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「なぜマーケティングが重要なのか?(17)-デジタルマーケティング(6) アドテクノロジー系(3)-」

2015.05.18 株式会社オージス総研  水間 丈博

今回も引き続き、アドテクノロジーの諸要素を取り上げます。今回は、タグマネジメント、アトリビューションおよび広告効果の測定についてです。

1.タグマネジメント

前二回の掲載で、"アドテク"のDisplay広告やオーディエンスターゲティングにおけるDSPの役割などを見てきました。こうした仕組みを支える重要な要素の一つが"HTMLタグ"です。ここで説明するまでもなくHTMLのタグとは、WEBを記述するマークアップ言語であるHTMLの構造を定義するために多くの要素を<XXX>~</XXX>という形で宣言するもので、WEBページは"タグの構造体"でできているともいえます。このうちアドテクで活用されるのはJavascriptがほとんどすべてと言って良いかもしれません。<script>と</script>で完結する構文の中に'javascriptの命令や関数'を記述することで、WEB表示(HTML実行)の際に起動され、ページ外部との様々なデータ受け渡しに活用されています*1

(1)'タグ'の役割

当初のタグの役割はアクセス解析目的のものでした。自社メディアとして重要なWEBページ群のどこがアクセスされ、どこがアクセスされていないのか、分析することが自社ホームページやショッピングサイトなどオウンドメディア改善の第一歩でもありました。そこで「アクセス解析ツール」を導入する企業が増えました。また、リスティング広告やアフィリエイト広告を導入する広告主が増えたことにより、成果認識もしくは成果報酬算定のためのタグを設置する必要が出てきました。これは広告主が"成果と認めたページ"(商品の購入・カタログのダウンロード・会員申込みなど)をリスティング広告管理サイト(GoogleアドワーズやYahooスポンサードサーチ)やアフィリエイトサービスプロバイダーに登録することで利用可能となります。この時に該当ページに"成果認識のためのタグ"が埋め込まれます。例えばECで購入手続きが完了した直後の"サンキュー画面"などに配置することで"コンバージョン完結"を認識します。このようなタグを"コンバージョンタグ"と呼びます。
さらに"オーディエンスターゲティング"で解説したように、ユーザの行動履歴を追跡することにも"タグ"が大いに活用されています。いわゆる"リターゲティング"が活発になるに従い、その必要性からDisplay広告にタグが必ず設置されることになりました。

(2)アクセス解析ツール

アクセス解析ツールは、基本的にすべてのWEBページにHTMLタグを埋め込み、アクセスされた際に"アクセスがあった"という事実を通知させることによってページ毎のアクセス数を把握する仕組みです。(アクセス解析に関しては「WEB系SEO」で別途取り上げる予定です。)こうしたタグの多くは、広告主が利用するアドネットワークや効果測定ツール、アフィリエイトサービスなど個別に登録・設定する必要があります。また複数の効果測定ツールを利用する広告主もあり、管理や運用する負担が大きくなっていきました。

(3)ワンタグからの発展

そこで2009年頃に"ワンタグツール"が登場しました。"ワンタグ"とは、一つのタグで複数の管理目的に利用できるようにしたもので、機能的にはタグ機能のOn/Offや広告主の利用する数々のASPサービスの成果タグを一つにまとめるものでした。その後DSPの登場や、アドテクで展開される広告枠の急激な増加、A/Bテスト目的利用の拡大、モバイル機器向け広告の増大などに伴って、設置されるタグの種類も増えて行きました。ワンタグの機能は、一つのタグに様々な目的を持ったタグ機能を連結したものが主流ですから(これをコンテナ方式と呼びます)、WEBのパフォーマンスにも影響してきました。ただしタグの非同期実行など高速化の工夫がされてきています。
このようにリターゲティング全盛時代に移り、その後DSPが導入されるようになってから広告在庫も急激に増大しました。スマホ利用者の拡大に加え、企業ホームページでは、Twitter、FacebookなどのSNSソーシャルログイン機能を付加することが当たり前となり、ここでも新たなタグを配置する必要が生じました*2

(4)タグマネジメントツール

こうした"タグ利用の多目的化"に伴う管理運用負荷を軽減する目的から、独立したタグマネジメントツールが生まれました。タグマネジメントツールの最大のメリットは、全ページに埋め込むタグは、タグマネジメントツールのタグひとつだけで良いことです。主なツールの機能は、概ね以下のようなものになっています。
  • タグ編集機能(追加・削除・編集)
  • タグ機能管理(タグの発動ルール設定)
  • スクリプト編集機能(javascriptの編集や運用支援)
  • モニタリング機能(タグ毎の計数管理・進捗管理)
  • エラー管理機能(エラーやアラート処理支援)
例えば、Yahoo!では提携したBrightTag社(現Signal社)のタグマネジメント技術を採り入れ、"サーバダイレクト方式"のタグマネジメントツールを提供し始めました。
この方式の特徴は、
  • 広告主の広告予算進捗管理
  • 広告の入稿管理
  • 広告主の設定するターゲット属性管理
  • 広告主の配信成果の管理
従って、広告主は
  • クッキーによるデータ保存方式に依存しない
  • ブラウザの遅延によるデータ損失を回避
  • タグ実行がクラウド上となるためWEBページ読み込みが高速化
などのメリットがあるとされています。ただ、今後この方式採用が拡大するかは未知数です*3

(5)まとめ

このように、当初オウンドメディアのアクセス分析目的で導入され始めたタグが、様々な目的に応じて活用が拡大し、その運用上の要請から出現したものがタグマネジメントツールといえます。言い換えれば、"HTMLタグ"が、WEBページ単位のアクセス計測目的から訪問者の追跡ツールに役割が変わってきた、という事実と同期しているといえます。日本と異なり、海外(特に米国)では独立系タグマネジメントツールベンダーが存続しており、タグマネジメントの技術を応用してサポート領域拡大を進めています*4
*1:"カスタムjavascript"の機能が豊富となり、様々なデータが入手可能となっている。例えば、マウスオーバー(マウスをDisplayの上をなぞる)だけでJS発動が可能である。
参考:『タグマネージャーがマーケティングツールへ進化した!』ADMAGE.blog
http://blog.admage.jp/?p=730
なお、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールでも同様にカスタムJavascriptが活用されている。
参考:『最初に設定しないと絶対損する!Google Analytics 9個の必須設定&解説』FindJob! Startup (Mixi Recruitment, Inc.)
http://www.find-job.net/startup/analytics-setting
*2:出典 『現場のためのタグマネ入門』admarketech1サイトあたり平均で4.7種類のタグが設定されている、とする。また全体の2割り近くのドメインに6種類以上のタグが設定されている、と言う。(これは2012年記事のため、現在はさらに増えている可能性がある。)
http://www.admarketech.com/2012/07/tagmanagement.html
*3:参考『Yahoo!タグマネージャーのここがスゴイ、実践! タグマネジメント入門』デジタルマーケティングブログ
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/12/02/16074
サーバダイレクト方式とコンテナ方式の違いについて詳しく解説されている。
参考:『タグマネジメントツールの比較』Digital Marketing Bloghttp://www.pablos.jp/digital-marketing/compare_tagmanagement/
国内で著名なタグマネジメントツールが比較されている。
参考:『Yahoo!タグマネージャ利用ガイド(上級編)』http://i.yimg.jp/images/tagmanager/1.0.0/paper/tagmanager_userguide_advanced.pdf
Yahoo!タグマネージャの解説書(2014年12月版)
*4:参考『海外のタグマネジメントベンダー』
Ensighten社
https://www.ensighten.com/
Ensighten社は、ライバルだったタグマネツール大手TagManを2014年3月に買収した。http://adexchanger.com/data-exchanges/ensighten-acquires-tag-management-tech-firm-tagman/
Qubit社
http://www.qubitproducts.com/
Tealium社
http://tealium.com/
Tealium社のCore Benefitは
  • マーケットへのキャンペーン時間が増える
  • ビジネス要求を導き出すベストの選択となる?
  • Webサイトのパフォーマンスを改善する
  • コストを削減する
  • データを標準化する
とある。
Signal(旧BrightTag)社
http://www.signal.co/
(筆者注)海外タグマネベンダーは、現在タグマネジメントの領域を超えて、オムニチャネルサポートテクノロジー企業(クロスチャネルマーケティングテクノロジーとも呼んでいる)へと飛躍しつつあるようだ。例えばTEALIUM社の"Audiencestream"はDMPをカバーすることを指向しており、様々なデジタルチャネルを統合し、得意のリターゲティング技術を洗練させて活用することで、よりタイムリーに潜在顧客へリーチできるとしている。

2.広告効果測定問題

(1)"広告効果"とは?

本連載第15回で触れたように、広告主は"出したい人に向けて出したい広告"を配信できるようになり、メディア側は手持ち広告枠を効率的に"できるだけ高く販売する"ことが可能になりました。この"出したい広告"を"出したい人向け"に出せたとして、その効果とは何でしょうか。それは"ユーザのアクション"に他なりません。ユーザのアクションとは
  • 広告を見る(認識する)
  • 広告をクリックする→広告主サイトを訪れる
  • (その結果)広告主が望む行動をする
> 会員登録する
> お気に入りに登録する
> 興味ある商品を詳しく見る
> 購買する
といった行動になります。
しかしネットユーザは多くのサイトを訪れますので、Display広告をいちいちクリックすることは稀で、現実はDisplay広告のCTRはせいぜい0.5%程度、さらにCVRは3-4%程度、リスティング広告でCVR4-5%といった効果であるようです*5*6
この数値をいかに向上させるかがアドテクで最も苦心するところとなります。
しかし、この効果測定はなかなか難しい課題を抱えていました。
例えば、貴方がYahoo!ポータルサイトで関心のある商品のDisplay広告をクリックし、商品内容を理解したとします。しかしその際は購買に至らず、しばらく経ってから友人がその商品の利用者であることが分かり、LINEで勧められたとします。それでGoogle検索で再度その商品サイトを探し、先頭の"PRリンク"をクリックし、幸いNET販売キャンペーンをやっていたので割引で購入したとします。

こうした場合、どの広告が最も貢献したのでしょうか?

「広告効果の測定(ダブルカウント問題)」
[図40]広告効果の測定(ダブルカウント問題)

商品広告主がYahoo!スポンサードサーチとGoogle Adwordsに同時にコンバージョンタグを張り付けている例は多いでしょう。その場合、最初のYahoo!のDisplay広告をクリックして商品サイトを訪問した後30日以内に商品を購入すると、Yahoo!のレポートに「コンバージョン1件」がカウントされ、さらにGoogleでも「コンバージョン1件」がカウントされます。つまり1件のコンバージョンに対して2件の"貢献"がカウントされたことになります。これが広告効果測定問題です。(Googleではコンバージョン測定期間を30日(初期値:デフォルト)、60日、90日の3つから選択できる。)
これは、YahooもGoogleも、独自のCookie情報に基づいて計測していることに起因する問題であるため、「広告効果測定ツール」を導入し、メディアに左右されない独自Cookieで成果を測定する広告主が増えました。しかし、初期の広告効果測定ツールは直前のリファラー(参照元)を計測していたため、最初のDisplay広告などは評価されず、広告主も直接コンバージョンの数値を上げることに腐心するようになりました。その結果、直前の貢献サイトだけ(直接コンバージョン)を重視し、いわゆるCNV率の高いメディアだけに広告出稿が偏る現象をきたしました。これをラストクリック偏重問題と呼びます。
また、重複カウント数を適切に排除したとしても、実際のCNV数とメディアからの報告数値が不一致になることがありました*7

(2)広告効果の測定

広告効果の測定は古くからある問題で、例えばテレビでは現在でも"視聴率"がスポンサーにとって重要な"効果指標"になっていることは広く知られています。
広告効果には概ね3つの評価軸があり
  1. 広告到達効果:どれほど多くの人に到達したか(見られたか)
  2. 直接販売効果:どれほど売上に繋がったか
  3. 意思決定促進効果:どれほど意思決定を促進したか(AIDMAを促進したか)
に大別されると考えられます。
TVを例にとると、"一つの番組"という枠で見れば"a."は視聴率であり、単発的なTVCMの販売効果は限られるが、何度も放映することによって視聴者への"刷り込み効果"が現れ、知らない人には認知効果を、認知している人には興味を高める効果を、といったように"c."意思決定 促進効果(AIDMAを促進する効果)が徐々に浸透し、やがては"b."販売に繋がるという風に考えることができます。
なお、直接販売効果は、広告を投入した量・投入地域・販売金額を時系列で見ることで推定することが通常です。(また現在は、TVCM放映直後のTwitterなどの反応量を測定し、上記の各効果を推定する手法が拡がり始めています。)
NET広告の世界でも、これと同様の議論が起こりました。冒頭の例でいえば、最初のDisplay広告も少しは貢献しているのではないか?という問いです。これらを直接コンバージョンに対して間接コンバージョンと呼ぶことがあります。
実際、リスティング広告経由のサイト訪問は必ずしもコンバージョン率が高くないと言った調査もあり、それまで何度もDisplay広告で視聴者に十分認知されたため(意思決定促進効果があったため)、自然検索でコンバージョンに至る率が高いと言った指摘もあります*8

(3)アトリビューションの考え方

そこで登場したのが"アトリビューション"でした。
アトリビューションとは「広告の貢献度を評価する仕組み」と言えます。そこには3つの意味があり、
  1. 消費者の"認知から購買に至るまでの広告接触履歴"を分析し正当にそれぞれを評価する
  2. 広告予算配分の最適化
  3. マーケティング戦略目的の実現
と考えられます。
a.あるユーザがNET上で最初にDisplay広告や検索エンジンで特定の商材に接触してから、最終的に購買に至るまでの様々な接触履歴をたどり、どの仕掛けがどの程度効果があったのかを分析評価する手法です。世の中の商材や広告主によって、様々な考え方があり、ラストクリックを重視する考え方の他に、ファーストクリックを評価する考え方、ラストクリックを50%、残りをそれまでの接触に均等に配分して評価する考え方などがあります。これを"アトリビューションモデル"と呼び、様々なモデルが提唱されています。例えばGoogleでは7つのモデルを提示しており、広告主が選択できるようになっています。

「アトリビューションモデル(Google)」
[図41]アトリビューションモデル(Google)*9

b.広告にはコストが発生します。ラストクリック偏重問題では、ラストクリックに効果の高いメディア選好が進み、広告料の極端な格差や在庫の需給ギャップが生じました。
しかしその結果、縮小最適化問題(CPAが見合わない広告を切り捨てて行った結果、限界に達してCPAの目標を達成できなくなる問題)が発生することになったと言う指摘があります*10
こうした"刈り取り型広告"ではなく、認知層を増やしながらリターゲティングによって興味を呼び戻す広告や最後の一押しでコンバージョンを促進する広告など、バランスのとれた広告配分を実施しながら長期的視点に立った広告戦略が求められるのです。
元々アトリビューションも米国金融業界の投資ポートフォリオ評価のための専門用語でした。RTBと同様、アドテク業界に移り住んだ金融エンジニアがもたらした考え方だったのです。従って適切にアトリビューション分析を実施して最適な広告予算配分ポートフォリオを探り出すことが本来のアトリビューションの意味なのです。そこには配分した予算とその結果とを適切に対照させて次の予算配分に活かすPDCAの考え方が必要になります。
c.これはa/bと関連します。アドテクは様々な技術が組み合わされますので、個々の技術やツールに担当者の視点が集中しがちです。特に広告の売り手と買い手が閉じたネットの中だけを対象にするので、効率化だけに意識が捕らわれやすくなります。しかしアドテクはその他のマーケティング施策とともにマーケティング戦略の一つを構成するに過ぎません。組織の上位目標であるマーケティング戦略の中にどのようにユーザとのコミュニケーションが位置付けられ、予算配分され、どのような効果を期待されているのか、常に意識しておくことが重要と考えます。
"木を見て森を見ず"にならないように留意することが大切でしょう。

(4)Diaplay広告の効果は低いのか?

ネット上でDisplay広告に対する「効果あり」「効果無し」両論が数多く見られます。"結局Display広告は見られていない"・"リターゲティングで追いかけられるのを消費者は嫌っている"、といった調査もあります。広告主の運用当事者の意見に対してアドテク業界側から我田引水に近い説得材料が提示されている意味合いもあるようです。
確かに日常ネットを見ていても大量に表示される広告に関心を払わない瞬間の方が多いかもしれません。しかしクリックをまったくしない、と言うことでもありません*11。仮にネット広告を煩わしいとは思いつつも、若年層(20歳以下)ではネット滞在時間がTV視聴時間を超えていますから、生活の一部になっているため避けることはできません。

ただし、スマホユーザに対する調査資料では、かなりネガティブな結果が出ているものが存在します。ある調査では、行動ターゲティング広告に対して「好感を持つ」と回答したユーザは13.6%に過ぎず、逆に「嫌悪感を持つ」と回答したユーザは44.1%にものぼりました(いずれも"どちらかと言えば好感"・"どちらかと言えば嫌悪"を含む)*12。 現在は、スマホに広告を載せる広告主はPC向けサイトの広告主とはカテゴリ構成が異なる業者(一部不適切な広告主も存在)が多いと考えられること、スマホ向けのDisplay広告やアドネットワークが発展途上であること、などの理由を考慮しても、この結果は由々しき事態かもしれません。広告品質の改善が求められるところです。

ここではDisplay広告効果に対する評価を加えず、「仮説」を提示することにします。
第2節で a.広告到達効果、b.直接販売効果、c. 意思決定促進効果を列挙しましたが、どの効果に期待配分するかは、商品特性に依存する、と言う仮説です。
◆流行品・SPECがシンプルなモノ・比較的廉価なモノ・非ブランド品・最寄品
⇒迷うことが少ない・即断即決し易い
⇒ラストクリック効果が大きい
⇒b.重視が良い
対して (VS)
◆定番モノ・SPECが複雑なモノ・比較的高価なモノ
⇒興味の範囲に残る・いろいろ調べたりする・時間を掛ける・ブランド品・買回品
⇒ビュースルー効果が高い・購買を決断すると直行する
⇒a.,c. 重視が良い
定性的で確証はありませんが、商品特性に応じた"向き/不向き"はあるかもしれません。少しずつ検証しながら最適解を探り続けることが必要と考えます。

(5)3PAS

広告主は、アドエクスチェンジの発展やRTBの浸透で、様々なメディアに広告出稿が可能になった一方、アトリビューション問題とタグマネジメント問題に直面することになりました。
これを解決する一つの手段が"第3者広告配信"(3PAS:3rd Party AD Server)でした。
3PASの主な特徴は以下の通りです。
  • 配信機能と効果測定機能を併せ持つ
  • クリックされた広告だけでなく、表示されたか(インプレッション)や何回表示されたか(フリークエンシー)も測定できる=直接コンバージョンと間接コンバージョンの測定*14
  • ビュースル―コンバージョンも含めた経路分析が可能
  • モニタリングしながら施策を打ちやすくなる

3PASは有償のサービスですが、一つのタグを入稿するだけで済み、どのようなメディアからどのようなオーディエンスにいつどの広告が配信されたか、といった情報が全て集まり、オーディエンスの購買経路がある程度特定できるようになりました。
かつてはクリックした広告やユーザに配信されたDisplay数(表示されたかどうかに関わらず)が測定されていましたが、実際にユーザに表示されたか否かも判別できるようになりました*13
しかもDSPやSSPとも接続できるため、プライベートDMPからだけでなく、未到達の潜在顧客の中の、広告を出したい人向けに限定して配信することができます。出稿メディアを横断的に測定把握し、ユーザあたりのフリークエンシー数を最適化することが可能になりました。アドネットワークは、広告ネットワークを束ねているだけでしたので、こうした測定は不可能でした。
広告主は3PASを活用することで「新規顧客獲得向けの施策」、「認知効果を高めるための施策」、「訪問履歴のある未購買ユーザ向けのキャンペーン」、「購買意欲が高い顧客向けの限定企画」といったプロモーションシナリオを描き易くなりました。

(6)まとめ

今回はアドテクの象徴とも言えるDisplay広告を"効果測定の仕組みと課題"に絞って考えてみました。
結論としては、商材に見合った施策と効果把握を何度も試行して「最適解」に近づける努力を継続するほかないのではないかと考えます。しかも「最適解」は移ろいやすいことを承知の上で継続する必要がありそうです。なぜなら、商材は社会動向や消費者の嗜好性の揺らぎ、商材自身の鮮度などで需要が変わるものだからです。
また、「アトリビューション分析」はNET上のユーザタッチポイントだけを追ったものです。実際には、人はNET上だけで生活している訳ではなく、TV・新聞・雑誌・交通広告・友人との会話などから新たな認識を得ることが多いはずです。
それでもNETに進出した広告は、今後も生活者と共存していくほかに道はありません。時間は掛かっても生活者に高いベネフィットを提供する広告とアドテクに改善していくことが望まれます。

次回も、引き続きアドテク・クラウド系を取り上げる予定です。

*5:出典『徹底分析!DSPの間接効果(前編)』Leverages MARKETING BLOG
http://marketing.leverages.jp/post/101748626669/dsp-1
*6:注記  CTR/CVRを以下に定義しておく。
CTR(Click Through Rate:クリック率)クリック率=クリック数÷インプレッション数
CVR(Conversion Rate:コンバージョン率)コンバージョン率=コンバージョン数÷クリック数
広告効果指標は様々であるが、代表的なものは例えば以下で紹介されている。
参考:『オンライン広告の10個の効果指標』EVERRISE アドテクブログ
http://www.ever-rise.co.jp/adtech-blog/ad-indicator.html
*7:参考『リスティング管理画面と実際のコンバージョンが違う理由!』RubyMarketing
http://rubymarketing.jp/blog/correct_cv/
*8:参考『広告を見てコンバージョンした人の95%は"見ただけ": 超満員Attribution Night 2011レポート』Web担当者Forum
http://www.huffingtonpost.jp/yusuke-iguchi/advertisement_b_5822132.html
参考『SSP活用でメディアが広告収益を最大化するためのポイント』ITmediaマーケティング (2012年11月15日)
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/10/13/11311
*9:出典『【海外コラム】Google Analyticsにおけるアトリビューションモデルの検証』Attribution.jp (ATARA)
http://www.attribution.jp/ga_attribution.html
*10:出典『ザ・アドテクノロジー』斎藤健一・有園雄一・岡田吉弘・杉原剛 著 Markzine編集部取材・編集 翔泳社
*11:参考『広告に対するクリック意向は減少傾向―定期調査「ネット広告」(8)』INTERNETCOM
http://internetcom.jp/research/20130607/1.html
これはやや以前の調査結果だが傾向としては納得できるものである。
*12:出典『スマートフォン広告に関する調査』ジャストシステム 2014年7月1日
http://www.justsystems.com/jp/download/contents/fastask/biz/report/fa_report-smartphone-20140701.pdf
*13:参考『広告表示の計測機能』
Google(アクティブビュー)やYahoo(ビューインプレッション)もDisplay広告が実際に表示されたかどうかを計測可能になった。ビューインプレッションは、広告画像の50%以上の面積が1秒間以上表示された場合にカウントされるとされる。
https://support.google.com/dfp_premium/answer/3154105?hl=ja
http://www.gootami.com/archives/7876
*14:補足
直接コンバージョン:広告をクリックした人がそのままコンバージョン(購入や入会、資料請求など)すること
間接コンバージョン:(1)ビュースル―コンバージョン:広告を見たが、その際はコンバージョンに至らず、後に別ルート(検索エンジンや広告主サイトの直接訪れるなど)でコンバージョンすること
(2)クリックスルーコンバージョン:広告をクリックしたが、その際はコンバージョンに至らず、後に別ルート(検索エンジンや広告主サイトの直接訪れるなど)でコンバージョンすること

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