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「スマートグリッド社会成熟度モデル(最終回)」
株式会社オージス総研

2010年12月号
  • 「スマートグリッド社会成熟度モデル(最終回)」
株式会社オージス総研   乾 昌弘

 スマートグリッド社会に関する解説は、今回をもってひとまずお休みにしたいと思います。今回は、第1章でまとめをした後、断片的にはなりますが言い残したことを述べたいと思います。

1. スマートグリッド社会成熟度モデルまとめ

 7月号でモデルの前提となるお話をした後、8月号でモデルの説明を行いました。9月号で成熟度レベルアップのための施策及び方策、10月号でめざすスマートグリッド社会及びサービスについて述べました。また、11月号で、CMUのSGMMとの対応付け、標準化に関することがらについて述べました。図1は、各々の関係を表しています。

 なお、環境省が公表した温暖化対策中長期ロードマップ試案は一部変更されたため、モデルも今後改定する予定です。

スマートグリッド社会成熟度モデル及び目指す社会、SGMM、施策、標準化との関連
図1 スマートグリッド社会成熟度モデル及び目指す社会、SGMM、施策、標準化との関連

2.CO2削減に触れなかった理由

 今まで、CO2削減については触れませんでした。以下のことを少し考えてみたいと思います。

(1)電子メール事件

 皆さんは、メール事件というと××党のことを思い出されると思います。正確にいうと事件ではなく疑惑なのですが、ウォータゲートをもじった「Climategate」と呼ばれる疑惑が昨年起こりました。関係者の間でやりとりしていた電子メールがハッキングされて、ある内容が暴露されたのです。その内容とは、1960年代からの気温下降を隠すことで1980年代からの気温上昇を誇張したデータを作成したという疑惑です。これが、大騒ぎになった理由は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、そのデータを採用していたからです。IPCCの報告は、非常に影響力があるものです。

(2)海面は上昇するのか?

 世間には、北極の氷は海に浮かんでいるので、溶けても海面上昇はない。(そこだけを考えればそうかもしれない)南極の気温が上昇すれば、南極の周りの氷がシャーベット上になって海面は下降する。(よくわからないな)南太平洋の国ツバルは、海流の影響で浸水している。(よくわからないな)等の意見があります。

 気候変動の専門家ではない私たちが、これらをどう捉えるかは難しい問題です。ただ、化石燃料を燃やし続けると、大量のCO2が発生して一部は海面に溶けるにしても、大気中に滞留して長期間で見ればどうも気温は上昇するらしいことは理解できます。それでCO2削減は、重要な課題です。しかしながら、例えば、「これによりCO2が○○t削減されます。」と言われても、一般の人々はわかりづらいと思います。従って、各自、経済性を考えて消費行動することが、CO2削減に寄与すればよいと考え、このWebマガジンを書いてまいりました。従って、施策を実施して消費行動をうまくコントロールすることが重要だと考えます。実際、9月のエコカー補助金や11月のエコポイント(半減へ)の期限前後の状況をみても明らかだと思います。

3.利用者負担

    (1) HEMSなどの新しい装置について、新築はともかく既築はコスト的になかなか難しいと言われています。ちなみにスマートメーターなどは、供給側に負担を強いることになります。
    (2) 太陽光発電の余剰買取りに関しては、来年度から電気料金に上乗せがされます。
    これらのユーザー負担をどうするかは、議論が続くと思います。
    (3) 米国で、スマートメーターを導入した住宅の電気料金が急に上がったという現象が発生しています。例えば、2009年テキサス州では、Oncor社を相手取り訴訟を起こしました。また、カリフォルニア州でもGP&E社の顧客が訴訟を起こしています。訴訟の原因として考えられているのが、これまでの電力量計が古すぎて正確に電力利用量を計測できていなかったこと、もう一つの原因は、気候などの影響によりスマートメーターを導入してから電力消費量が増えたことであるといわれています。原因が他にあったとしても、ユーザーは新しいものに懐疑心をいだくでしょう。

 新しい制度や装置を導入するためには、今まで述べて参りましたようにやはり啓蒙活動が非常に重要です。

4.デマンドの平準化

Webマガジンの10月号で、下の図2を示して、
 「分散型電源の状況に応じて、系統電力のデマンドの増減がそれぞれあります。これは、一日を通しても刻々と変わるものです。従って、施策やサービスをうまくコントロールして系統電力に対するデマンドを平準化するようにもっていかなければなりません。」と述べました。

 例えば太陽光発電の場合、昼間時に雲のかかり具合などから、変化の激しい短い周波数の波と緩やかな長い周波数の波が発生します。この変化を系統側で吸収しようとすると、莫大な量の蓄電池が必要となります。従って、例えばスマートハウスでは、短い周波数は蓄電池(定置用または電気自動車)長い周波数は燃料電池を制御することによって吸収する実証実験がおこなわれています。
 要するに分散電源/熱源間の制御が非常に重要になってくるのです。

施策及びサービスによる影響の関係図(Webマガジン10月号)
図2 施策及びサービスによる影響の関係図(Webマガジン10月号)

5.あとがき

 最後まで読んでいただいた方々に感謝申し上げたいと思います。また、少し充電してから、「続」スマートグリッド社会成熟モデルを連載したいと思っています。半年間ご購読まことに有難うございました。

 執筆者略歴
乾昌弘 技術士(情報工学部門)
株式会社オージス総研 技術部 部長補佐
1979年:京都大学工学部精密工学科卒業
1981年:東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1981年:大阪ガス入社
1991年:オージス総研出向
2003年:財団法人エネルギー総合工学研究所出向
2006年より現職

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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