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「ムービングターゲットIFRSの対応時期」
株式会社オージス総研

2010年05月号
  • 「ムービングターゲットIFRSの対応時期」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 ムービングターゲットであるIFRSへの対応をいつにすべきか?という論点について考察をします。なお、本文中、意見にわたる部分は筆者の私見であることを予めお断りしておきます。
 米国の証券取引委員会(SEC)は2010年の2月に、IFRSの適用を2015年以降とする声明文を発表しました。当初予定していた2014年から1年遅れたことになります。
 これについて米国がIFRSの適用について、後ろ向きになったと捉えるむきもありますが、適用を遅らせた理由がIFRSへの移行に4~5年かかる為ということであり、これは米国が本腰を入れてより真剣に導入を考え始めたと捉えるべきではないかと思います。
 日本のIFRS強制適用は、2015年か2016年で2014年としていた(2008年11月に公表したロードマップ)米国の1年遅れだったので、米国の状況を参考にすることが可能でしたが、米国が2015年以降にずれ込んだことで現時点ではほぼ同時並行して進む状況になりました。日本は最終的には2012年に強制適用の決定するので、どのようになるかまだ不透明ですが、 日経コンピュータ 2010/3/17号 P35の金融庁総務企画局 企業開示課長 三井 秀範氏の記事によると、
 「米国の動向は日本のアダプションの参考の要因の一つだが、米国の発表によって日本の考え方が変わることはない。」
 「日本は自分たちで判断したうえで進めるというのが基本姿勢だ。」
と述べているので、筆者は引き続き2015年から2016年の線で考えていくのが妥当と考えています。
 冒頭のSECの発表で注目すべきは、SECはIFRSへの移行に4~5年かかると考えている点です。2015年に適用するとした場合、遅くとも2011年には移行を開始する必要があるという計算になります。
 一般に、米国基準からIFRS基準への変更より、日本基準からIFRS基準への変更のほうが移行の作業量は多いと言われており、米国以上に早めに対応したほうが良いのではないでしょうか?
 現在IASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)が、MoU(IFRSと米国基準の間で識別された差異のコンバージェンス(収斂)に関する合意)に基づく作業を進めており、その結果2011年6月には現在のIFRSに大きな変更が加わった次世代IFRSとも言うべきものが出てくると言われています。また、前述したように日本の最終決定は2012年です。そのため、現在は情報収集しておき、2012年の決定を受けてから移行の作業を開始しようと考えている企業が多いようです。しかし、仮に強制適用のスケジュールが2015年か2016年のままとして、移行作業が4~5年かかるとすると、2012年のスタートでは間に合わないということになります。だからといって、“ムービングターゲット”と言われるIFRSの対応を闇雲に開始しても無駄が多く発生する可能性が高くなってしまいます。進めるべきところと待つべきところを見極める必要があります。

IFRS対応のプロセスには、大きく分けると以下のような段階があります。

              IFRS会計基準の理解 と 現状業務の把握
                                           ↓
                            会計基準の適用(会計方針の決定)
                                           ↓
                            システム化仕様の決定

 ここで、IFRSの会計基準が変化するので、「会計基準の適用(会計方針の決定)」も完全には決めることができません。従って「システム化仕様の決定」も決まらないことになります。
 今できることは、「IFRSの会計基準の理解」と「現状業務の把握」です。
 「IFRSの会計基準の理解」について、変化していく最新の情報を収集することは勿論大切ですが、IFRSの原則主義、資産・負債アプローチ、・・・なとIFRS基本的な考え方を押さえておくことが、まずは重要です。
 そして、「現状業務の把握」は、すぐにでもはじめられるのではないでしょうか?
IFRSにおいては業務の実質で判断する必要があります。つまり、形式上決まっている手順ではなく、現場で、実際にどのように作業処理を行っているかを把握しておく必要があります。
 その上で、最終的にどのような会計方針にすべきかを決定していきます。
 「システム化仕様の決定」についても詳細決定はできませんが、システムで行うべきところと人手で行うべきところの切り分けをしておく必要があります。
会計システムの場合、全てを自動化することは難しく、人手に頼るところも多いです。
 しかし、現在でも経理部門は決算時や締め日には業務量作業量が増大し、これ以上人手に頼るのは難しい状況になります。自動化できるところは極力自動化しないと、業務全体としてうまく回らないことになります。
 また、二重帳簿(日本版とIFRS版)や過年度遡及修正などに関しては、システムの基本的なアーキテクチャに関わるところであり、早めに検討を開始しておく必要があります。
 このように、IFRSはムービングターゲットではありますが、対応を開始できるところはあります。霧がはれたときに、1合目から10合目を一気に目指すのではなく、既に霧が晴れているところまでは上っておいて、霧が晴れたところで頂上をアタックするのが良いのではないでしょうか。


*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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