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「「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」について」
株式会社オージス総研

2010年06月号
  • 「「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」について」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 2010年4月23日に金融庁から、「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」が公表されました。
 「全般的事項」11項目、「個別的事項」6項目と「参考」から構成されています。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100423-2.html
 この公表は、大きな話題を呼び、各メディアでも広く取り上げられています。
この発表を肯定的に捉える意見が多い一方で、「そもそも誤解しているのか?」、「「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」に対する誤解がある」、「その公表で誤解は解けたのか」などの意見もあるようです。
 ここでは、「全般的事項」の項目のうち一部について、取り上げて考察をします。なお、本文中、意見に亘る部分は筆者の私見であることを予めお断りしておきます。
 まず、全般的項目の3項目目にこのようにあります。

 「3.全面的なITシステムの見直しが必要か
 (誤解)IFRSになると、ITシステムを含め、業務プロセス全般について全面的に見直さなければならない。
 (実際)既存のシステムの全面的な見直しは、必ずしも必要ではない。
 ○IFRSを適用するために必要な範囲で、システムの見直しを行えばよい。」

 これは、ITベンダ、コンサルティング各社の加熱する売込みに対する牽制の意図が隠されているのではないかと思いますが、どのITベンダ、コンサルティング各社も金融庁の見解に対して肯定的な意見を寄せているようです。つまり、「IFRSになると、ITシステムを含め、業務プロセス全般について全面的に見直さなければならない。」などとは、はじめから言っていないということのようです。
 このようなギャップはどこから生まれるのでしょうか?
 グローバルな世界で、各国の企業とシェア争いをする日本企業は、各国の情報をリアルタイムに収集して、経営の指標として利用するには、システムを利用することが不可欠です。(グローバルと言った段階で、日本企業なのか外国企業なのかは、それほど重要ではありませんが。)
 そしてこれらの企業は既に、グローバル対応のシステムを構築し、さらにライバルに打ち勝つために、日々システムのバージョンアップを重ねているでしょう。
 そして、これらグローバル企業の仲間入りを目指す企業にとっては、既存システムを大幅に改定した戦略的システムを武器に、世界市場に切り込んでいくことになります。そして、そういった企業にとって、IFRSはシステムの大幅改定のきっかけにはなるかもしれませんが、IFRSのためだけに実際にシステムを大幅改定するということはないでしょう。
 上場企業でも、それほど海外との取引がなく、日本国内中心の企業にとっては、IFRSの制度対応は必要になりますが、必ずしも、システムの全面的な見直しは必要ありません。(どこまでの対応が必要かは、調査する必要がありますが。)
 つまり、IFRSの制度的な要求からすれば、システムの全面見直しは必要ありませんが、グローバルまたはそれを目指す企業にとっては、企業戦略として大規模なシステムの見直しが経営サイドの要求として在り得るということになります。
 ITベンダ、コンサルティング各社のメッセージは、どのレベルを目指している企業へのメッセージなのかを理解した上で、誤解しないようにして受け取る必要があります。
 次に、全般的事項の2項目目を見ていきましょう。

 「2.非上場の会社(中小企業など)にもIFRSは適用されるのか
 (誤解)非上場の会社(中小企業など)であっても、IFRSを適用しなければならなくなる。
 (実際)非上場の会社はIFRSを適用する必要はない。」

 とあります。制度的な要求としては、非上場の会社にIFRSを適用する必要ないことに対して異論の余地はないでしょう。しかしこれもその企業が戦略上、IFRS対応が必要か否かは別の話になります。たとえば、中小企業でもインターネットを利用すれば、グローバルな取引もたやすくできてしまいます。それをきっかけにグローバルな事業が拡大するかもしれません。そのような中小企業または、それを目指す中小企業にとっては、IFRSは関係ないものとは言えないでしょう。
 また、中小企業でも親会社が上場している場合には、関係ないと言い切れません。親会社がIFRSの連結をする場合、子会社側は今まで通り日本基準で作成したものを親会社に渡すだけなら問題ないですが、親会社が子会社に対してIFRS版にしたものを作ってこいと言ってきた場合はどうでしょうか。親会社のほうで、システムも含めてグループ全体の面倒を見てくれれば良いのですが、少なくとも子会社の側でも、IFRSの知識は持っている必要があります。これは子会社側のIFRSへの対応が、制度上の要求でもなく、経営上の要求でもなく、親会社の要求として、必要になる場合があるということになります。
 いずれにしろ、企業戦略上、IFRSの対応が最低限の制度対応で良いのか?またそれ以上の対応をする必要があるのかは、各社ごとに見極める必要があります。企業の経営者は、企業戦略として、IFRSが自社にどのような影響を及ぼすのか?また、IFRSが自社にどのように利用できるのか?を検討する上で、IFRSが何者か誤解しないように捉えておく必要があります。その上で、どこまでIFRSに対応すべきかは、各社それぞれ異なる解があり、各社独自に検討決定する必要があるように思います。


*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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