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「スマートグリッド社会成熟度モデルと人工知能」
株式会社オージス総研

2018年01月号
  • 「スマートグリッド社会成熟度モデルと人工知能」
株式会社オージス総研   乾 昌弘

1.はじめに

(1)特に住宅地域を対象にスマートグリッド社会に向かう目標として、2009年度に「スマートグリッド社会成熟度モデル」を作成し、2010年度より学会発表及び本Webマガジンで連載いたしました。連載中に東日本大震災が起こり、その後、日本の人口が減り始めました。言葉は古くなったかもわかりませんが「スマートグリッド社会」を真剣に考えるべき時に来ていると思います。
(2)ここでは、「スマートグリッド社会成熟度モデル」の概要を述べ、人工知能などの先進技術との関連について説明したいと思います。

本テーマの経緯図
図1.本テーマの経緯

2.スマートグリッド社会成熟度モデル(文末の表を参照)

2-1.概要

(1)何を大項目にするかを「システムの視点」を参考に「スマートグリッドの視点」を決めた。熱源もエネルギーをたくさん持っているため重要である。
(2)一般に、「スマートグリッド」は関係する要素を巻き込みながら、スマートエネルギー、スマートシティなどの言葉に変わってきている。いずれにしても東日本大震災後は、より一層重要になっている。

表1.5つの視点
5つの視点

2-2.特徴

(1)5つの大項目(視点)に関してレベル1~レベル5の5段階に分け、満足すべき定量的・定性的な内容を定めた。
(2)さらに電力に関して、大項目「時間帯別料金」「蓄電」を加え、実施すべき施策・方策を定めた。
(3)内容は改定していないが、基本的な考え方は今も有効であると考えている。

2-3.レベル3の特徴

 レベル3で、キーとなる内容が登場する。
(1)電力の「時間帯別料金」が設定される。HEMSでスマート家電の「時刻や優先順位設定」が可能となる。
(2)「情報アドバイス提供サービス」が実施される。自宅の消費量が類似家庭と比較できる。「省エネアドバイス」を受ける。など
(3)電気自動車を中心とした「蓄電」が普及している。など
   (詳細は下記参照)
「スマートグリッド社会成熟度モデル Part3(第3回)」

3.エネルギーシステムと人工知能

(1)過去の実績値を機械学習して、予測を行うことが基本である。これによりシステム全体を最適化(あるいは準最適化)することが目標。下記に具体例を示す。
(機械学習の詳細は下記参照)
「<オージス総研をとりまく>人工知能技術の過去と現在(4)」
(2)電力の場合は大量に蓄積することが難しいため、「時間帯別料金制度」との併用が効果的である。
(制度の詳細は下記参照)
「スマートグリッド社会成熟度モデル Part3(第4回)」

機械学習による最適化
図2.機械学習による最適化

3-1.機械学習によるパターンの把握

(1)グーグルが買収したNest。「Nest製ラーニングサーモスタット」は、家全体の温度調整を行う。
○最初は手動で設定するのであるが、家に人がいる時間帯を自動で学習する。例えば、長時間不在なのにエアコンがオンになっていたら、自動的にオフにしてくれる。アメリカならではの状況であろう。
○さらに、クラウド上にデータを蓄積。需要予測とピークカットにより、節約費用の一部を利用者に還元する。

図3.Nest製ラーニングサーモスタット
図3.Nest製ラーニングサーモスタット
https://nest.com

(2)「家庭用燃料電池エネファーム」は、その家庭の生活パターン(約1か月間の「電気」と「お湯」の使用量や使用時間帯)を学習して、省エネになるように制御を行っている。
○具体的には、(A) 夜9時にたくさんのお湯を使う (B) 朝の時間帯から電気を一定量使っている場合、入浴までに必要なお湯を作るため、朝9時のタイミングで発電を開始する。(午前9時までは買電を使う)

機械学習を取り巻く関係図
図4.エネファームの学習機能
http://home.tokyo-gas.co.jp/living/enefarm/panasonic/index.html

3-2.ディープラーニングによる電力需要予測(参考文献1)

(1)時系列データを扱うRNN(Recurrent Neural Network)を使用している。
(RNNは下記も参照の事)
論文紹介 A Recurrent Latent Variable Model for Sequential Data」
(2)「電力使用量」「気温」「湿度」の1時間単位の時系列データを入力し、その後の電力消費量の傾向を予測する。
(3)5~10時間程度先は良い精度で傾向予測が可能である。

3-3.ニューラルネットワークによる太陽光発電予測システム(参考文献2)

(1)ニューラルネットワークの入力データは実測値として「地点情報」「時間情報」「設備情報」「天気情報」「発電電力」など、予測パラメータとして「予測対象時間」「天気予報」がある。
(2)「予測値」を結果として出力する。

太陽光発電予測
図5.太陽光発電予測

4.Connected Industriesについて(参考文献3)

4-1.目的

(1)経済産業省が推し進めており
(A) 様々な業種、企業、機械データ等が繋がって
(B) AI等によって、新たな付加価値や製品・サービスを創出、生産性を向上させ
(C) 高齢化、人手不足、環境・エネルギー制約などの社会課題を解決する。
(2)「スマートグリッド社会」を支える重要な基盤となりえると考えている。

4-2.概要

(1)5つある重点分野のうち「プラント、インフラ保安」「スマートライフ」が本テーマに関係する。
(2)「保安」はSustainableな社会に必須のもので、電力分野での取り組み例では、異常予兆の把握や自動点検がある。
(3)「スマートライフ」を実現するためには、ライフに関するデータの有効活用が必要である。

「参考文献」

1. 日本IBM 水谷好伸「ディープラーニングの概要と活用事例」Minskyで実現するディープラーニングの世界、2017年7月
2. FKAIR 尾藤美紀「AI(人工知能)が変える太陽光発電システム」 第2回スマートエネルギー推進セミナ、2017年9月
3. 経済産業省「Connected Industries」東京イニシャティブ2017、2017年10月
4. 乾昌弘、他「低炭素社会をめざしたスマートグリッド社会成熟度モデル」経営情報学会2010年春季全国研究発表大会、2010年6月
5. 乾昌弘、他「スマートグリッドが与える社会システムへの影響についての考察」2010年日本社会情報学会合同研究発表大会、2010年9月
6. 乾昌弘、他「スマートグリッド社会成熟度モデルと課題整理」経営情報学2011年春季全国研究発表大会、2011年5月

「余談」

(1)電気自動車
EVの方がガソリン車よりも自動運転に対して、反応が早いと言われている。

表2. スマートグリッド社会成熟度モデル+施策・方策(2009年度作成)
スマートグリッド社会成熟度モデル+施策・方策(2009年度作成)

スマートグリッド社会成熟度モデル+施策・方策(2009年度作成)

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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