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「デンマークからのアジャイラー」
株式会社オージス総研

2010年05月号
  • 「デンマークからのアジャイラー」
株式会社オージス総研   山海 一剛

 去る23日(金)、名古屋でデンマークからのお客さまをお迎えしてのミーティングがあり、参加して来ました。このイベントについてご報告しようと思うのですが、その前に、まずその背景をご説明する必要があります。そのキーワードは「リーン」です。

 「リーン」という言葉は、「贅肉のない」、「無駄の無い」という意味ですが、もともと日本の「トヨタ生産方式」が海外の生産現場に取り入れられて「リーン生産方式」と呼ばれるようになったものです。さらに2000年代に入り、この考え方がソフトウェア開発に取り入れられて「リーンソフトウェア開発」という手法として発表されました(*1)。これはいわゆる「アジャイル開発」の一派ですが、それ以前にもアジャイルの流派の多くは、直接または間接にトヨタ生産方式の影響を受けているとも言われています。

 トヨタ生産方式を一言で説明することには無理がありますが、「ジャストインタイム生産」、「在庫レス」、「徹底した無駄の排除」といったキーワードが有名です。
 この考え方で在庫とは「まだ顧客に価値を提供していない状態のもの」と定義されます。製品として出来上がっているけどまだ出荷されていないものはもちろんのこと、製品に組み付けられた部品も、まだ組み付けられていない部品も、全て在庫です。そしてこの在庫こそが最大の無駄であると位置づけ、限りなくゼロに近づける。そのためには「必要な都度必要なだけ作る」という「ジャストインタイム生産」を行うわけです。

 ではソフトウェア開発における在庫とは何か?と考えてみましょう。ソフトウェアの場合、まだエンドユーザが使用していないソフトウェア全てを指します。
 つまりテストは終わったけどまだ本番移行していない状態はもちろんのこと、コーディング中の段階も含め、リリースしていないの全ての成果物は「在庫」として位置づけ、徹底して排除すべきと考えます。
 そのためには出来る限り短い周期で開発のサイクルを廻し、重要な機能から順次リリースしてエンドユーザに使ってもらうというやり方。つまり反復開発が基本に位置づけられます。さらにはユーザに価値を提供するものはソフトウェア自体だけであると考えるので、ドキュメントは少なければ少ないほど良いと考えます。

 アジャイルの考え方とトヨタ生産方式の関係を説明すると、ざっとこんな風になります。もちろん他にもご説明しないといけないことはありますが、長くなるので強引にエッセンスだけにしました。

 さて、このように考えると「アジャイルの源流は、トヨタにあり」という見方にたどり着くわけです。そしてデンマークのITコンサルタントやアーキテクトが、アジャイルの源流を辿ろうと毎年企画されているのがこのツアーで、その名も「Roots of Lean Tour to Japan(*2)」。このツアーで彼らが愛知県を訪れる目的は唯ひとつ、トヨタ自動車さんの工場見学でした。でもせっかく愛知まで来てくれたのだからと、工場見学の後、中部地区で活躍するエンジニア、特にトヨタ自動車さんのシステム開発に従事する人々が集って、ミーティングが開催されたというわけです。
 ちなみに引率は今年も「リーンソフトウェア開発」の翻訳者である、チェンジビジョンの平鍋健児氏。名古屋で開催の労をとられたのは、トヨタ自動車OBの黒岩惠氏でした。

 10名以上が参加した去年に比べて、今年はアイスランド火山の影響で先発隊の3人だけになってしまいましたが、遠く北欧の国から、日本オリジナルのトヨタ生産方式に注目し、日本を訪れトヨタ自動車さんの工場見学をする…。
 普段どうしても海外の技術に目を向けがちな、日本のソフトウェア業界の人々にとっては、まさに「目からうろこ」なのではないでしょうか。

 このような事実を是非知って頂きたくて、記事を書くことにしたのですが、背景の説明だけで随分長くなってしまいました。ミーティングの報告は次回にまわします。

[1] 「リーンソフトウエア開発~アジャイル開発を実践する22の方法~」
日経BP社 (2004/7/23); ISBN-10: 4822281930
著:メアリー・ポッペンディーク, トム・ポッペンディーク
訳:平鍋 健児, 高嶋 優子, 佐野 建樹

[2] http://www.rootsoflean.com/

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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