本記事では、生産管理におけるスケジューラシステム(以後スケジューラ)について、簡単に紹介します。 1 生産管理におけるスケジューラとは 本来スケジューラとは、一連のタスクを実行するに当たっての必要資源*1に対し、保有する資源量を用いて、実施可能な日程を求めるものを言います。 スケジューラとして、一般になじみが深いのは、生産管理システムの中で与えられた作業の実施日程を、負荷を考慮しながら、計算するものが知られています。 これらは、一般的に「小日程計画*2」と言われる、日程計画がこれに該当します。 また、スケジューラは、原子力発電所等の保守業務等、工程が複雑で、計画を常に管理し、再計画を作成するシステムとしても利用されています。 ここでは、一般の製造業におけるスケジューラに関して簡単にまとめていきます。
注)1:資源とは、タスクを実施する際に必要とするものを意味し、製造業では一般に、設備、要員、 材料等が該当します。 注)2:スケジューラは小日程のみならず、中日程、大日程での計画にも利用できます。 2 スケジューラの要否 製造企業は、全て、スケジューラが必要かと言いますと、そうでもありません。 現に、ERPパッケージのMRP機能で生産計画を立てられ、スケジューラを導入されていないケースも多々あります。 スケジューラを導入される企業のほとんどは下記の条件の内、いくつかの条件が該当しておられ、これらの問題解決の目的で導入されています。
----------- 導入される際の問題点 ------------
- 計画が見えない(変更の影響が見えない)。
- 飛び込みが多く、再計画の必要性が高いが十分に対応できない。
- 製造上の条件が多く、属人化しているため、計画の再現性がない。
- 見込み品受注時の納期確認/設備・要員変動等のシミュレーションが簡単に出来ない。
- 保有在庫、発注在庫での製造日程がすぐ見えない。
- 効率化
- 受注生産の為、操業負荷が大きく変動し、調整が困難。 又、受注案件毎に、仕様が大きく変わるため、負荷変動が激しい。
- 製造商品構成が、季節変動などにより月々の負荷変動が大きく調整が難しい。
あるいは、製造商品構成によって、特定資源に負荷が集中し、過負荷となる。 - 機械故障等の突発事項の対処が迅速に出来ない。
- 省力化及び限界
- 計画作成に作業時間がかかるため、省力化したい。
- 計画作成に時間がかかり、必要とする頻度で計画更新が出来ない。
- 計画回数が多くその省力化をしたい。
つまり、上記条件が無い場合には、その必要性が低いと考えられます。 尚、これらの条件を反映させるためには、個々の設備等の詳細なデータが必要ですが、ERPパッケージでは全体像の管理が優先されるため、必要とするレベル迄データが細分化されず、詳細な制限条件の反映が困難なケースも多々あると、筆者は考えております。
3 スケジューラ導入に当たっての準備事項 ではスケジューラを導入するに当たって必要な情報とはどの様なものでしょうか? これらは大きく分けると下記の5つに分類されます。 1.、2.は製造マスターとして準備されていることが多く見受けられます。
- 作業に必要な資源
作業を実施する際に、使用する資源の種類と使用数(設備、治具、職種及びそれぞれの数量)とその作業を行う際に、必須となる作業時間(実時間)です。 (人作業の場合は、作業の繁忙、熟練度等に大きく依存しますが、基準となる標準値での設定で考えます。) - 作業の繋がり
作業の繋がりとは、どの作業の後に開始可能か、あるいは、前作業がどの程度完了しておれば開始可能かを繋がり情報として、保持します。 - 可能な資源量
上記1.で利用する資源を指定していますが、その資源の可能量です。 (設備・治具の場合:台数、人の場合:人数等) - 稼働カレンダー
スケジューラで休憩、休日を考慮して、計算するために、考慮対象資源の稼働カレンダーが 資源毎に必要です。休憩の場合は何時から何時迄、休日は年月日が必要となります。 又、個別ではなく、工場カレンダー等の基本カレンダーを用いて設定を簡素化する場合も有ります。 - 計画時の制限事項
製造上での制限事項です。例えば、 ・ある設備においては、○○○○製品の後は必ず△△製品を生産する。 ・設備の設置場所の関係から、前作業の設備に依存して、次作業の設備が限定される。 ・検査機関の立会検査が必要であるが、実施できる日は曜日が限定される。 等の、計画作成上の要件です。
4 スケジューラ導入時に注意を要する仕様 以下に紹介する仕様は、パッケージに依存しますが、デフォルトのスケジューラ仕様のみでは対応が困難なケースが有ります。検討される際は、適用パッケージ提供元と相談する必要があります。
- 代替工程
ツールセンタ使用の加工機vs既存加工機 等のように適用資源により、工程数が異なる物。 - 人数可変の作業
人作業の場合等で、対象作業期間を指定せず、一定の範囲での人数範囲指定での作業割付。 - 配置問題
置き場所、置き方(積み上げ等)を考慮したスケジューラは条件設定が難しく、数量的な可否をスケジューラで求め、実際の配置などを別ツールを併用して最終解を求めるのが現実的です。 - タンク、槽等の装置特性
タンク、反応槽等の利用は、処理時間のみならず、次工程の作業開始まで保持する必要があり、一般の作業と異なった扱いが必要です。
以上簡単に、生産管理におけるスケジューラの概要を説明しましたが、次回からは、スケジューラの例を順次説明する予定です。 *本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。 |