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BRMS 「ビジネスルール」の現状 ~意思決定モデリングへ~
株式会社オージス総研

2016年05月号
  • BRMS 「ビジネスルール」の現状 ~意思決定モデリングへ~
株式会社オージス総研   林 公恵

2012年3月15日号の日経コンピュータの特集「超高速開発」が日本を救う」で「ビジネスルール特化型」としてBRMSが取り上げられたのをきっかけに、「今話題のBRMS、 「ビジネスルール」とは」でビジネスルール管理システム(BRMS)について投稿しました。3年後日経コンピュータでは2015年10月1日号で「超高速開発」が特集され、BRMSは超高速開発ツールの一部の「業務モデル作成支援」ツールとして紹介されていました。この記事では全体を生成する超高速開発ツールに焦点を当てていましたので、あれから4年後のBRMSに関する状況を見てみることにしました。

まず、BRMSの普及状況です。

■BRMSの普及状況

2015年12月のITRの市場動向調査の国内販売元のベンダーのBRMS製品売上金額推移は、2013年度は1,360百万円、2014年度は1,650百万円、2015年度(予測値)は1,940百万円。2014年度は21.3%増、2015年度は17.6%増(見込)で、市場は「高成長」。また、業種別では、「金融」が一番大きいですが、2014年度では「通信」「サービス」「製造」、2015年度(予測値)では「製造」「サービス」が全体の伸び率を大きく上回っています。

BRMS市場:業種別売上金額
図1.BRMS市場:業種別売上金額
出典:ITR Market View:システム連携/統合ミドルウェア市場2015 (2015年12月発行) を下に筆者がグラフ化

一方、2016年3月のITR「BRMS調査」でのユーザ企業への調査の結果は、図2のとおりでした。
BRMS製品の現在の利用率(「利用中」と「検証中または限定的な範囲で利用中」の総計)は全体では22%で、30%を超える業種は「金融・保険」「運輸」。
また今後利用予定(「1年以内に利用する予定」と「2~3年以内に利用する予定」の総計)は全体で5%、10%を超える業種は「建設」「公務」。
それに対して、導入検討予定なしや検討するかどうかわからないは全体で28%、単語の意味がわからないは全体で28%。
なお、現在利用しているBRMSに対する満足度は、「非常に満足している」37.5%・「満足している」50%。

BRMS製品の検討/利用状況
図2.BRMS製品の検討/利用状況
出典:ITR「BRMS調査」(2016年3月調査)
※↑タイトルのクリックでPDFが開きます。

これらの調査結果より、
業界としては「金融・保険」が一番大きいが、全ての業務にルールがあるため、利用業種が拡大中である
今後利用予定は高くなく大幅な利用拡大は見込めないようだが、「単語の意味がわからない」が28%と、BRMSの認知度が未だ低いため、検討すらされていないと考えられる
現在利用しているBRMSに対する満足度は概ね高く、評価されている
と言えます。つまり、BRMSは利用すれば満足度は高いので、BRMSの有用性を知ってもらう啓蒙活動が更なる利用拡大につながると思われます。

次に、ビジネスルール記述に関連した標準化の動きです。

■意思決定モデルの表記法の標準化

2014年に、米国OMG(オブジェクト・マネジメント・グループ)から、ビジネスルールを拠り所とする業務上の意思決定の構造を表記するための標準であるDMN(Decision Model and Notation)(※1)が発表されています。2015年12月にはその改訂版DMN1.1も発表されています。この意思決定モデリングは、ビジネスアナリシスの知識体系であるBABOK(R)ガイド v3(※2)でも新たにテクニックとして取り上げられています。BABOK(R)ガイド v3については2015年8月号「BABOK(R)ガイド v3概要」を参照ください。

意思決定モデルは、ある特定の意思決定をするためのデータと知識をどのように組み合わせるかを示すもので、ビジネスルールの発生源を明らかにします。
図3が意思決定のモデリングです。一番上位の層は、業務プロセスのBPMN(ビジネスプロセスモデリングと表記法)です。BPMNでは、意思決定が必要なタスクを定義し、そのタスクにはアイコンが付されています(図3の赤で囲ったタスク「Decide routing」)。DMNは、その意思決定タスク内の構造のモデリングとその表記法です。

DMNは、意思決定要件レベル(Decision Requirements Level)と意思決定ロジックレベル(Decision Logic Level)から構成されています。
1つ目の意思決定要件レベルは、意思決定要件グラフ(DRG)もしくは意思決定要件ダイアグラム(DRD)で表記されます。DRGは、対象とする業務領域(1つ以上の意思決定タスク)における意思決定要件の全体像をモデル化するもので、DRDはDRGの特定の側面をモデル化するものです。DRDは意思決定ロジックのためのタスク、それらの相互関係、およびそれらの要求を、4つのノード「意思決定」「ビジネス知識」「インプットデータ」「知識ソース」と3つの要求「情報要求」「知識要求」「権限要求」で定義します。DRDの構成要素は、表1「意思決定要求ダイアグラム(DMN)の構成要素」を参照ください。
2つ目の意思決定ロジックレベルは検証や自動化するのに必要十分な詳細さで定義し、デシジョンテーブルやデシジョンツリーなどで表記します。

意思決定のモデリング
図3.意思決定のモデリング
引用:Decision Model and Notation Version 1.1 RTFのFigure 1を一部筆者加筆

表1.意思決定要求ダイアグラム(DMN)の構成要素
意思決定要求ダイアグラム(DMN)の構成要素


このDMNの用途は3つあります。
1つ目は「人間による意思決定をモデル化すること」です。人間が意思決定するために相互依存している情報や知識の関係を可視化することができます。なお、BRMSなどで管理されたビジネスロジックもその要件を決定するのは人間ですので、これに当たります。
2つ目は「自動化される意志決定の要件をモデル化すること」です。ビジネスプロセスでは一般的に人間の意思決定と自動化する意思決定が組み合わさっています。それらをビジネスプロセスモデルとDMNと意思決定ロジックの3層にマッピングすることで自動化するための意思決定の要件を明らかにすることができます。
3つ目は「自動化される意志決定を実装する」ことです。意思決定を自動化するためにはインプットになるビジネス知識であるナレッジをメンテナンスする必要があります。DMNがそのナレッジをメンテナンスための適切なインターフェースをデザインし実装するサポートを行うことができます。
将来外部データでナレッジメンテナンスが自動的に行えるようになると、人手を介することなくビジネスルールなどのビジネス知識が更新されることになり、状況の変化を適切に反映した意思決定の自動化が行えるようになるでしょう。これは大量に発生するセンサーデータを解析し、状況に合わせて適切に判断をする必要があるIoT(Internet of Things)には不可欠で、データを自動的に学習してその結果をもとに様々な判断や診断を可能にする機械学習につながると思います。

■さいごに

プロセスの中に記述していたビジネスルールを、プロセスから切り離してBRMSで管理することで、頻繁に変更されるビジネスルールをメンテナンスすることが容易になりました。ビジネスルールはプロセスから呼び出されることでプロセスとビジネスルールは連携しましたが、ビジネスルール(ビジネス知識)の知識ソースはそこでは意識されていませんでした。しかし、ビジネスプロセスとDMNとビジネスルールなどの意思決定ロジックの関係を意思決定モデリングすることで、意思決定を自動化できる可能性が見えてきました。

BRMSを導入することで、「制度対応に素早く対応できた」「新商品に伴うシステム追加の費用・期間が削減できた」「システムの専門家でなくてもビジネスルールの追加設定や修正が容易」と、どちらかというと新規開発よりも保守に成果が出ています(2016年3月のITR「BRMS調査」)
BRMSのルールエンジンとしての性能は上がってきており利用すればBRMSの満足度は高いとの調査結果ですので、現在の業務プロセスの中で将来意思決定を自動化したいと考えている業務について、まずビジネスルールをBRMSで管理することから始めてみてはいかがでしょうか。

※1: 意思決定モデルと表記法Decision Model and Notation Version 1.1 RTF
http://www.omg.org/spec/DMN/1.1/Beta/
※2: BABOK(R)ガイド(A Guide to the Business Analysis Body of Knowledge) カナダのトロントに本拠を置くNPO法人 International Institute of Business Analysis (IIBA) が発行しており、ver3の日本語翻訳版は2015年IIBA日本支部より発行されている。
http://www.iiba-japan.org/

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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