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「SysMLとは何か」
株式会社オージス総研

2010年08月号
  • 「SysMLとは何か」
株式会社オージス総研   青木 淳

 SysMLは、“OMG Systems Modeling Language”の略称であり、2006年7月にOMG (Object Management Group)により仕様が策定されました。2010年8月時点での最新バージョンは1.2になります。
 図 1に示すように、SysMLはUMLの言語仕様の一部を再利用した部分と、SysMLのために新たに拡張した部分から構成されています。

SysMLとUMLの関係
図 1 SysMLとUMLの関係

 UMLのうちSysMLでは利用されない部分がかなりあり、コンパクトな仕様となっています。また、ダイアグラムの種類は図 2の通りです。

SysMLダイアグラムの種類
図 2 SysMLダイアグラムの種類

 定義されているダイアグラム(図)は全部で9つと、UMLの13個より少なくなっています。
 パッケージ図・ユースケース図・シーケンス図・ステートマシン図はUMLと同じです。
 ブロック定義図はクラス図の拡張、内部ブロック図は複合構造図の拡張となっており、アクティビティ図にも拡張が加えられています。
 SysML独自の図は要求図・パラメトリック図の2つです。

 よく見てみると、電気担当者にとって必須と思われるUMLのタイミング図がSysMLには含まれていません。このダイアグラムに関してはOMGでも様々な議論がされたようですが、結局システムレベルよりも下位のレベルで必要となるダイアグラムであり、システムレベルのタイミング記述はシーケンス図で十分と判断されたようです。ただしSysMLの仕様書では、システムエンジニアリングの場面でSysMLを補完する資料としてUMLのタイミング図を使用することは有効な手段と謳っています。

 弊社はUMLによるモデルベース開発を推進してきたので、クライアントにSysMLを紹介すると大抵の場合「UMLでは駄目なのか」「UMLがあるのになぜ似通った別の言語が必要になるのか」という質問を受けます。
 私の答えは「UMLを理解している人のみでシステムエンジニアリングをするのであれば、新たな言語を覚えるよりまずはUMLで表現すると良いでしょう」です。システムを表現するという目的に対してUMLでは不可能かというとそうではないのです。図 2で示した通り、SysMLのダイアグラムの大部分はUMLそのままか、UMLの拡張であり、新たなダイアグラムの内パラメトリック図は内部ブロック図の派生、つまり元はUMLの複合構造図です。まったくの新規ダイアグラムは要求図ですが、ユースケース図やクラス図を使って要求図と似たような表現は不可能ではありません。

 では、なぜSysMLが必要なのでしょうか。その主な理由は2つあります。一つはSysMLの利用者が必ずしもUMLの利用者では無いことで、もう一つはUMLで記述した場合、図の解釈がローカルルールに頼らざるを得なくなることです。
 これまでに述べてきたように、ものづくりでは様々な分野の担当者が様々なモデルを利用してモデルベース開発をしていますが、UMLはモデル表記法としては新参者でソフトウェア担当者以外には普及していません。また、覚えなくてはならないダイアグラムの数も多く、他分野の担当者が一から覚えるには負担が多くなります。そこでSysMLではダイアグラムの数を減らし、コンパクトな仕様となったのです。

 また、SysMLはUMLを「拡張している」と説明していますが、実際は「拡張している」というより「制限している」と説明した方が理解し易い点が多い言語です。UMLは汎用的な言語なので様々な使い方ができ、利用者が独自に拡張する事ができます。その典型的な例がステレオタイプと呼ばれるモデル要素の分類なのですが、SysMLにおけるUMLの拡張とは、多くの場合がこのステレオタイプをシステムエンジニアリング用に規定したものなのです。つまり、システムエンジニアリングではこのステレオタイプを使いなさいと制限している訳です。これによりSysMLではUMLに比べて汎用性が下がり、システムエンジニアリングに特化した言語仕様となっていますが、その分誰が見ても同じ解釈ができる言語となったのです。

 私がシステムエンジニアリングに興味を持ったクライアントに「UMLを理解している人のみでシステムエンジニアリングをするのであれば、新たな言語を覚えるよりまずはUMLで表現すると良いでしょう」と答える理由は、SysMLはシステムエンジニアリングのための手段の1つに過ぎず、大切な事はどのような手段であれ、まずシステムエンジニアリングをやってみる事だと考えているからです。UMLで不便を感じるようになれば他の手段を検討するようになるでしょうし、その頃にはSysML以外の解が出てきているかもしれません。

 次回はSysMLを活用した要求分析を説明します。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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