Webマガジン
「マス・カスタマイゼーションとBPOサービス」
株式会社オージス総研

2010年06月号
  • 「マス・カスタマイゼーションとBPOサービス」
株式会社オージス総研   宗平 順己

 前号では、マス・カスタマイゼーションの概要を紹介し、SaaSやSOAはマス・カスタマイゼーションそのものであるということを述べました。
 本号では、BPOサービスのマス・カスタマイズ化について述べます。

1.対象となるBPOサービスの概要

 マス・カスタマイズ化検討の対象となるBPOサービスの概要を示したのが図1です。
 インターネットおよびカタログでの通販会社において書類によるクレジットでの引き落とし依頼を受け付けるにあたって、申込書を元にしたデータ入力と信用調査、データベース更新作業をアウトソーシングしています。
 この関係を示すために、サプライチェーンモデル図という表記方法を用いています。

BPOサービスのサプライチェーンモデル図
図1 BPOサービスのサプライチェーンモデル図

2.マス・カスタマイズ化検討の必要性

 このようなBPOサービスは従来からあり珍しいものではないですが、受託側のサービス会社には、次のような課題があります。

  1. おおよその業務の流れは顧客毎に違いがないが詳細レベルでは個々の要求の違いがあり、業務の共通化ができない。
  2. 顧客ごとに受け取る帳票のフォーマットが異なり、入力やチェックの標準化ができない。
  3. 顧客要求によっては、入力だけでなく他の業務もさらにアウトソーシングすることもある。
  4. アウトソーシング先は複数あり、案件に応じて委託先を変更し、トータルコストを削減したい。
  5. 作業者は社員ではなく派遣やパートであり、必要以上の業務知識を要求できない。

 これらに対応するにあたって、現状ではモジュール化の検討を経ないままに「共創のカスタマイズ」すなわち、案件ごとに個別カスタマイズを実施しているため、サービスの供給側、需要側ともにアウトソーシングの経済的なメリットを十分に享受しきれていないと指摘することができます。
 このため、図1に示しているサービス業務のモジュール化の検討が必要となりますが、加えて、前回ご紹介したSaaSの例でも明らかなように[1]、順応のカスタマイズが可能になると、需給双方の業務コストが削減され、低コストでのサービス提供が可能となります。

3.マス・カスタマイズ化の検討

3.1モジュール化の粒度の検討

 さて、検討対象となっているBPOサービスについて、担当者へのヒアリングをもとに作成した業務フロー(アクティビティ図)が図2です。

業務フローの例
図2 業務フローの例

 この図に示すように、担当者レベルで業務フローを作成するとオペレーションフローになり、レベルが細かすぎて、モジュール化の検討ができません。
 SCORにおいても主張されていますように[4]、業務プロセスはあるレベル以下になると、企業によってあまりにも手順が異なり、標準化ができないものです。
 このため、図2に示すレベルよりももう一段高いレベルでの業務フローを作成し、モジュール化の検討が可能かどうかを検証する必要があります。

3.2 モジュール化の検討

 以上の観点から、プロセスの階層を上げて作成した業務フローが図3です。

モジュール化検討のための業務フロー
図3 モジュール化検討のための業務フロー

 この図によって、モジュール化の3原則のうち、「(1)製品デザインのモジュール化」の第一段階について対応可能となります。BPOサービスのデザインは、個々の業務をどこで行うのかといったことをまず検討するのですが、図3のアクティビティ図においてこの「業務の配置」の検討を行うことができます。
 ただ、これだけではどのように業務を処理するのかの検討はきません。個別の業務処理内容の検討にあたっては、図2に示す詳細さが必要となります。
 図4はこの対応を図ったもので、図3に示した各々のアクティビティに対し、サブアクティビティを複数定義し、各サブアクティビティについて、図右にあるようにサブアクティビティ図を定義してあり、設計にあたっては最適なものを選択することにより、(2)製造工程デザインのモジュール化をも実現しています。

製造工程デザインのモジュール化の検討
図4 製造工程デザインのモジュール化の検討

 

4.まとめ

 本稿では、BPOサービスに対して、マス・カスタマイゼーションの適用を検討し、主に、(1)製品のモジュール化、(2)製造工程のモジュール化について検討しました。
 次回の掲載では、このモジュール化のしくみを背景として、より付加価値の高いBPOサービスを提供するしくみをご紹介します。

 (参考文献)
[1] 宗平順己、 「マス・カスタマイゼーションのサービス事業への適用についての考察」、 生産管理学会2008年春季大会予稿集、 2008、 pp38-44
[2] サプライチェーンカウンシル日本支部:「SCOR入門編」:http://www.supply-chain.gr.jp/apply/apply.php

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

宗平 順己  記事一覧



2010年06月号のコンテンツ



『Webマガジン』に関しては 弊社の「個人情報の取り扱いについて」に同意の上、
下記よりお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ戻る