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「UXとCXについて」
株式会社オージス総研

2015年11月号
  • 「UXとCXについて」
株式会社オージス総研   仙波 真二

UXとCXについて

最近、「UX (User Experience)」と「CX (Customer Experience)」 に関する議論がホットなようです。といっても、UXやサービスデザイン界隈での話です。例えば、長谷川 敦士 さんのコラム *1) をご覧いただければ、そのあたりの事情が伝わると思います。

実は私も「UX」と「CX」について記述したことがあります。*2)
趣旨は2年ほど前に記述した見解と変わっておりませんが、機が熟してきたということでもう少し詳しく所見を記述したいと思います。

体験・経験の価値

UXとCXの定義

最初に言葉の定義を整理しておきます。

「ユーザー体験」は、UX白書によると「システムを通じた経験(能動的経験、受動的経験)と、それによってもたらされる主観的な感情。(過去の経験に基づく期待も含む)」として定義されています。*3)

「顧客経験」は、Pine & Gilmoreによると「顧客を魅了し、サービスを思い出に残る出来事に変える経験」として定義されています。*4)

UXとCXの生い立ち

次に、それぞれの生い立ちをご紹介します。

UXは ドナルド・ノーマン氏によって提唱された概念で、その後HCDプロセスとして体系化されていきました。HCDプロセスは当初、主に製品を使う文脈で定義されていましたが(ISO13407:1999)、その後サービスも含めた文脈に変更されました(ISO9241-210:2010)。

CXは Pine & Gilmore によって「経験経済」という概念が確立され、その後、Schmitt によって「経験価値マーケティング」として体系化されていきました。*5)

UXはCXのサブセットなのか?

さて、ここからが本題です。

CXとUXは、それぞれ別のステージで用いられていましたが、近年「体験・経験の価値」の重要性が認知されるに従い、同じステージで用いられるケースが増えてきました。そこで問題となるのがそれぞれの位置づけです。つまり、両者とも抽象度が高い概念のため、両者の位置づけを明確にしておかないと混乱が起きてしまうということです。

そうなると「CX の概念の方がUXよりも抽象度が高いため、CXはUXの上位概念という関係となる」とか、「CXは経営色が強いため、社内の力関係がCXとUX の関係にも影響してくる」という思考に陥ってしまい、その結果UXはCX のサブセットという関係で認識されてしまうのではないだろうか、というのが私の推論です。

ここで焦点となるのが、UXとCXを同じステージに上げることの妥当性です。それぞれの生い立ちからわかるように「UX はデザイナーや開発者の視点」で「ユーザー体験」を考える場合が多く、「CX は経営者やマーケターの視点」で「顧客経験」を考える場合が多いという傾向があります。

つまり、使用する文脈が異なるものを同じステージに上げてしまうということが、そもそもの問題ではないでしょうか。

それぞれの「立場」で「体験・経験の価値」が伝わることが重要

では、どうすればよいのでしょうか?

すごく単純で、使用する文脈ごとに UXとCXを使い分ければよいのではないでしょうか。

例えば、システム開発を行う立場からすると、システムを使う対象者を「ユーザー」と表現するのがしっくりきます。この場合、ユーザーに提供するサービスが「タンジブル」という特徴があります。タンジブルとは「具体的・物理的」という意味で、実際に「触ることができる」という文脈で使われることが多い表現です。

一方、対象者が製品やサービスを使わないケースもあります。例えば、ホテルで接客をするケースでは、接客する対象者を「お客様・顧客」と表現するのがしっくりきます。この場合、顧客に提供するサービスが「インタンジブル」であるという特徴があります。インタンジブルとは「抽象的・非物理的」という意味で、実際に「触ることができない」という文脈で使われることが多い表現です。

また、経営者の立場からすると、経営戦略の観点で考えることになります。この場合、「タンジブル」なサービスを対象者に提供する場合であっても、企業と顧客という視点で対象者を位置づけるため「お客様・顧客」という表現がしっくりくることが多いと思います。

UX*CX

このように、それぞれの「立場」で、対象者に適した表現をすればよいのではないでしょうか。タンジブルなサービスを提供する対象者は「ユーザー」で、そのユーザーに提供する体験の価値は「UX」。インタンジブルなサービスを提供する対象者は「顧客」で、その顧客に提供する経験の価値は「CX」。そして、経営者がお客様に体験・経験の価値を提供する文脈では「CX」を使う、といった感じです。

時の経過とともにUXやCX の概念や定義も変わっていくと思いますので、その時代のUXやCXをとりまく背景を考慮し、コミュニケーションする相手に対して違和感なく「体験・経験の価値」が伝わることが最も重要ではないでしょうか。


(参考文献)

*1) 長谷川 敦士, 「CXとUX」, HCDコラム, 2015.7.31
http://www.hcdnet.org/hcd/column/cxux.php
*2) 仙波 真二, 「流行語とUX」, UXコラム, 2014.1
https://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/technical/uxcolumn/ux201401.html
*3) 「UX白書, 2011.2.11」から抜粋&要約
http://www.allaboutux.org/uxwhitepaper
http://site.hcdvalue.org/docs (日本語訳)
*4) 竹政 昭利, 「サービスデザインにおける顧客経験価値の考察」, Webマガジン, 2014.5
http://www.ogis-ri.co.jp/rad/webmaga/rwm20140501.html
*5) 宗平 順己, 「UXを考える その3 顧客経験価値を実装する」, Webマガジン, 2013.9
http://www.ogis-ri.co.jp/rad/webmaga/rwm20130904.html

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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