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「サービスデザイン思考 アイディア出しについて」
株式会社オージス総研

2015年01月号
  • 「サービスデザイン思考 アイディア出しについて」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

1.はじめに

新しいサービスや商品を作り出すには、いかに画期的なアイディアを出すかが重要であることは言うまでもありません。
今回はいくつかのワークショップを行ってきた中で、感じたことを書いていきます。
アイディア出しの手法としては、アレックス・F・オズボーンによって考案されたブレインストーミングが最も良く知られています。
ブレインストーミングには4つの原則があります。

  • 判断遅延
  • 突飛さ歓迎
  • 質より量
  • 他の人に便乗

実際にワークショップで4つの原則を守ってブレインストーミングを行っても、人数、メンバー、題材などにより結果がかなり違ってきます。非常に盛り上がって、良いアイディアが多数出ることもありますが、良し悪し以前にアイディア自体があまりでないこともあります。
ブレインストーミングで成果を出すにはいくつかのポイントがあります。

2.参加人数

まず参加人数について考えてみます。ほどよい人数があるようです。3人以下の場合、他人からの刺激が少ないために、出てくるアイディアの数自体が少なく、平凡なアイディアにとどまり、思いもよらないアイディアというのはなかなか出てこない傾向があります。それでは7人以上で行うとどうなるでしょうか?人数がいる分、アイディアがどんどん出るように思えるのですが(8人いると、4人の時の倍アイディアがでるなど)、実際はそれほど多く出なかったり、平凡なアイディアに終始してしまうことが多いようです。
それというのも実は人数が増えると積極的に参加しない(休んでしまう)人が何人か出てしまうからです。人数が多いと、自分のアイディアを言うのが恥ずかしい(自分のはくだらないアイディアである)と考えてしまうのです。その結果往々にして発言する人が限られてしまう傾向があります。また、アイディアを出す人とそれを付箋に書く人のように分業が発生してしまう場合もあります。
積極的に参加していないメンバーが発生すると、チーム全体の雰囲気に影響を与え、積極的に参加している人のやる気も削いでしまう恐れさえあります。
経験的にはブレインストーミングは、4~6人くらいがうまく回る人数のようです。

3.雰囲気

次に雰囲気です。4人~6人でも、そのグループの雰囲気によって結果がかなり左右されます。
やはり初対面だと気張ってしまい、良いアイディア以外は言わないようにしているため、アイディアの数は少なめになります。
ワークショップを続けて打ち解けてくると、徐々に、発言が活発になってきます。その意味でアイスブレイクなどは重要です。また、お菓子や飲み物を用意したり、昼食や飲み会を一緒に過ごすのも有効です。
つまり仲良くなってもらい、くだらないアイディアを言うのに抵抗がない雰囲気をつくれるかが重要です。
アレックス・F・オズボーンは、
「思いつくことは何でも、バカげていてもつまらなくても、書かないことには 他のアイディアの通せんぼをする」と言っています。
アイディアを考え出すと、最初は平凡なアイディアやくだらないアイディアばかりが浮かんで来きます。それを紙に書いたり、話してしまって頭の中から追い出さないと、いつまでたってそのくだらないアイディアに固執してしまい、新しいアイディアが浮かんでこない訳です。

4.多様性

しかし、ブレインストーミングを行うメンバーが顔見知りならば良いという訳ではありません。
集合知が発揮されるために必要なのは、多様性、独立性、分散性、集約性の4つです。*1
同じ会社の同じ部署の人が集まった状態では多様性があるとは言えません。年齢、性別、人種、職種など異なる人が集まるワークショップのほうが、同じ会社の人が集まったワークショップよりも、色々なアイディアが出る傾向があります。 独立性を確保するには、誰かが他のメンバーに影響を与える状況は避けねばなりません。直属の上司と部下が1つのチームに入っていると、上司とは異なる意見はなかなか言えません。特に役員クラスが一般社員と同じグループに入ってしまうと、絶えずその役員の顔色をうかがいながら話をするようなことがおきてしまいます。
3つ目の分散性は、判断基準を各個人が別々に持つ必要があるという事です。
会社などで同じ基準が徹底されていると、分散性がなくなります。事前に打ち合わせをしている訳ではないのに、複数の人が同じようなアイディアばかりを出てしまうような例もあります。
4つ目として、この多様性、独立性、分散性を集約する仕組みが必要なわけです。

5.アイディア出しの手順

グループでブレインストーミングを行う前に、個人で考える時間を設けると効果的です。
個人であらかじめじっくり考えた方が、アイディア自体はたくさん出るようです。しかし個人で考えているだけだと、なかなか突飛なアイディアを思いつくまでに至りません。ここで、ブレインストーミングを行うと、互いに刺激しあい、常識の枠から飛び出たアイディアも出てくるわけです。このように個人で考える時間とグループで話す時間を互い違いに設けるのが効果的です。
また、良く話す人と無口な人がまざった状態で、いきなりブレインストーミングを行うと、無口な人はなかなかアイディアを口にしようとしません。この時に、5分でも良いので時間を割いて、個々人のアイディアを出して、付箋に1枚に1つずつ書きだしてもらいます。ほんの5分でも多い人は10以上のアイディアを出します。そしてこのあと、グループでブレインストーミングを行う時に、各自書いた付箋を読み上げながら、付箋を貼ることで、みんなのアイディアを耳にし目にするわけです。
なお、ブレインストーミングを行う時は、立って行うのが良いようです。座っていると話し込んでしまい、新たなアイディアが出てこない場合があります。
付箋や紙にアイディアを書くときに、イラストや絵などを用いると、他のメンバーにアイディアを伝えやすくなるので、効果的です。しかし、イラストや絵がうまい人のアイディアに引っ張られる傾向があります。イラストや絵が苦手な人がいるとせっかく良いアイディアなのに、着目されない場合があるので気をつける必要があります。
またブレインストーミングの時間は長めにとったほうが良いです。ある程度アイディアを出し尽くすと、もうアイディアが枯渇したように思えてしまいます。しかしそこでやめずに、無理矢理でも新たなアイディアをひねり出してもらいます。ジェームズ・ヤングは、「アイディアは既存の要素の組み合わせ」と言っています。強制的にアイディアを考えることで、頭の中で普通は考えないような組み合わせがためされ、思ってもみないアイディアが出てきたりします。

6.ブレインストーミング以外の手法

ブレインストーミング以外の手法としては、スピードストーミングというのもあります。スピードストーミングでは、メンバーが2つのグループに分かれ、それぞれが内側と外側の2重の円になります。内側と外側の人が二人でまず話をします。5分ほどたったら、外側の人が一人分ずれることで、異なる二人の組み合わせで5分話をします。これを何度か繰り返したあとで、一旦一人でアイディアを考えて、紙にアイディアを書いていきます。
ブレインストーミングは4~6人が良いと書きましたが、スピードストーミングは話しているときは2人が一対一で話していて休む暇がありませんし、多数の人と話すことで刺激ももらえるので、人数の制約はあまりありません。10人~30人程度、比較的大人数でできます。

ブレインライティングもまた良い手法です。これは、数人で人数分の紙を回しながら、アイディアを書いていき、次の人は回ってきた紙に書いているアイディアに重ねるようにして自分のアイディアを出していきます。
これも個人でじっくり考えつつ、他人のアイディアを読むことによる他からの刺激を取り入れることができます。
時間を決めて、紙を回していくので、すぐにアイディアを書いていかないと、紙がたまってしまいます。アイディアの数という点では、ブレインライティングは一番かもしれません。

7.次のステップ

今まで、ブレインストーミングを中心にアイディア出しの際に気が付いたことを書いてきました。
アイディア出しの第一段階のブレインストーミングでは、数をたくさん出すことが重要であり必須の作業です。しかし、アイディアの数がたくさん出て、そこそこ良いアイディアが含まれていたとしても、殻を突き抜けたアイディアが出ている事はほとんどありません。
この段階で、KJ法などで、アイディアをまとめることも良いですが、必ずしも出したすべてのアイディアを詳細に整理する必要はありません。 個人またはグループでその時点で出ているアイディアの中で、良いと思うアイディアを複数選択してもらい、なぜ良いと思ったのかを分析してみると良いです。
それぞれのアイディアに、そのアイディアが良いと思う理由を書いてもらうと、そこに共通のキーワードが浮かび上がります。そのキーワードからその人やグループが出したアイディアの癖(バイアス)が見えてきます。その癖(バイアス)があるがために、出すアイディアに一定の傾向があり、逆にある傾向のアイディアを出すことを無意識に避けてしまうことがあります。極端な例ですがある会社の企画部門では、社内に案が通りやすいように、無意識に、前例に近い案を出していました。また割合と広く一般に常識と思われているようなことも癖(バイアス)である場合があります。
アイディアおよびその癖(バイアス)を明確にした上で、その癖(バイアス)にとらわれないような案をあえて強制発想していきます。最初は癖(バイアス)にとらわれていますので、癖(バイアス)から外れたアイディアを考えること自体、ナンセンスに感じることが多いようです。しかし、ここで無理矢理でもアイディアを出していくと、常識にとらわれない、簡単には考え付かないようなアイディアが浮かんくることがあるわけです。その画期的なアイディアが出て初めて、それまでのアイディアは癖(バイアス)にとらわれていたと気づくことができます。

アイディアプラントの石井力重氏がPPCO(Plus Potential, Concern ,Overcome)を紹介しています。※2
ブレインストーミングは「批判禁止」をしていると誤解されていることもありますが、正しくは「批判遅延」です。石井力重氏が言っているのはブレインストーミングにも段階がある、ということです。
つまり、最初の段階(Plus Potential)では批判をせず、ひたすら褒めながらたくさんアイディアを出していきます。この段階で批判をしてしまうと、良いアイディアもつぶしてしまうことになります。まずはちょっとの批判でつぶれないように、色々なアイディアをたくさん出しておく必要があるわけです。
次の段階(Concern)では、批判のブレインストーミングを行います。今度は出ているアイディアに対してあらんかぎりの懸念点をあげていきます。
そして最後の段階(Overcome)として、対策案ブレインストーミングを行います。これは、懸念点の上位3つに対して行います。大きな問題を打開できれば、あとの小さな問題は自然と解消されます。

IDEOではイノベーションは、DESIRABILITY(HUMAN)、FEASIBILITY(TECNICAL)、VIABILITY(BUSINESS)の3つが重なる必要があると言っています。※3
順番としては、DESIRABILITY(HUMAN)を考えるブレストをまずは最初に行う必要があります。それというのも、技術的やビジネス的なことを先に考えてしまうと、種々の制約を意識してしまい、それに引きずられて、わくわくするようなアイディアが消えてしまうからです。

8.まとめ

サービスデザインにおいて、イノベーティブな商品やサービスを考えようとするならば、そこそこのアイディアをいくら出してもあまり意味はありません。ワークショップなどで時間を設定すると、ある程度アイディアが出そろったり、時間が来た段階で、新たなアイディアを出すことをやめてしまう人(グループ)がいます。時間の制約があるなかで8割9割の成果を上げるという意味では、推奨すべき行動なのかもしれません。しかしイノベーションに関しては、平均よりちょっと良いアイディアを出しても、イノベーションにはなりません。それはアイディアを出さないことと変わりありません。もし、今までにないアイディアを出すことができるのならば、少しぐらい制限時間をオーバーしたとしても、それは取るに足らない事です。そちらが正解ということになります。

[注/参考資料]

*1: 集合知とウェブ 志村正道http://www.yc.tcu.ac.jp/~kiyou/no10/1-04.pdf
*2: PPCO 石井力重http://www.slideshare.net/ishiirikie/ppco
*3: IDEOhttp://www.ideo.com/about/

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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