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「“ワークスタイル変革”では何が必要か?」
株式会社オージス総研

2015年03月号
  • 「“ワークスタイル変革”では何が必要か?」
株式会社オージス総研   大澤 登士弘

"ワークスタイル変革"と聞いて何を想像するでしょうか?世間では、スマートフォンやタブレット(以下、スマートデバイス)の有効活用やイノベーション創出や生産性向上など、様々に想像されるかと思います。ワークスタイル変革は、今後の日本の人口減少と超高齢化社会を迎えるにあたり、限られたリソースと時間を効率的に使うために、時間に縛られない働き方と言う点でも注目されています。実際当社でもいくつかの取り組みがあります。社内のフリーアドレス※1を進めてコミュニケーションの活性化や、クライアントの仮想化とモバイルデバイスの活用によっていつでもどこでも業務可能な環境を整え、テレワーク※2により隙間時間の有効活用などを狙いとして進めております。

ワークスタイル変革の取り組み

ここからは、具体的にワークスタイル変革を実施した企業の事例をいくつか紹介します。

モバイルデバイスの持ち歩きが無い場合と比べると、移動時間やアポイントの間の待ち時間に、スマートデバイスを活用してメールやスケジュール管理をするだけでも、1日2時間程度の時間短縮に繋げられた。<生産性向上>
外回りの営業が外出先からグループウェアを利用する時に、スマートデバイスを活用することで、従来のPCの利用時と比べ、起動の素早さで業務スピードが向上した。<生産性向上>
保守点検作業員がスマートデバイスで外出先からその場で作業報告を入力することで、手書きの作業伝票と比べ顧客対応スピードが向上するだけでなく、重要情報が入力された紙の持ち歩きが無くなったことで紛失リスクが解消。更に帰社後の作業実績の入力事務作業の軽減が可能になり、業務効率が向上された。<生産性向上>

ICTの積極活用に取り組む自治体でスマートデバイスを活用したWeb会議の導入により印刷資料の共有と移動時間をなくすことでコスト削減を実現した。<コスト削減>
現地で検査業務などに使用するHHT(Hand Held Terminal)は専用機であるため端末価格が高く、業務アプリケーションの開発コストも高い。これをスマートデバイスに置き換えることで調達・開発・運用コストを削減した。<コスト削減>
使い慣れた自身の携帯電話やスマートフォンをビジネス通話とプライベート通話の両方に使用するBYOD(Bring Your Own Device)を導入し、ビジネス通話分を自動分計。専用のIP電話アプリケーションで利用者間の通話の無料化や端末コストの削減・端末管理業務の削減に繋げた。<コスト削減>

内線電話のIP化と企業内の無線LANの活用によって、スマートフォンを外線はもとより内線もかける端末として利用することで、内線端末を減らすだけでなく、お互いの端末への通話料金を無料にできるメリットを生かすなどコスト削減と従業員満足に繋げた。<コスト削減、従業員満足>

エンターテイメント企業で電話、モバイル端末、テレビ会議、Web会議、ボイスメールなどを統合したコミュニケーション基盤を利用し、アイデアが浮かんだ時点で直ぐに相手と連絡が取れる円滑なコミュニケーションによりクリエイティビティの向上に繋げようとしている。<イノベーションの期待>
社内の座席を固定しないフリーアドレスにより偶発的なコミュニケーションで新たな発想を期待する。<イノベーションの期待>

この様な試みは、多くの企業で実施されていますし、他にもまだまだいくつもの取り組み事例が上がってきております。

これらの事例やその他の事例などから、ワークスタイル変革による目的は、業務の「生産性の向上」や「コスト削減」といった直接的業務成果を目指すものと、様々な人とのコミュニケーションを取りやすくする環境を作ることによって起きる「イノベーションの期待」、働きやすい環境を整えることによる「従業員満足」、そしてパンデミックや大規模災害などに備えた「事業継続(BCP)」といった副次的な効果を狙うものが上げられます。

こういった目的を達成するための代表的な実現手段としては、以下の様なものが上げられます。

デスクトップ環境やアプリケーションの仮想化技術を用いた「クライアントの仮想化」
これまでのノートPCだけでなくスマートデバイスも含めた「モバイルデバイスの活用」
使い慣れた私物の携帯やスマートデバイスを業務に利用する「BYODの導入」
会社の座席を固定せず好きな場所で業務を進める「フリーアドレスの実施」
スマートフォンアプリなどを利用して外線だけでなく内線通話も可能にする「スマホの内線化」
事業継続の為の強固なITインフラの整備として「データセンターの利用・バックアップセンターの構築」

これら各々の技術の進化により、テレワークの実施や、コミュニケーションの向上がより手軽に実現され、目的の達成に近づいていくことでしょう。

ワークスタイル変革に係わる取り組みの目的と実現手段を整理すると、以下の様になります。

ワークスタイル変革の目的と実現手段
図1.ワークスタイル変革の目的と実現手段

IT基盤の整備が不可欠

ワークスタイルの変革に必要な実現手段としては上述した通りですが、ここでは主な実現手段のIT基盤を構築する上での課題や検討すべきポイントについて、(1)モビリティ、(2)バーチャライゼーション、(3)コミュニケーション の観点から記載します。

まず初めにモビリティの観点ですが、モバイルデバイスの有効活用は、真っ先に検討に上がるでしょう。特にスマートデバイスの活用ともなるとITガバナンスを効かせるためには、これまでのPC管理と同様に管理する為に新たな仕組み(IT基盤)が必要になります。個人のスマートデバイスを業務に利用するBYOD導入を考えるとなおさら、セキュリティとデバイスの管理が重要になってきます。
これらスマートデバイスを管理することをモバイルデバイス管理(MDM = Mobile Device Management)と言います。端末内のアプリケーションの配布や削除、使用の制限などまで細かな管理を行うことをモバイルアプリケーション管理(MAM = Mobile Application Management)と言います。これらの機能により、容易に最低限のセキュリティポリシーを強制させる(セキュリティガバナンスを効かせる)ことも出来る様になります。
スマートデバイスは、高いポータブル性を持っている反面、紛失しやすいリスクもあります。万が一、紛失してしまえば、戻ってくる可能性は極めて低く、端末に残っている企業の重要データや顧客情報の漏洩に繋がりかねません。MDMには、端末をリモートから初期化する機能などを備えており、いざという時には役に立つでしょう。
スマートデバイスを使って、企業システムにセキュアに接続するためには、VPN(Virtual Private Network)の環境や認証の際の強化として、証明書や二要素認証の基盤を構築することも需要です。更に、ウィルスに対する対策も怠ってはいけません。

次にバーチャライゼーションですが、生産性を上げる強力な手段として仮想化技術の採用もあります。クライアントの仮想化には、デスクトップの仮想化とアプリケーションの仮想化があります。利用者の業務特性に合わせてどちらかを選ぶ必要があるでしょう。何れの場合でも、サーバ側に処理が集中するため、十分なレスポンスが出る様なリソース設計、スケールアップまたはスケールアウト可能なアーキテクチャ設計も特に重要です。

コミュニケーションの観点では、フリーアドレスの導入が一つの手段としてあります。フリーアドレスと言うと、オフィスのレイアウトや業務を行う場所を指すイメージがありますが、こういった固定しない席でも業務が実施できる様にするためには、企業内の無線LAN設備の整備が必要です。当然、持ち運びが容易なポータブルPCの調達・セットアップと端末の管理の仕組みも必要です。

この様にIT基盤の整備は目的達成のためにはとても重要な要素です。

"ワークスタイル変革"で何を目指すか?

ワークスタイル変革を実施する上では、企画倒れにならない様に、先ずは何を目的に実施しようとするかが最も重要です。この点には、十分時間をかけて検討し、全従業員への周知と理解も必要でしょう。決して安易に始めないことです。その時、業務成果(定量的)を狙うのか、副次的効果(定性的)を狙うのかによって、達成成果が大きく異なりますので十分な検討が必要です。
その後、目指す目的を達成するためにはどういう手段が必要なのかを考えます。この時、ITの基盤をどう整備するかも同時に検討し、ITガバナンスの観点からはITの統制をどのように取るかを考える必要があるでしょう。最終的に目的を達成するためには、業務の改革・従業員の意識の改革が必要になるかも知れません。
IT技術はどんどん進化しています。誰もがもっと便利に、もっとリーズナブルに、もっとセキュアに利用できる環境を望むのではないでしょうか。そういった日も近いことでしょう。

おわりに

ここまで記載してきた企業向けのワークスタイル変革とは少し外れるかもしれませんが、教育の現場での教え方/学び方のスタイルの変革にも注目したいところです。政府は、2020年に向け、一人一台の端末の普及を実現させようとしております。文部科学省は「教育の情報化ビジョン」で21世紀にふさわしい学びの環境として、タブレットの活用を大きく取り上げています。総務省でも「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2014」を公表し、これまでの「フューチャースクール推進事業」の成果を踏まえ、学校現場におけるICT環境の構築や運用、利活用の際の情報通信技術面に関わるポイントや留意点について、教育関係者の具体的な取組や地方自治体の導入の参考となるとともに、導入のきっかけとなるようにガイドラインを策定し、公表しております。
教育の現場でタブレットの活用やデジタル書籍の活用、電子黒板の活用などがもっと進めば、これからの時代に必要とされるグローバル社会でも負けないITの基礎知識が備わっている若者が多くなり、先進国との遅れを取り戻し、大きく羽ばたいてくれるのではないかと願っています。また、教育の現場でのITの活用によって、子ども達の興味が(ITだけではなく)広がり、教職員の方々にとっては負担の少ないICT利活用ができ、保護者の方々にとってはお子様の成績のみならず、お子様の現在の居場所や登下校ルートの軌跡の確認や緊急連絡など様々な活用方法が考えられ、とても便利になると思っております。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されております。建築関連・セキュリティ関連のみならず、それらを下支えする急速なIT技術の進化も期待されます。2020年には、どんな未来が開けているのでしょうか。非常に楽しみです。


※1 「フリーアドレス」とは、職場で社員一人ひとりに固定した席を割り当てず、
在社している社員が仕事の状況に応じて空いている席やオープンスペースを自由に使うオフィス形態、あるいはそうした制度を活用して柔軟かつ効率的に業務を進めるワークスタイルをいいます。(コトバンクより)
※2 「テレワーク」とは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、
場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。(一般社団法人日本テレワーク協会より)

[参考資料]

総務省「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2014(中学校・特別支援学校版)」の公表

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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