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「IT-CMFとは何か(3)」
株式会社オージス総研

2016年05月号
  • 「IT-CMFとは何か(3)」
株式会社オージス総研   水間 丈博

■IT-CMFのアーキテクチャ

今回はIT-CMFのアーキテクチャ(構造)をご説明します。
IT-CMFのアーキテクチャは、
"Macro Capability(マクロ・ケイパビリティ)-Critical Capability(クリティカル・ケイパビリティ)-Capability Building Block(ケイパビリティ・ビルディン

IT-CMF

グ・ブロック)"という階層構造をなしており、Critical Capability(CC)とCapability Building Block(CBB)は5つの成熟度が示されます。さら成熟度ごとにPOMsと呼ばれる"プラクティス(Practices)"、"成果物(Outcomes)"、"測定指標(Metrics)"の3点セットでガイドされています。
IT-CMFへの取り組みは、まずこの全体構造を俯瞰することから始まります。(筆者) 。
◆概要
IT-CMFは4つの"マクロ・ケイパビリティ"で構成されており、それぞれビジネスの俊敏性、イノベーション、価値に貢献できるCC(クリティカル・ケイパビリティ)群を包含しています。
さらに各CCは、CBB(ケイパビリティ・ビルディング・ブロック)群で成り立っています。このフレームワークは、それぞれのCBBに対して異なる成熟度レベルを定義しており、現在の成熟度状態のアセスメントを得るために"評価質問集"(Evaluation questions)が用意されています。
各CBBに対し、IT-CMFは成熟度を高められる典型的なプラクティスの数々を提示しており、同時にプラクティスに取り組むことで期待できる成果物と、成熟度の進捗が計測できる測定指標を提供します。
このフレームワークは、組織が様々な活用能力の成熟度を高めようと試みる際に直面する典型的な課題を直視し、これを克服するためのアクションを示します。
以下に、これらすべての要素を説明します。
◆マクロ・ケイパビリティ
IT-CMFの最初のレベルは、ITマネジメントのための4つのキーとなる戦略領域、(マクロ・ケイパビリティと呼ぶ)で構成されます[32]。
(1)ビジネス同様にITをマネジメントする(Managing IT like a business)
(2)IT予算をマネジメントする(Managing the IT budget)
(3)IT活用能力をマネジメントする(Managing the IT capability)
(4)ビジネス価値のためにITをマネジメントする(Managing IT for business value)

組織における効果的なテクノロジーのマネジメントはこの4つのマクロ・ケイパビリティに焦点が当てられ、全般的なビジネス戦略、組織が営まれるビジネス環境、そして組織のITに関わる態勢と整合性が保たれるようになっています。
1.ビジネス同様にITをマネジメントする
組織全体に対するテクノロジーによる貢献度合を最適化するためには、IT機能が専門的なビジネスのプラクティスを使って管理される必要があります。これはテクノロジーそのものの目的としてのテクノロジーから、ITが解決策を提示できる顧客やビジネス上の問題へと焦点を変えることを意味します。この「ビジネス同様にITをマネジメントする」というマクロ・ケイパビリティは、IT機能がコストセンターからバリューセンターへとその位置付けを変えるための構造を提供します。
2.IT予算をマネジメントする
IT予算に関わる経営課題は数多く存在します。そこには例えば、予定外のコスト増額要求、レガシーシステムの保守費用、新技術に対する戦略的投資へのマネジメントの抵抗などが含まれます。この「IT予算をマネジメントする」マクロ・ケイパビリティでは、ITサービスとソリューションへの持続可能で経済的な資金調達を確立し、統制するためのプラクティスとツールに焦点を当てています。
3.IT活用能力をマネジメントする
IT機能組織は、従来、一回限りのITサービスとソリューションの提供者である、とみなされてきました。しかし、ITが継続的にビジネスを改善しイノベーションの推進者としての役割を果たすためには、より能動的に新しく改善されたITサービスとソリューション機能の提供が(提供していると見なされることを含め)必須となります。このマクロ・ケイパビリティは、既存のサービスとソリューションを効果的かつ効率的に維持することと、新たなサービスとソリューションを開発することによりこの役割を担うための系統的なアプローチを提供します。
4.ビジネス価値のためにITをマネジメントする
ITへの投資は、総体的なビジネス上のベネフィットに連携させることが必須です。こうした投資は、単にテクノロジー的なプロジェクトへの投資として捉えるのではなく、組織横断的なイノベーションとビジネス価値を生成するための投資と捉えなければなりません。「ビジネス価値のためにITをマネジメントする」というマクロ・ケイパビリティは、IT機能組織がITへ投資することの正当性を明らかにし、同時にそこから得られるビジネス上のベネフィットを量れるような構造を提供します。

以上の4つのマクロ・ケイパビリティが、ITをマネジメントする方法を最適化するための連続的なフィードバック・ループを形成しています[32]。
(1) ビジネス同様にITをマネジメントする(Managing IT like a business)
では、全体的なIT活用能力に対する方向性を示します。
(2) IT予算をマネジメントする(Managing the IT budget)
では、戦略的方向性が行動とプログラムを促すためのIT予算に落とし込まれます。
(3) IT活用能力をマネジメントする(Managing the IT capability)
は、活用能力を生み出す原動力となり、ここでは2つの基本的行動が遂行されます。一つは既存ITサービスの維持であり、もう一つは新たなITソリューションの開発です。
(4) ビジネス価値のためにITをマネジメントする(Managing IT for business value)
は、これまでの行動とプログラムが確実に価値を生み出すようにします。
これらの実行の成果は、IT予算が有効にビジネス上の価値に活かされているかどうか検証するために「(1)ビジネス同様にITをマネジメントする」へフィードバックされます。
これは、このサイクルが再度回される際に、戦略または戦術を調整する結果になるでしょう。(図1参照)

IT-CMF's MACRO-CAPABILITIES
図1 IT-CMF's MACRO-CAPABILITIES

IT-CMFのマクロ・ケイパビリティのフォードバック・ループは、ビジネスや経営環境の変化によって表出する課題や機会に合致したIT活用能力に、組織が継続的な焦点を置くことを保証します。

●マクロ・ケイパビリティの戦略
組織の活用能力改善プログラムを計画する際には、図2に示すIT-CMFの4つのマクロ・ケイパビリティそれぞれに結び付けられた戦略的目的が参考になるでしょう。これは組織が焦点を当てるべきクリティカル・ケイパビリティを特定する際に役立ちます。その他考慮されるべき要素には、ITの態勢、課題の背景、業界の動向、ビジネス戦略等が含まれます。(このトピックに関する深い議論は[14][32]を参照のこと)

MAJOR STRATEGIES OF IT-CMF's MACRO CAPABILITIES
図2 MAJOR STRATEGIES OF IT-CMF's MACRO CAPABILITIES
※↑タイトルのクリックでPDFが開きます。

●クリティカル・ケイパビリティ
IT-CMFの4つのマクロ・ケイパビリティは、図3で示すモジュール型ライブラリともいえる35個のクリティカル・ケイパビリティを包含しています。([33]で適用されている)
これらのクリティカル・ケイパビリティは、ITが実現するビジネス上の価値とイノベーションを計画し提供する際、組織によって考慮されるべきマネジメント領域を示しています。

IT-CMF's MACRO CAPABILITIES AND CRITICAL CAPABILITIES
図3 IT-CMF's MACRO CAPABILITIES AND CRITICAL CAPABILITIES
※↑タイトルのクリックでPDFが開きます。

■おわりに

今回でIT-CMFの概要紹介を終わります。
IT-CMFは、IT活用能力を改善するための方法論ではなく、フレームワークの一つです。歴史はまだ浅いですが、それは近年のデジタル社会の進展が要請するIT部門への期待が、多くのIT組織が直面する従来の使命や期待成果から乖離しつつあるという現実の直視と危機意識が発端となっているためともいえます。この短期間の間に多くの各界の英知が結集され、今なお研究に基づく改善が進められています。例えば、現在35個のCCで通常の組織なら十分課題領域をカバーできると考えられますが、IVIではCCレベルで今後追加することも検討しています。
IT-CMFの高い理念に基づくITマネジメント領域の網羅性とそこに盛り込まれた数々のサジェスチョンやガイダンスは、日本でも多くのIT部門が抱える課題に必ず役立つものであると信じます。
詳細につきましては、ぜひ原典の『IT Capability Maturity FrameworkTM(IT-CMFTM) The Body of Knowledge Guide』をご参照ください。(筆者)
(注) ここでは、特に必要と判断した場合を除き、基本的にIT-CMFで使われている用語を以下の通り訳しています。(これは一部であり、今後改訂する可能性があります)
  • Capability:活用能力(CC,CBBおよびDynamic Capabilityは原語のままとした)
  • Maturity:成熟度
  • Artefact(s):創造物
  • Outcome:成果(物)
  • Practice:プラクティス
[参照]
[14] Curley, M., 2006. The IT transformation at Intel.MIS Quarterly Executive, 5(4).
[32] Curley, M., 2007. Introducing an IT capability maturity framework. In J. Cardos, J. Cordeiro and J. Filipe (eds.)Enterprise Information Systems. Berlin: Springer.
[33] Curley, M., 2008.The IT capability maturity framework: A theory for continuously improving the value delivered from IT capability.Ph.D. National University of Ireland, Maynooth.
[原典] Curley, M., Kenneally, J., and Carcary, M (Eds.)., 2015. IT Capability Maturity FrameworkTM(IT-CMFTM) The Body of Knowledge Guide. IVI(Innovation value Institute). Van Haren Publishing.
(c)IT-CMFはInnovation Value Instituteの登録商標です。
その他、記載されている会社名、団体名等は、各社の商標または登録商標です。
オージス総研は、IVIの正式メンバーシップ企業です。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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