利益がいくらあるのかを重視する考えかたになじんでいる日本の経営者や実務担当者にとっては、資産・負債アプローチは、あまりメリットがあるようには思えません。

坂尾氏:再評価モデルのケースだけでなく、初度適用のタイミングでも多くの資産についてフェアバリューを把握できないために遡及して減価償却計算を行っているようです。固定資産といっても、すべての資産が建物のように耐用年数が長いわけではないので、遡及して減価償却計算をした方が楽だという議論になっているようです。そのように考えていくと、再評価モデルが適用出来る固定資産の種類というのは少ないのだというのが私の中の結論です。

これ以外にも広く、深く、議論は行われました。

第2回セミナー&ワークショップ開催概要

開催日:

10月27日(水)
場所:
オージス総研田町オフィス 8F Alabama&Georgia
講師:
坂尾公認会計士事務所 代表
ITCPA代表理事 公認会計士 坂尾 栄治 氏
内容:
? 15:00〜15:05
ご挨拶
? 15:05〜16:05
第一部 セミナー 「IFRSが固定資産システムに与える影響」
? 16:15〜17:30
第二部 ワークショップ 「セミナー内容を中心とした質問やディスカッション」
? 18:00〜
第三部 懇親会 (有志)

第2回目概要 IFRSが固定資産システムに与える影響

IFRSの適用により、固定資産管理業務は大きな影響を受けると想定されます。減価償却方法の変更やコンポーネント・アカウンティングをはじめ、減損の戻り入れへの対応など、論点が山盛りです。
固定資産システムは、継続的にデータを一定の規則で処理することを前提したシステムであるため、変化への対応に弱い場合が多く、IFRSへの対応や、IFRSの適用により求められる処理への対応について十分に検討しておく必要があります。
今回は、IFRSの適用が固定資産システムに影響を与えると思われる論点について、どのように対応すればよいのかを解説いたします。


坂尾 栄治氏 プロファイル

青山学院大学卒業。
一般事業会社で、SEとしてシステム設計・開発に従事した後、英和監査法人(現あずさ監査法人)にて証券取引法監査、商法監査、株式公開支援等に従事。
その後、独立系コンサルティング会社の設立に参画しジャスダックへの上場を果たす。

2008年に日本IT会計士連盟を設立し代表理事に就任。
2009年に非特定営利活動法人としての認可を受ける。

連結決算を中心とする、システム導入・業務改善を専門とし、EUにおけるIFRSベースでの連結決算業務支援等の実績を持つ。

特定非営利活動法人日本IT会計士連盟 代表理事
株式会社アップライト 代表取締役
公認会計士
日本公認会計士協会 東京会 コンピュータ委員会 委員長

坂尾 栄治氏


今後の開催予定 タイトル(内容および時期は変更する場合があります。)
第3回2010年12月10日
IFRSの収益認識
第4回2011年2月 グループ経営管理(連結会計)


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