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「「IFRS対応と複数帳簿」について」
株式会社オージス総研

2010年09月号
  • 「「IFRS対応と複数帳簿」について」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 8月号で多くの内容を述べたため、9月号では復習も兼ねて短めにしたいと思います。10月号以降も連載しますので、引き続きよろしくお願いします。

1.成熟度レベルアップのための方策

 7月に紹介したSGMM(Smart Grid Maturity Model)については、実際に53社を評価して、レベル0が49%、レベル1が45%、レベル2、3がそれぞれ4%、2%であったと報告されています。スマートグリッド社会成熟度モデルでも一部の地域を除いて、レベル0の段階であると考えています。
 今回は、各レベルに到達するために、新たに必要になる方策の例を説明します。(表1を参照)

(1)レベル1

 現在取られている太陽光発電、高効率給湯器に対する補助金や電力買取り制度などの施策の継続により、達成可能なレベルです。ただし、前号でも述べましたように温暖化対策中長期ロードマップ試案の目標値は非常に高いため、太陽光発電の代わりに他の再生可能エネルギー由来の発電でも構いません。

(2)レベル2

 レベル2からは、新しい施策やサービスが必要となります。一人暮らしのお年寄りも多いため、わかりやすい内容であることが必要です。
 住民に対する啓蒙活動は重要であるため、インターネットを含め何らかの方法で始まっている必要があります。主催者は、エネルギー事業者、スマートグリッド推進者、自治体、自治会などが想定されます。
 また、啓蒙活動の結果が反映されるために、例えば15分~30分間隔で、電気(ガス、水道)使用量関連の内容が見られる必要があります。見える化による省エネの効果は、十数%と言われています。見える化にかかる費用は省エネによる費用削減の期待値よりも小さくなければ、普及しないと思います。私の家の分電盤で使用中は17系統で、エアコン、電子レンジ、洗濯乾燥機は独立系統になっています。ですから、個々の家電もスマート化が進んでおり、これら各系統の使用量がわかる簡易装置でも効果があると思います。なお、見える化はスマートメータとともに普及すると予想していますが、必ずしも必須ではありません。

(3)レベル3

 レベル3では、低炭素社会のカギとなる方策が多く必要になります。太陽光発電からの出力が多くなるとゴールデンウィークなどは、電力が余ると言われています。しかし、出力制御に賛成する意見はそう多くないと見受けられます。レベル3では、ある程度の台数、電気自動車の普及を見込めるため、電気料金を下げて自動車への充電を促すのもひとつの方法だと思います。このために、時間帯別料金の導入が必要であると考えています。また、電力料金を計算するためにも、スマートメータは必須となります。
 レベル3の内容は、前号で詳しく述べましたので、あとは表1を参照して下さい。

(4)レベル4

 前号で、学習制御中心の制御系HEMS、見える化による表示系HEMS及びデマンドレスポンスがうまく連動して、効果的なエネルギーの使い方ができるようになることが必要、と述べました。制御系HEMSの効果は数%ぐらいと言われています。表示系HEMSの効果との単純な足し算になるのかどうかわかりませんが、かかる費用は省エネによる費用削減の期待値よりも小さくなければ、やはり普及しないと思います。

(5)レベル5

 レベル1~4の方策内容は、別々の内容になっているため、さらに定量的、定性的な向上を図る目的で、機能、サービスの連携について、コンソーシアムが組織されていることが必要です。

表1.各レベルに到達するために新たに必要になる方策例[2]
各レベルに到達するために新たに必要になる方策例

2.スマートグリッドで扱われるデータ量

 現在でも、電力会社は料金計算などをするために、大量のトランザクションが行われていると思いますが、本格的なスマートグリッド社会で扱われるデータは、どれくらいのオーダーになるのでしょうか?

  • 例えば、1カ月に1回の検針が、1分ごとに測定されるとすると、60×24×30=73200倍(10の4乗)
  • 計測点が仮に100あり1分ごとに計測すると、10の6乗倍になります。
  • さらに365日保存すると、データ量は10の8乗になります。

 従って、将来的には、大容量で高速にトランザクションができるソリューションが必要となります。

3.ガスメーターは、スマートメーター?

 今年6月に東京で、「スマートメータリング・フォーラム」が開催されました。そのフォーラムの中でLPガス業者さんの講演がありました[1]。25年も前から、ガス切れ防止、配送効率の向上、配送業務の簡素化を目的に、自動検針をされています。これは、LPガス業界では、珍しいことではありません。しかし、複数の有識者の方々が、えらく驚かれていたのを印象深く拝見しました。都市ガスのメーターもさまざまな機能を持っています。これらは、それなりの必然性があったからです。ですから、いわゆるスマートメーターも経済性も含めて、必然性がないと普及しないと思います。ちなみに成熟度モデルで必要になるのは、レベル3からです。
 日本の消費者は、どの分野でも質的に高いサービスを求める傾向にありますので、改良を積み重ねることにより期待に答えるように企業側は努力します。しかし、1からやり直した方が早い場合は、日本は出遅れるかもしれません。スマートグリッドに関して、7月号で述べましたように、日米で遅れている部分、進んでいる部分があります。これは、欧州や発展途上国でも違いがあります。5年、10年後どのようになっているかは、余談を許さない状況だと思います。
[1] 夜野治好「LPガス業界でのテレメータリングの実績 進化する安全・安心の形 ―情熱注いだ25年―」スマートメータリング・フォーラム、2010年6月

 成熟度モデルの続きは、次号で行います。

 (※)第1章は、以下の文献を参考にしました。
(参考文献)
[2] 乾、宗平「スマートグリッドが与える社会システムへの影響についての考察」2010年日本社会情報学会合同研究発表大会、2010年9月4日、5日

 執筆者略歴
乾昌弘 技術士(情報工学部門)
株式会社オージス総研 技術部 部長補佐
1979年:京都大学工学部精密工学科卒業
1981年:東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1981年:大阪ガス入社
1991年:オージス総研出向
2003年:財団法人エネルギー総合工学研究所出向
2006年より現職

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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