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「BPMとABC(活動基準原価計算)の勧め」

2010.06.06 株式会社オージス総研  宗平 順己

 前号では、ABC(活動基準原価計算)の有効性について説明しました。本号ではABCの応用例としてビジネスプロセスマネジメント(BPM)とABCの組み合わせによる、To-Beプロセスの設計方法について解説します。
 BPMについての詳しい話はまた別の号に譲りますが、当社では業務フローの作成にActivity図を用いています。BPMNで書かないの?と疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、データモデルとプロセスモデルを一つのモデリングツールで管理したいので、UMLを使っているということです。私は、ユーザ部門でのビジネスプロセスモデルの設計では、どちらを使ってもかまわないと思っています。OMGがUMLとBPMNを早く統合してくれれば良いだけのことです。
 話がそれてしまいましたが、このActivity図で用いているActivityとABCのActivityとは粒度が一致します。(ビジネスプロセスモデルの粒度問題についても別の号で解説しますが、きちんと検証した結果です)。
 このことに着目して、リードタイム短縮や業務コスト(ABC的表現での)削減がBSCで設定された場合の、To-Beプロセスモデルの設計の流れを以下、簡単に示します。(またまた余談ですが、BSCとABCはどちらもKaplan教授がまとめられたものです。以前に櫻井教授らとともにHarvardでKaplan教授と直接対談した時に確認したのですが、BSCとABCはペアで使うものです。BSCについての最新の話題についても、次号でご紹介する予定です。)
 さて、図1はAs-Isのビジネスプロセスモデルです。

As-Isビジネスプロセスモデル
図1 As-Isビジネスプロセスモデル

 この図の左側がActivity図で図右側の表は、図中のActivityを取り出して、ABC計算をしたものです。ワークフロー全体のスループット時間と業務コストが示されています。
 次に、このワークフローの改善の検討を行います。表-1がその検討結果で、ABCで提案されているアクティビティの付加価値分析を行っています。

表-1 付加価値分析
付加価値分析


 この付加価値分析では、各アクティビティについて、まずその処理を行う必要があるのか、残すのであれば人手でするべきなのかシステム処理させるのか、人手でするなら誰がするのが効果的で経済的なのかといったことを検討します。リーンに通ずるところがありますね。
 さて、この検討結果を反映して作成したのが図-2です。Activity図で青い列が追加されていますが、これはシステムが処理する部分です。ちなみにシステムの列のActivity は、システムユースケースとなって、システム部門に引き継がれることなります。また図-2の右側にはAs-Is同様、新プロセスに対してABC計算をした結果が示されています。

To-Beビジネスプロセスモデル
図-2 To-Beビジネスプロセスモデル

 As-IsとTo-BeのABC計算の差異が図下部に示されています。この図ではワークフローを1回完了するにあたってのスループット時間と業務コストの低減値が示されています。業務コストは年間で想定される処理件数を掛けると年間の総削減コストが算出されます。
 このようにして算出されたものがBSCで設定されたKPIをクリアしていれば、To-Beプロセスは合格となりますが、もし達成できない場合は、付加価値分析から再度見直し、KPIをクリアするまでこのタスクを繰り返します。
 さて、BPMはビジネスプロセスをPDCAサイクルを回して良くしていくことが主目的の一つにあります。したがって、To-Beプロセスを設計するだけでは不十分であり、実装後のモニタリングが必要となります。
 そのため、To-Beで設計されたABCの値はそのままBAMに引き渡されしきい値としてモニタリングされることになります。


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