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「「続」スマートグリッド社会成熟度モデル(第1回)」
株式会社オージス総研

2011年03月号
  • 「「続」スマートグリッド社会成熟度モデル(第1回)」
株式会社オージス総研   乾 昌弘

 

 昨年後半、「スマートグリッド社会成熟度モデル」第1回から第6回まで連載いたしました。今後は「続」を付けることによって、不定期で掲載してまいりたいと思います。今回は、成熟度モデルの内容とは離れますが、最近話題になっているEV充電インフラに関する内容を取り上げたいと思います。

1. 燃料電池車普及に向けたインフラ整備シナリオ作成の経験より[1][2][3]

 私は以前、(財)エネルギー総合工学研究所に出向し、NEDOからの委託を受けて、「燃料電池車(FCV)普及に向けたインフラ整備シナリオ」の検討を行いました。充電インフラとは違い、水素ステーションの検討ですので、かなり複雑なものでした。当時は、まだ電気自動車(EV)よりFCVの方が期待されていたと思います。
 シナリオ作成での課題の一つは、かなりFCVが普及した時は、ニーズに合わせてステーションを決めればよいのですが、黎明期はFCVの台数に比してステーションが多くないと、必要な時に水素を補充できなくなります。かといって、経済性の面からむやみに設置することはできません。シナリオ作成の一つの方法は、1950年代頃のガソリンスタンドの普及状況を調べればよいのですが、古くて資料がなかなかみつからないのと、今の時代とは取り巻く状況も違うことから、私は他の方法を探すことにしました。
 そこで、天然ガス自動車(NGV)の普及に注目して、1年ごとのNGVの保有台数と天然ガス(CNG)ステーション数を集めてみました。図1の縦軸が、カバー率と呼ばれる台数/ステーション、横軸が台数のLOGをとった数値です。この時は、5万台に達する時に必要な水素ステーション数を求めることが目的でした。さらにLPG車の当時の最新データも入力しました。100台程度付近は、特異点が現れていますが、その後は、滑らかな曲線になっています。5万台の時のカバー率は、ちょうど100で、水素ステーション数は、500箇所となります。

NGV台数とCNGステーション数の関係図
図1.NGV台数とCNGステーション数の関係図([3]より引用)

 このようにしてトップダウンで統計処理による結果と、ボトムアップで必要なステーション設置場所を特定していくことが必要になります。当時、米国カリフォルニア州で水素ハイウェイ構想が発表になりました。FCVは走行距離が比較的短いため、高速道路に水素ステーションを作ろうというものでした。このような考え方は充電インフラにも受け継がれています。
 その他、水素特有の課題もありました。例えば、ある程度規制緩和は行われましたが、保安距離など法規制による制限があります。

2.電気自動車(EV)普及が黎明期の充電インフラについての考察

 バッテリーが予想以上に進化しているために、EVに対する期待が高まっています。特に、充電インフラは、水素ステーションに比べて実現しやすいという利点があります。家庭で充電装置を持つことも可能ですが、最初は少ないと考えられます。また、バッテリー能力により、フリート走行(ある範囲内を移動)にならざるを得ません。従って、NGVやFCVと同様に計画的な充電インフラの構築が必要となります。
 大阪府は、EVアクションプログラムを作成して、EV普及に努めています。また、大阪府内に20基ほどの急速充電器が設置されています。先日のセミナーで設置場所の検討方法の説明がありましたので、御紹介します。[4]

(1) 東京電力の調査により、15×8Km四方に2基あれば、安心して走行ができる。大阪府に当てはめると、20基必要となる。
(2) 次の評価項目を評価して場所を選定
郵便局や携帯電話基地局に使われているボロノイ法を用いて、効果的な配置バランスを検討
主要幹線道路からの距離
高速道路インターチェンジからの距離
開放時間

 このようにいろいろな手法を用いて、経済的で効果的な設置数、設置場所の決定が必要となります。

 最後にEVに期待するとともに、もちろん低炭素社会を実現するための重要な柱として、EVよりも走行距離が長いFCVにも期待しています。(FCVは、2015年実用化に向け、13社による共同声明が発表されました。)

(参考文献)
[1] M.Inui, H.Iwabuchi, K.Fukuda,”A Strategic Scenario of Infrastructure Construction for FCVs”, World Hydrogen Energy Conference, June 27, 2004

[2] 乾昌弘、福田健三「燃料電池車普及に向けたインフラ整備シナリオの検討」P20-P27、水素エネルギーシステム VOL.31 NO1 2006

[3] (財)エネルギー総合工学研究所「水素安全利用等基盤技術開発 水素に関する共通基盤技術開発『水素シナリオの研究』」成果報告書、2005年3月

[4] 大阪府商工労働部 新エネルギー産業課「大阪府のEVを中心とした産業振興」新エネルギーセミナーin大阪、2011年2月2日

 執筆者略歴
乾昌弘 技術士(情報工学部門)
株式会社オージス総研 技術部 部長補佐
1979年:京都大学工学部精密工学科卒業
1981年:東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1981年:大阪ガス入社
1991年:オージス総研出向
2003年:財団法人エネルギー総合工学研究所出向
2006年より現職

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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