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「なぜマーケティングが重要なのか?(15) -デジタルマーケティング(4)アドテクノロジー系(1)-」
株式会社オージス総研

2015年03月号
  • 「なぜマーケティングが重要なのか?(15) -デジタルマーケティング(4)アドテクノロジー系(1)-」
株式会社オージス総研   水間 丈博

今回から「アドテクノロジー」を取り上げます。アドテクノロジー(以下アドテク)の"アド"="Advertising"であり、広告のためのITテクノロジーを指しますので、ここ数年マーケティングの専門家だけでなく広告業界(広告会社だけでなく広告主や媒体社を含む)で"アドテク"の話題が盛んです。そこにはアドテクが主に対象とするインターネット広告が大きく伸長している実態があります。アドテクは、IT技術の広告への応用であり、その浸透が急速に進んだため、様々な新しい概念が集中している分野でもあります。アドテクの発展の経緯を概観しながら個々の技術要素を解説し、併せて課題について触れていきます。

1.アドテクとは?

アドテクは、いわゆる"インターネット広告"である、
  • リスティング広告(検索連動型広告)
  • Display広告(純広告も含まれる)
  • アフィリエート広告、リワード広告
などを扱う"インターネット広告のためのIT技術"を指しますが、最近ではもっぱら[図29]で表現されている「広告主とコンシューマ(利用者)の間に存在するアドネットワーク(業者群)で駆使される技術」を指すことが多いようです。
[図29]は主にアドテクを扱う広告主と媒体社(パブリッシャーともいう)の間に存在する関連事業者を役割別にマッピングしたものです。(出典:注*6)

「Display Advertising Technology Landscape」
[図29] Display Advertising Technology Landscape

アドテクには
  • 「広告主」:広告を出稿する企業
  • 「メディア」:広告を最終的にユーザに届ける媒体運営会社
  • 「ユーザ(消費者)」:広告の視聴者
  • 「その他の業者」:アドネットワークを技術的に支える事業者
の4者がメインプレイヤーとして登場します。

ところで、それまでの広告と異なる"アドテクの本質的な価値"は何でしょうか。

例えば、美容と健康に関心を持つ20代の女性が存在するとします。いつもネットで健康食品やサプリメント、あるいは健康増進のためのコラムを良く読んでいます。
こうした女性のPCやスマホに、例えば"スポーツ車"、"ガンダム"、"望遠レンズ"などのどちらかと言えば"男性向け"のDisplay広告が表示されたとしてもクリックしてくれる可能性は低いでしょう。
逆にこうした女性に広告を届けたい"女性向けサプリメント"の販売企業は多いかもしれません。女性にとっても、自分が強い関心を持つ分野の広告ならば、"こんなのあったんだ!"とばかりにクリックしてくれるかもしれません。その結果、知らなかった良い商品に巡りあい、喜んで購入してくれる可能性が高くなりそうです。
これはアドテクの「理想形」の話ですが、もしこうなれば広告主は商品が販売でき、メディアは自社サイトの価値が上げられると同時に収益化がはかれ、ユーザは現在の関心事や課題を解決できることになります。
このように、「広告主」・「メディア」・「ユーザ(消費者)」の三方にメリットをもたらすような"ネット広告を配信する技術的な仕組み"がアドテクノロジーなのです。

2.インターネット広告

簡単に「インターネット広告」がどの程度の市場規模なのか見てみましょう。
[図30]は、毎年大手広告代理店の電通が発表している日本国内の広告費の5年間のメディア別推移を示します。*1
「4大メディア」と呼ばれているTV・ラジオ・新聞・雑誌への広告出稿量は、2008年のリーマンショック後大きく落ち込んだものの、現状は下げ止まったと言われています。そんな中、衛星メディアとインターネット広告が伸長していることが読み取れます。

「日本の広告費」
[図30]日本の広告費

インターネット広告費総額は2014年に初めて一兆円を超えました。制作費を除いた正味の広告媒体費は8,245億円(2014年)で、このうち"運用型広告"と分類されている検索連動型広告とアドテクの部分はインターネット広告費の約62%の5,106億円、残りの3,139億円は純広と呼ばれる枠売り広告やタイアップ広告です。運用型広告費の前年対比率は124%と突出していますが、その大半が「検索連動型」と言われていますので、今回の主題であるアドネットワークを中心としたアドテクで取引されている広告量はまだ少なく、総額1000億円未満と推定されます。
ただ、スマホ向けの運用型広告も増加しているため、今後このシェアは確実に増大することが予想されています。
4大メディアではTVが約65%を占めていますが、二番目が新聞の約6千億円ですから、既にメディア別ではインターネット広告が2番目の規模に成長したことがわかります。
*1: 広告費は広告出稿料と制作費に大きく分かれ、インターネット広告の場合はそれぞれ61.9%、38.1%の割合となった。プロモーションメディアには、屋外広告、交通広告、折込広告、ダイレクトメール、フリーペーパー、展示や映像などが分類されている。
出典:「2014年 日本の広告費は6兆1,522億円、前年比102.9%」 電通ニュースリリース2015年2月24日
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0224-003977.html

3.運用型広告の発展経緯

インターネットが本格的にビジネスで利用されるようになってから約20年が経ちました。インターネット広告の歴史はインターネットの歴史と共に重なり、発展してきました。インターネット広告の発展の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

(1)黎明期

1995年以降、インターネットの最初期からメディアのコンテンツサーバ内のコンテンツに直接バナー広告(gifなど)が記述され、その後URLが埋め込まれていきました。現在でも純広告はこのような形式が一般的に踏襲されています。インターネット上で"広告が掲載できる"という新たなメディアの幕開けでした。一定期間一定の料金で掲載できることで雑誌広告と同様に扱うことができました。

[図31-1]
[図31-1]

(2)アドサーバ期

その後すぐに、大手メディアが中心となり、広告をコンテンツから独立させて管理できるようにするために、アドサーバが導入されていきました。広告はコンテンツからタグで連携させます。こうすることで、広告のインプレッション数などの配信実績管理が可能になりました。メディア側作業が改善された一方、広告主側のメリットはあまりありませんでしたが、インプレッション数(表示回数)を指定して注文することも可能となり、広告主側も効果測定の手掛かりが得られるようになりました。現在はGoogle Double Clickなど条件付きで無料のアドサーバも出現しました。
なお、1997年にはGoogle AdwordやOverture(現Yahoo!スポンサードサーチ/ディスプレイアドネットワーク(YDN))など、検索した用語に応じて関連する広告を表示する"検索連動型広告"が出現しています。

[図31-2]
[図31-2]

(3)アドネットワーク期

1998年には、メディア社の外部にアドサーバを束ねる業者がサービスを開始しアドネットワークが形成され始めました。(日本で本格的に普及するには2000年代半ばまで待たねばならず、時間が掛かりました。)アドネットワークを利用することで、広告主にとっては一度入稿(入札)した広告が様々なメディアに配信される可能性が高まり、メディアにとっては自社で運用の複雑なアドサーバを持つ必要が無く、アドネットワークから送られる広告タグだけを表示すれば良くなりました。
また、配信先の特徴やカテゴリー(ファッション・スポーツなど)をある程度指定することも可能になった上に、表示数(インプレッション数)やクリック数(CTR)などの効果も計測できるようになりました。メディア側は多数の広告在庫(統計的経験的に表示されると予測される将来の広告枠の数)をまとめ売りすることができ、収益化のチャンスが拡がりました。
ただし、広告主から見ると、どのメディアにどれだけ広告が表示されているのか把握できないため、広告から流入する自社メディア(オウンドメディア)での流入解析が重要になり、SEO(サーチエンジン最適化)が流行しはじめました。
アドネットワークは市場浸透と発展がしばらく続き、やがて水平型(HORIZONTAL)、垂直型(VERTICAL)、ターゲティング型(TARGETED)、効果保証型(PERFORMANCE)の4類型に分かれ、それぞれ多分野のメディアを扱う総合アドネットワーク、専門分野に特化した特化型、視聴者の行動パターンに応じてDisplay広告を配信するオーディエンス追求型、そしてアフィリエート型に進化しています。[図29]では、Ad NetworksからMobileに至る領域にあたります。

[図31-3]
[図31-3]

(4)アドエクスチェンジの登場

アドネットワークの発展は広告主にとってもメディア側にとっても、それぞれメリットの大きい画期的な仕組みでした。ただ、まだ市場取引規模が小さかった上に、人気広告枠は在庫が尽き、不人気広告枠は大量に在庫が余るなど、広告主側の広告メディア選好性を高める結果を招きました。そこには、消費者のどのような行動経路が最終的な購買(コンバージョン)に至るかという分析が徹底されず、自社サイトに直接反応し易いメディアだけを追い求めがちだった未熟な広告主側の問題もありました。
そこで、2000年代末頃にアドネットワーク同士をつなぎ、空いた広告枠を入札方式で交換するアドエクスチェンジが登場しました。多少の混乱期間がありましたが、基本的に広告のインプレッション毎(1回の表示毎)に取引され、またインプレッション課金形態に統一されて"インターネット広告の取引市場"とも呼ぶべき場が確立しました。

[図31-4]
[図31-4]

(5)DSP/RTB/SSP期

アドエクスチェンジが登場し、1インプレッション(1回の広告表示)単位で取引させるためには、瞬時(リアルタイム)に広告取引を完結させる必要があります。その仕組みがRTB (Real Time Bidding)です*2。 RTBは、広告主側の出稿ニーズをまとめ広告主側の立場に立って効果的な広告配信を追求するDSP (Demand Side Platform)と、メディア側の広告枠をまとめパブリッシャー側の立場に立って適切な広告を広くメディアに届けるSSP (Supply Side Platform)とに挟まれた形で機能しています(DSPとSSPは次回詳述)。オーディエンスが広告枠のあるWEBサイトを開いた瞬間に、この一つの広告枠を巡ってSSPとDSPの間で広告枠の争奪戦が始まります。このオークション(競り)を実現する仕組みがRTBです。ここでDSP群の中から入札に応じた広告同士でオークションが実施され、一番高い価格で応じた広告が配信枠を勝ち取り*3、この広告のタグがSSPを通じてオーディエンスの開いた画面に送られ、このタグからアドサーバがアクセスされてDisplay広告が表示されます。この間わずか0.1秒と言われています*4。この仕組みを支える技術にオーディエンスターゲティングの存在が欠かせません。

[図31-5]
[図31-5]

(6)3PASによる広告効果の測定

RTBの仕組みによって、広告主は"出したい人に向けて出したい広告"を配信することが可能になり、メディア側は手持ち広告枠を効率的に"できるだけ高く販売する"ことが可能になりました。ただ、広告主にとって"本当に販売に貢献した広告はどれなのか?"という疑問が生まれました。
例えば、貴方が関心のある商品のDisplay広告をたまたま目にしてクリックし、商品内容を理解したとします。しかしその際は購買に至らず、しばらく経ってから友人がその商品の利用者であることが分かり、LINEで勧められたとします。それで検索エンジンで再度その商品サイトを探し、先頭の"PRリンク"をクリックし、幸いNET販売キャンペーンをやっていたので割引で購入したとします。
こうした場合、どの広告が最も貢献したのでしょうか?候補は4つほどあります。

  • 最初のDisplay広告
  • 友人のLINEによる推薦
  • 検索エンジンの連動型広告
  • 販売キャンペーンサイト

この疑問が"効果測定問題"と呼ばれ、しばらく広告業界を揺るがしました。なぜなら、最初の広告を配信したメディアも、検索エンジンにPRを出したメディアも「私の貢献です!」と言い始めたためです。(効果測定問題は第17回で触れます。)

この課題を解決する一つの手段が"第3者広告配信"(3PAS:3rd Party AD Server)という仕組みでした。3PASは"ワンストップNET広告代理店"といった存在です。一度3PASに広告を預ければ、どのようなメディアからどのようなオーディエンスにいつどの広告が配信されたか、といった情報が全て集まり、オーディエンスの購買経路がある程度特定できます。しかもDSPやSSPとも繋がっているため、広告を出したい人向けに限定して配信することができます。アドネットワークは、広告ネットワークを束ねているだけでしたので、こうした測定は不可能でした。広告主は3PASを活用することで「新規顧客獲得向けの施策」や「購買意欲が高そうな顧客向けの施策」といったプロモーションシナリオを描き易くなったと言えます。広告主の広告管理目的を適えたものなので、活用が拡がり始めています*5

(7)現在の姿

現時点のアドテクの世界を表現したものが[図29]になります。元々は米国で作成された'The Display Lumascape'が元祖ですが、日本のアドテク発展と共に日本版が作成されました。あまりに混沌とした図であること、機能やデータ重複が著しいこと、起業・廃業、M&Aが頻繁であるため刻々と状況が変遷することなどから、別名"カオスマップ"(混沌とした業界閲覧図といった意味)と呼ばれています*6

左端は広告主、右端はコンシューマ(私たちオーディエンス)で、その間の企業群が実名で列記されています。左の方から広告会社、広告会社に近いアドテクエージェント、DSP、アドネットワーク、SSP、メディア(ユーザに情報を届けるサイトを持つパブリッシャー)といった配置になっています。DSP/RTB/SSPを中心にDMP(これは第13回で触れた2種類のDMPのうち"Web広告業者用のDMPにあたります)、データサプライヤー、効果測定専業サービス、配信先メディアの妥当性を検証するVerification、モバイル向け専業業者などが加わり、相互に業界全体を支える構図となっています。

*2: RTBは金融テクノロジーをアドテクに応用した仕組み。これはイノベーションといえる。
アドテクのRTBは、2008年のリーマンショックで金融業界から職を追われたエンジニアが広告業界に転職し、株取引と同様の考え方を広告配信に採り入れたことで実現したと言われている。
[参考]「アドテクでこれから起こることは、きっと金融市場が教えてくれる」
http://www.admarketech.com/2012/09/adtech-financialmarket.html
*3: 「RTBの落札価格の決定方法」厳密には2番札の価格+1円に設定される:セカンドプライス方式と呼ばれる。
*4: RTBの仕組みは高速で処理される。 代表的なポータルサイトのDisplay広告はこの方式である。:例ヤフーポータル
*5: 第3者配信は1990年代には既に登場していたが、当時国内のアドネットワークが広告会社傘下で形成されたパターンが多かったため、これに対抗する存在として第3者配信と呼ばれた。ここで述べている第3者配信は、広告主の広告効果測定ニーズに応えた形で登場したものであり、当初の第三者配信と目的と意味合いが異なる。ただ、現在はこちらの意味で使われることが一般的になった。
*6: 出典:Jp chaosmap Hiroshi Kondo
http://www.slideshare.net/HiroshiKondo/jp-chaosmap-20142015
米国版は数々のLumascapeが存在する。(以下一例)
http://www.lumapartners.com/lumascapes/display-ad-tech-lumascape/

4.オーディエンスターゲティング

アドテクで特徴的なのは"オーディエンスターゲティング"の仕組みです。オーディエンスターゲティングは、それまで存在した行動ターゲティングを進化させた方法で、2011年頃米国から技術がもたらされました。行動ターゲティングは、"一つのWebサイトの中"で行動したユーザの行動履歴から興味や嗜好性を推測してDisplay広告の最適化を図るもの(ある自動車メーカーの広告を良く見ている人にそのメーカーの新車広告を出す、など)であるのに対して、インターネット上で様々なサイトを回遊するユーザの行動を横断的に探ってユーザの興味の対象や欲求の強さを推し測り、適切なタイミングで相応しい広告を"その人に向けて発信する"のがオーディエンスターゲティングです。
例えば、国内旅行サイトを幾つか見てから数日経って、ポータルサイトを開くと、旅行会社や航空会社の広告が表示されたりします。これがオーディエンスターゲティングです*7。以下に概略の仕組みを解説します。

(1)オーディエンスターゲティングの仕組み(DSPの場合)

[図32]がDSPを活用する場合です。具体的には自社メディア(自社ホームページ)でマルチ製品ラインをサブドメインで展開する場合や、一つのDSPへ広告を一括して出稿する場合が該当します。3PASも似たような仕組みになっています。DSPも3PASも、実際にはユーザとの間に複数のアドネットワークが存在しています。

「DSPによるオーディエンスターゲティング」
[図32]DSPによるオーディエンスターゲティング

(1) あるユーザが「SiteA」にアクセスすると、そのサイトに埋め込まれたDSPタグ(HTMLで記述されたスクリプト)が起動します。
(2) 広告枠に広告を表示するため、リダイレクトされた広告リクエストをDSPに要求します(初回の接続)。図では省略しましたが、DSPは適当なDisplay広告をアドサーバ経由で配信します。
(3) DSPから広告が配信され、SiteAのページに広告が表示されます。この時、DSPからCookieがブラウザに書き込まれます。このDSPから書き込まれたCookieには"ID=001"、"SiteA"といった情報が転記されています。
(4) DSPは「ID=001」と割り当てたユーザ(ブラウザ)がAというサイトでいつどの広告を表示したか(閲覧されたか)といった情報群をユーザ行動ログに記録します。
(5) ユーザが「SiteB」にアクセスすると、そのサイトに埋め込まれたDSPタグが起動します。
(6) 広告枠に広告を表示するため、リダイレクトされた広告リクエストをDSPに要求します。この時、リクエストしたDSPと接続が2回目以降であれば、ブラウザから(3)で保存されていたCookie情報が送られます。Cookieに書き込まれた情報からこのユーザが「ID=001」であり、2回目の訪問であることを認識します。DSPは適当なDisplay広告をアドサーバ経由で配信します。
(7) DSPから広告が配信され、SiteBのページに広告が表示されます。この時、DSPからCookieがブラウザに書き込まれます。このDSPから書き込まれたCookieには"SiteB"の情報が追記されています。
(8) DSPは「ID=001」と割り当てたユーザ(ブラウザ)がBというサイトでいつどの広告を表示したか(閲覧されたか)といった情報群をユーザ行動ログに記録します。
(9) 以下別のサイトにアクセスした場合も同じ動きになります。

このように、ブラウザ単位で識別したユーザの行動ログを記録していきます。

(2)Cookieの原則とCookieSync

[図32]で、ユーザのブラウザには、"SiteAのCookieA"と"DSPのCookieX"の2つのCookieが残ります。1画面を表示しただけなのに2つのCookieが付与されるのは、SiteAの本体ページの広告枠から外部のDSPが呼び出され、その結果広告配信元が別ドメインになるためです。
ユーザから見てCookieAを"1st Party Cookie"、CookieXを"3rd Party Cookie"と呼ぶことがあります*8
ユーザがどのサイトにアクセスしたのか、まったく別のドメインから見ることができないように、Cookieの規則(RFC規則)に
  • 1Domain=1Cookie
  • 発行元Domain以外はそのCookieを解読できない
があります。
この原則をクリアする工夫(裏ワザといっても良いかもしれません)がCookieSyncです。[図32]では(2)のSiteAのスクリプトが広告リクエストをリダイレクトする際にSiteAのCookie情報をパラメータとして渡しているのです。そのため、DSPはCookieXに引き継がれたCookieAの情報に基づいてユーザ識別できるのです。
CookieSyncは別々のドメインが3rdPartyCookieを介して連携しユーザアクセス履歴を収集する仕組みといえます。

(3)オーディエンスターゲティングの仕組み(DSP+SSPの場合)

[図33]はCookieSyncの仕組みをDSPとSSPで実現するケースです。具体的には自社メディア(自社ホームページ)でネット販売を手掛ける企業などが多く利用するDSPと、広告主にできるだけ高く広告枠を販売したいメディア系サイトなどで利用されるSSPの間でCookieが交換される仕組みです。

「DSP/RTB/SSPによるオーディエンスターゲティング」
[図33]DSP/RTB/SSPによるオーディエンスターゲティング

(1) あるユーザが「SiteA」にアクセスすると、そのサイトに埋め込まれたDSPタグ(HTMLで記述されたスクリプト)が起動します。
(2) 広告枠に広告を表示するため、リダイレクトされた広告リクエストをDSPに要求します。
DSPは適当なDisplay広告をアドサーバ経由で配信します。
(3) DSPから広告が配信され、SiteAのページに広告が表示されます。この時、DSPからCookieがブラウザに書き込まれます。このDSPから書き込まれたCookieには"ID=001"、"SiteA"といった情報が転記されています。
(4) ユーザのブラウザにはSiteAのCookieAと表示された広告を配信したDSPのCookieXが保存されます。
(5) DSPは「ID=001」と割り当てたユーザ(ブラウザ)がAというサイトでいつどの広告を表示したか(閲覧されたか)といった情報群をユーザ行動ログに記録します。
(6) ユーザが「SiteB」にアクセスすると、そのサイトに埋め込まれたSSPタグが起動します。
(7) 広告枠に広告を表示するため、リダイレクトされた広告リクエストをSSPに要求します。この時ブラウザから(4)で保存されていたCookie情報がSSPに送られます。
(8) SSPからリクエストされた広告枠に対してRTBにより入札DSPが集められオークションが実行されます。実際上は複数のDSPがこれに応じ、最終的に最高入札額で勝利したDSPが決まります。
(9) 勝利DSPをブラウザに通知し、DSPに接続するように促します。同時に、SSPからCookieがブラウザに書き込まれます。このSSPから書き込まれたCookieには"ID=200"、"SiteA"・"SiteB"といった情報が転記されています。
(10) SSPからDSPに対して獲得したCookie情報が渡されます。
(11) DSPから広告が配信され、同時にDSPのCookieが送られます。実はこの時、DSPは以前接続経験のあるユーザID=001であることを直接ブラウザからのCookieによって認識できます。
(12) ユーザのブラウザにはSiteBのCookieB、SSPのCookieY、DSPのCookieX(更新されたもの)が保存されます。
(13) DSPはCookieYとCookieXが同じブラウザであることを認識し、DSPは「ID=001」と割り当てたユーザ(ブラウザ)がBというサイトでいつどの広告を表示したか(閲覧されたか)といった情報群をユーザ行動ログに記録します。
(14) SSP側でもDSPと連携することで獲得した[ID=200]というユーザがSiteA、SiteBにアクセスした情報を記録します。

このように3rdPartyCookieを介して別々のDSPやSSPがブラウザの閲覧履歴を交換していることが分かります。(ただし、SSP製品によって機能有無がある。)

*7: [補足]別名"リターゲティング"と呼ばれることがある。オーティエンスターゲティングは、ネット上の個人を識別(特定ではない)する仕組みを指すのに対し、リターゲティングは、一度自社サイトに訪れた経験のあるネット上の個人を追跡し、別の機会に再度広告を表示して購買を促進するといった手法を指す。例えば、ECでカートに商品を入れたにもかかわらず、その時点では購入に至らなかった顧客へ数日おいてDisplay広告を表示する場合などが相当する。
*8: 1stPartyCookieと3rdPartyCookie
Cookieの機能はどちらも等価である。2種類あるわけではなく、ユーザからの見方。

5.アドネットワークで蓄えられた価値

こうしたオーディエンスデータはDMP/SSPだけでなく、業者用DMPや"データサプライヤー"と呼ばれる多数の読者を持つ大手サイト内など、アドネットワークの中に広範に蓄積されています。こうして集められたデータは、数千万件、数億件の規模になると当然ながらBigDataとしての価値が生まれます。
今回、冒頭で"アドテクの本質的な価値"は「広告主」・「メディア」・「ユーザ(消費者)」の三方にメリットをもたらすことにある、と述べました。この命題を実現するためにBigDataとしてあらゆるユーザ行動パターンが分析され、予測しようとする試みが続けられています。
またデータの収集方法はCookieを利用する方法は既に減少傾向にあると言われており、IPアドレスやログインID、ソーシャルログイン等で直接的・間接的に個人を識別する方法が主流になり始めています。当然、個人のプライバシー問題が避けて通れなくなっています。

今回はアドテクの発展の経緯を概観し、運用型広告を支えるオーディエンスターゲティングの仕組みを見てみました。
次回からDSP,SSPなど個別の要素を掘り下げていきます。

[参考資料]

[書籍]
「DSP/RTB オーディエンスターゲティング入門」横山 隆治・菅原 健一・楳田 良輝 (著)
インプレスR&D (2012)
[参考]
「ここからはじめよう!アドテクノロジー基礎講座一覧」Markezine(翔泳社)
http://markezine.jp/article/corner/465

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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