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「「IFRS コンバージェンスとアドプション」について」
株式会社オージス総研

2011年03月号
  • 「「IFRS コンバージェンスとアドプション」について」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 IFRS対応というと、アドプションが注目され、2012年の金融庁の判断で、強制適用がどのようになるかの発表を待っている企業も多いのではないでしょうか? 今のところ2015年、2016年以降の強制適用が予想されていますので、少し先のことと認識している企業もあると思います。
 しかし、コンバージェンスによるIFRS対応は既に進行しています。コンバージェンスは、日本基準の変更と捉えられるので、IFRS対応であることをあまり意識しませんが、コンバージェンスによる日本基準の変更に関しても、システムに大きなインパクトを与える可能性があるものが存在します。
 ここでは、その例として資産除去債務、過年度遡及修正、包括利益表示について考えていきたいと思います。

○資産除去債務

 企業会計基準委員会(ASBJ)の出した「資産除去債務に関する会計基準(企業会計基準第18号)」は2010年4月1日から適用が開始されています。
 有形固定資産の除去に伴う不可避的な債務が存在する場合に、当該除去に要する将来支出額を見積り、その現在価値を資産除去債務として負債計上します。
 たとえば、有形固定資産の解体撤去の費用や土壌汚染の原状回復費用などになります。
 しかし税務上では、資産除去債務を含めた減価償却は、現行では認められません。そのため会計上と税務上とで処理が異なるので、データの二重管理が必要になります。
 固定資産システムは税法の影響を受けること、独自の処理が必要な固定資産を保持しているなどの理由で、ゼロから(スクラッチで)作成している場合も多く見受けられます。その場合IFRS(アドプション)では、複数帳簿対応にする必要がある可能性が高いので、システムの基本構造に大きく手を入れる必要があります。
 それに対して、その会社(業界)特有の固定資産の処理があまりなく、IFRS対応(予定)の固定資産パッケージなどを利用していれば、システムの変更は比較的少ないと思われます。
 このときも、汎用のパッケージシステムでは処理しにくい独自の固定資産を持っている場合、パッケージシステムでは対応しきれない独自の部分とパッケージシステムで対応可能な共通部分を分けて考える必要があります。

○過年度遡及修正

 企業会計基準委員会(ASBJ)から次のものが公表されています。

2008年6月 「会計上の変更及び過去の誤謬に関する検討状況の整理」
2009年4月 企業会計基準公開草案第33号
「会計上の変更及び過去の誤謬に関する会計基準(案)」及び
企業会計基準適用指針公開草案第32号
「会計上の変更及び過去の誤謬に関する会計基準の適用指針(案)」

 2011年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用されます。ただし未適用の会計基準等に関する注記については、2011年4月1日以後開始する事業年度から適用される予定です。

 過年度遡及修正に関しては、システムの基本構造に関わる問題であり、IFRS(アドプション)での対応も含めて、検討したいところです。そのため、アドプションで一気に変更を加えるまでは、コンバージェンスでは、出来るだけ軽微な小手先の対応だけでおさめておきたいところです。
 今までの常識で言えば、会計システムは、決算後、データを改竄できないように、ロックしてしまうのがあたりまえです。その為、小手先の対応としては、会計システムには手を入れないで、データのコピーを取り出して別途、過年度遡及修正したものを作成することが考えられます。しかしこの対応を取った場合、どれが最終的な決算データなのかをきちんと管理する必要があります。

○包括利益表示

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、2010年6月30日、企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」を公表しました。
 連結財務諸表については2011年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用します。個別財務諸表に本会計基準の適用を求めるかについては、1年後をめどに判断するとされています。
 包括利益の表示に関しては、単に表示の問題(さほど大きな問題ではない)と見過ごされている場合も多いですが、意外に大きな問題をはらんでいる可能性があります。
 前述したように会計基準の適用に関しては連結先行になっていますが、システム対応を考えた場合、個別についてはさほど難しくないのですが、連結については、作業が膨大になる可能性があります。
 連結の包括利益計算書を作成する場合に、少数株主持分の内訳を必要とします。現在のシステムでこの内訳がなく合算した項目のみしかない場合、大規模なシステムの変更が入る可能性があります。

 このようにコンバージェンス対応でも、比較的大きなシステム変更が必要になる可能性もあります。企業の中では、コンバージェンスで毎年段階的に移行するよりも、任意適用で一気に変更を考えているところもあるようです。しかし IASBとFASBのMoU(Memorandum of Understanding)の合意では、2011年6月30日以降に適用が予定されており、IFRS自体が現状と大きく変わる可能性もあります。そのため、任意適用をする場合も、Mouの合意が適用されるまでは、待つ方が良いかもしれません。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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