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「会計同質化によるデメリットを考える」
株式会社オージス総研

2010年11月号
  • 「会計同質化によるデメリットを考える」
株式会社オージス総研   依藤 裕俊

1. はじめに

 早期対応スタートを迫る"IFRS対応セミナー"の喧騒も一段落し、大抵の上場企業では、プロジェクト発足から概要調査を経て課題のピックアップあたりまでは、進んでおられるところが多いようです。ここから細分化された実際の課題対応の検討に入る前に、今一度大きな視点からのIFRSのメリット・デメリットを観ておきたいと思います。

2.個別企業ベースでみるメリット・デメリット

 これについては、たくさんの書籍やブログで種々の視点から述べられていますが、簡単にまとめれば、下記のような意見に集約されると思います。個人的にももちろん異論はなく、個別企業の事情・方針にあわせて、メリットを引き出しデメリットを目立たせない基準をうまく選択していく、ということになります。(うまくお化粧して美人になる!! 仏のLVMHなんか上手ですよね!)

(メリット)
・標準化・共通化による財務内容の透明性の向上
・投資家・経営者にとっての財務諸表の比較可能性の向上
・国際的な資金調達の選択伎の拡大(資金調達コストの削減)

(デメリット)
・IFRS導入時のシステム対応・教育等のコスト負担(イニシャルコスト)
・IFRS財務報告と自国用財務報告の2重作成のコスト負担(ランニングコスト)
・包括利益に影響を与える資産・負債の範囲が広がり、経営層の対応負担が増大
 (導入当初には、年金債務の時価評価等マイナスの資産をかなり急激に表に出す必要にせまられる可能性がある・・等)

3.経済(国や世界)ベースでメリット・デメリットを考えてみる

 メリットについては、上に記述した個別企業ベース(を集めたもの)とあまり大きな差異はないと思います。標準化・共通化による見える化/比較可能メリットを広く投資家も経営者も(学者も政府関係者も中央銀行関係者も)皆が享受し、バージョンアップした分析・統合視点を得れるところがポイントでしょうか。

 これに対してデメリットの方はまったく違う様相を隠し持っていると考えます。

 キーワードは「会計の同質化」です。あたりまえの話ですが、世界中の多くの国・企業がIFRSを採用するということによって、世界中の多くの国・企業の会計は同質化します。
 これによって、ある国(ある経済)で発生した経済変動(利子率の変化や特定資産への需給の急激な変化等)による会計上の意思決定が、他国(他の経済主体)での意思決定に同調していく圧力が急激に高まると思います。
 特にIFRSは時価(公正価値)を大胆に取り入れているので、資産も負債も包括利益も、資産価値・負債価値の変動によって大幅に動いてしまう性格をも、併せ持っています。
 つまりそれは、公正価値を構成する、(利子率、各種リスクファクター、将来キャッシュフロー見込みなどの)個別経済要因が変化する時に、世界の大多数の企業の会計数値が同時に同じ方向に大きく動く度合いが飛躍的に高まることを示唆しています。
 しかも(IFRS以前から)こういった大きな変動は、株式や債権/それらを組み込んだ各種金融商品を通じて変動自体が変動を呼ぶフィードバックループを引き起す可能性が高いことも自明の理です。

 以上のように推論してみると、欧・米・アジア各国がそろってIFRS適用をした後の世界で、リーマンショックのような事態が発生した時には、世界各国・各企業への連波のスピードは2008年の金融危機よりも数段スピードアップしており、それをシャットアウトする隔壁をたてることは、ずっと困難になっていると思います。

4.むすび

 このように考えてくると、これからIFRSに沿った自社の会計方針を構築、あるいは各種個別課題へ対応してゆく際には、「同質化のデメリット」を弱めうる仕掛け・ロジックを各所にちりばめる事を課題の片隅にでもおいていただく事が必要かもしれません。筆者は今のところ、連動性を高める部分(時価評価等)の取込みを押さえ気味にする・・・位のロジックしか思いつきませんが、幸い、原則主義なので、裁量の余地はそれなりにかなりあるかと考えます。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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