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「IoT時代のITとは」
株式会社オージス総研

2017年05月号
  • 「IoT時代のITとは」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

1.はじめに

ドイツではインダストリー4.0、アメリカではインダストリアルインターネットなどプラットフォームの大変革が進んでいます。
デジタルビジネス化は着々と進み今後はIoT(Internet of Things)によりあらゆる"モノ"がインターネットにつながっていきます。このIoTの時代ではITをどのように考えていくべきでしょうか。よく耳にするのはセンサーで収集されたBigデータをAIで分析し活用するという話です。それだけで良いのでしょうか?もう少しITとビジネスモデルとの関係を考慮する必要があるのではないでしょうか?

2.IoT時代のビジネスモデル

Uberはご存知の通り一般人が空き時間を活用して自分の車で他人を送迎するサービスです。利用者はスマートフォンなどでドライバーを検索し車を呼びます。見ず知らずの他人の車に乗るのは不安でしょうから利用者はドライバーの評価を見て判断、選択することができます。
AirbnbもUberとよく似たビジネスモデルとなっています。Airbnbは一般人が自分の所有する空き部屋を宿泊用に貸し出すものです。利用者はスマートフォンなどで部屋を検索して予約することができます。UberもAirbnbもシェアリングエコノミーの考え方をベースにしたビジネスモデルと言えるでしょう。
ITの側面からだけみると、既存のタクシー会社もUberと同じようにスマートフォンなどで車を呼ぶことができます。そして、ほとんどのホテルもAirbnbと同じようにスマートフォンなどで宿泊予約ができます。そのためITの側面からだけ考える人は、同じようなサイトで同じように予約が出来るので既存のサービスも最近登場したUberやAirbnbも変わらないと思うかもしれません。
ITが提供している機能に注目して、既存のサービスとUberやAirbnbを比べた場合、最も大きく異なる点は、それらの機能により提供しているサービスとビジネスモデルとの関係にあります。
既存のタクシー会社はスマートフォンが無かった時代からタクシーの配車というビジネスモデルを確立しています。インターネットやスマートフォンが普及するとそれに合わせて後追いでITを利用してビジネスモデルの拡張をしていきました。
一方Uberはこのビジネスモデルを作るまでタクシー業務を行っていませんでした。このビジネスモデルを考えるのと同時並行してスマートフォンでドライバーを登録したり利用者が検索をしたりドライバーを評価する仕組みを作っています。ビジネスモデルはITを前提(プラットフォーム)として織り込んでおり両者は不可分の関係にあります。
Airbnbも同様です。自身は部屋を所有せずに誰かの空き部屋を利用するというビジネスモデルとITによる貸し手と借り手双方が簡単に利用できる仕組み、この2つはほぼ同時に考えられたのでしょう。
このようにUberやAirbnbはビジネスモデルにITが当然のものとして織り込まれているのに対し、既存のタクシー会社やホテルはまずビジネスモデルが先にあり、その後インターネットやスマートフォンの普及に伴いITによる便利な仕組みを追加していった、という違いがあります。
もしスマートフォンやIoTがなかったらUberやAirbnbのようなビジネスモデルは考案されることはなかったでしょう。また考案されたとしてもスマートフォンやIoTを使わずに展開していくのは難しかったでしょう。
今やビジネスモデルとITは同時に考えられています。
今までのようにビジネスモデルありきでITを考えていくのでは、時代に取り残されてしまうでしょう。これからビジネスモデルを考えるには、最新のITでどのようなことができるのか理解している必要があります。もちろんITを考える際にはビジネス領域の知識は不可欠です。

ITとビジネスモデルとの関係の変化
図1. ITとビジネスモデルとの関係の変化

3.新しいビジネスモデルの創出

では、このITも含めた新しいビジネスモデルをどのように創出していったら良いでしょうか?
タクシー会社の場合は、スマートフォンが普及してくれば、利用者から「電話でなくて、スマートフォンでタクシーを呼べたら便利だな」などの要望が出たでしょう。そういった要望を注意深く拾っていれば、そのニーズに対応できたでしょう。
利用者は、業者ならともかく全くの見ず知らずの赤の他人の車に交渉して乗せてもらいたい、と思わないでしょう。けれども様々な条件が整えば、喜んで乗りたいと考えるようになります。たとえば、「すぐに利用可能」、「安心に安全に利用可能」、「明朗会計」などの条件が満たされれば、既存タクシー会社にひけをとらないサービスと言えるでしょう。
普通は「赤の他人の車に乗りたい」と大胆かつ危険なことは言わないですし、あちこちに使われずに駐車されたままの車が多数存在していることや、街を走る車に運転者が一人しかいない状況を目にしていても、タクシー会社にそれらを組織化してビジネス展開するように進言することはありません。
そのため、この新しいビジネスモデルを創出する上で、既存のタクシー会社やホテルが優位ということはありません。利用者自身が自覚していない要望(インサイト)を捉えることができれば、ベンチャー企業でも、従来のビジネスモデルを持つ既存の企業を凌ぐ実績をあげることができます。
利用者自身が自覚していない要望(インサイト)を発見することこそが、新しいビジネスモデル創出の軸となる不可欠の要素です。このインサイト(洞察)を発見し、解決策を考える手法が、サービスデザイン思考です。このインサイト(洞察)をしっかりと捉えておかないと、いくら技術があっても開発者の独りよがりのサービスや製品が出来あがるだけです。

4.まとめ

IoT時代に新しく登場する技術を使えばこれまでにない全く新しい製品やサービスを提供するビジネスモデルを創出できる可能性があります。
そしてビジネスモデルとITは同時並行で考えていく必要があります。ビジネスモデルとITの関係はより密接になっていきます。
だれもまだ考えていないビジネスモデルを創出するには、利用者自身が自覚していない要望(インサイト)を考える必要があります。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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