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「システム導入後の効果の評価」
株式会社オージス総研

2016年02月号
  • 「システム導入後の効果の評価」
株式会社オージス総研   小山 孝司


1. はじめに

システム導入は比較的大きな投資をする訳ですから、本来、事後にその投資に見合う効果が得られているかを評価しなくてはなりません。しかしながら、大きなトラブルもなくシステム導入ができれば大成功、後は利用状況調査や使い勝手のアンケート等による改善で運用定着を図る程度が精々で、投資対効果をきちんと評価している事例はまだまだ少ないように感じます。
これは、投資の部分は発注金額や開発費用として明確なのに対して、効果の部分は売上増加とか業務効率の向上等の定性的な表現が多く、定量的に評価しづらいのも一因だと思います。投資決定の際には費用対効果についても上申している訳ですが、十分吟味された定量的な目標設定になっていないケースも多く見受けられます。

2. システム導入(IT化活動)の位置付け

図1.はITコーディネータ プロセスガイドラインVer.2.0の「IT経営プロセスのフレームワーク」です。IT経営とは、「経営環境の変化に合わせた経営改革と、ITサービス利活用により、企業の健全なる持続的成長を導く経営手法である」と定義されています。
情報システム部門やITベンダーは、ややもするとこの図の「IT化活動」、それも「IT資源調達」~「IT導入」の辺りのみを業務の対象にしがちですが、本来は、企業に「IT経営への認識」があり、その下で、目標達成のために業務プロセスの見直しを行う「経営改革活動」と、手段として新業務プロセスを支える「IT化活動」が両輪で動く必要があります。
本稿の主題の「システム導入後の効果の評価」は、この図の「IT戦略(評価)」と「経営戦略(評価)」に当たります。

IT経営プロセスのフレームワーク (出典: ITCプロセスガイドラインVer.2.0)
図1. IT経営プロセスのフレームワーク (出典: ITCプロセスガイドラインVer.2.0)

3. 効果の評価と目標設定

効果の評価については、IT利用率が目標以上か、ユーザの満足度が高いかというようなIT利用観点の評価だけでなく、業務プロセス見直し時に設定する経営(事業)観点、業務観点の目標を達成できているかも合わせて評価する必要があります。
各観点の目標は、図2.に示すように、下位目標を達成すれば上位目標が達成できる、というように目標を継承することが大事です。
また、IT利用観点だけではなく、業務観点、経営(事業)観点の目標値についても、モニタリング可能な仕組みをシステムに実装しておくことが重要です。

目標の継承 (出典: ITC IT経営体感ケース研修【マネジメントコース】テキスト)
図2. 目標の継承 (出典: ITC IT経営体感ケース研修【マネジメントコース】テキスト)

目標の継承について例を見てみましょう。図3.に示す「BSC(バランスト・スコアカード)戦略マップ」の事例では、最上位の目標(KGI)に「収益性の年成長率30%」を設定しています。これは結果指標ですので、それを実現するために経営(事業)観点、業務観点、IT利用観点などの中間的な目標(KPI)を設定し、モニタリングすることが必要です。上記事例では、経営(事業)観点の目標に「リピート客の割合70%」、「定刻の発着率1位」など、業務観点の目標に「地上滞在時間30分」、「定刻出発90%」など、IT利用観点の目標に「係員の配置システムの利用100%」などを設定しています。

4. 施策と効果の因果関係の確認

目標設定が大事だということを述べてきましたが、そのためには「経営改革活動」として、どのようにして最上位の目標を達成するのか、というストーリーとそれを構成するアイデア(施策)の検討が必要です。この施策の因果関係(ストーリー)を整理するのを強力に助けくれるツールが図3.に示すBSC戦略マップです。
「財務の視点」、「顧客の視点」、「内部プロセスの視点」、「学習と成長の視点」の4つの視点で施策とそのつながりを記述します。検討時は上から下へ、検証時は下から上へとたどって、目標が継承されているか、実現可能性は十分かなどを検討します。
「財務の視点」、「顧客の視点」が経営(事業)観点、「内部プロセスの視点」が業務観点、「学習と成長の視点(情報資本)」がIT利用観点に対応します。
ここでは、詳細な説明は割愛しますが、Webマガジンのバックナンバーに「BSC(バランスト・スコアカード)を正しく理解する」シリーズがありますので、是非ご覧ください。

BSC戦略マップ(出典:「戦略マップ」ロバート・S・キャプラン、デビット・P・ノートン著、櫻井通晴・伊藤和憲・長谷川惠一監訳 ランダムハウス講談社,2005年
図3. BSC戦略マップ(出典:「戦略マップ」ロバート・S・キャプラン、デビット・P・ノートン著、
櫻井通晴・伊藤和憲・長谷川惠一監訳 ランダムハウス講談社,2005年)

5. まとめ

以上見てきたように、システム導入に際しては、「IT経営への認識」の下で、「経営改革活動」と「IT化活動」が両輪で動く必要があり、それぞれの観点で設定した目標を事後にきちんと評価することが大事だと思います。ご参考になれば幸いです。

・参考文献

[1] 「ITコーディネータプロセスガイドラインVer.2.0」 ITコーディネータ協会、2011年
[2] 「IT経営体感ケース研修【マネジメントコース】(Ver.3.0g)テキスト」 ITコーディネータ協会、2013年
[3] 「戦略マップ」ロバート・S・キャプラン、デビット・P・ノートン著、櫻井通晴・伊藤和憲・長谷川惠一監訳 ランダムハウス講談社、2005年

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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