今回は、IFRSと見える化の関係について考察してみましょう。 J-SOX対応時の見える化とは、また別の必要性が見えてきます。 ○原則主義 ご存知の通り、IFRSは原則主義です。従って、各社ごとに自社の実情に合うような形で会計方針を作成する必要があります。つまり、同じ業種でも業務のやり方が異なっていれば、会計方針も異なるという事になります。 会計方針の作成は、経理担当者が会計士と相談しながら行う作業になります。しかし、IFRSの場合、経理担当者はその会社または子会社が「ビジネス(業務)がどのように行われているか?」を理解した上でないと会計方針を作成できません。この「ビジネス(業務)がどのように行われているか?」というのは表面上ではなく、現場で実質的にビジネス(業務)がどのように行われているかを把握する必要があります。 ○業務手順書だけでは不十分 業務手順書やそれに類似するマニュアルは今までも作成されているでしょう。この業務手順書と、現場で実際に行われている業務のやり方に差異がある場合があります。 こうなると、経理担当者は、業務手順書を見ただけでは、正しいビジネスの把握ができず、会計方針を立てられない可能性があります。そのため、ビジネスの把握するためには、現場担当者へのヒアリングも必要になります。 また、業務の手順(プロセス)だけでは見えてこないところもあります。必要に応じて人(関係者、組織)の役割や、物(書類、商品など)、お金の意味を明らかにしておくと、実質的に業務がどのように行われているか把握が容易になります。 しかしただでさえ忙しい経理担当者が、これらの仕事をさらに行うことは現実的には不可能でしょう。 ○システム担当者の役割 ここは、このビジネスの把握を、システム担当者が現場と一緒になって行うのが最適ではないかと思います。システム担当者は、システム構築時に情報を整理しており、断片的かもしれませんが、これらのビジネスの把握に必要な情報を持っています。 また、どのような情報がどこに、電子的または非電子的に格納されているかも把握しています。そして現場担当者のだれがどのような役割を担っているのかのヒアリングも、過去にシステム開発をする過程で、現場担当者と接しているので、スムースにいきます。 ○経営情報の見える化 人、物、金の流れが明確になってくれば、それを経営情報に利用しない手はありません。IFRSの制度対応をきっかけに、経営情報の利用というところに、ハードルをあげるのも良いかもしれません。特にグローバルに事業を展開している企業の場合には、IFRSベースで経営情報をリアルタイムに把握することは、国内外の他社との競争に欠かせません。 ○最小限の見える化 見える化というと、J-SOX対応時、膨大な業務プロセスに見える化を行って、うんざりしている方も多いかもしれません。もちろん、そのような見える化した資産があれば、それらを利用することが出来ます。IFRS対応で各社に適合した会計方針を作成することを目的とするならば、会計方針を作成するに際して、明確になっていないところを中心に見える化を行っていけば良いということになります。そうすれば経理担当者、会計士、システム担当者は見える化された情報を共有しながら、会計方針を作成することができます。 そのためには、システム担当者もある程度のIFRSの知識が必要になりますし、システムの仕様が落ちてくるのを待つのではなく、積極的に提案していくことが求められていくでしょう。 *本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。 |