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「トレーディング業務基礎(バイサイド編 第四回)」
株式会社オージス総研

2011年07月号
  • 「トレーディング業務基礎(バイサイド編 第四回)」
株式会社オージス総研   有間 博道

 今回は、国内株式の取引について、その種類とコストについて記述したいと思います。

1.国内株式の取引種類

 国内株式の取引種類と言っても、その分類方法は幾つか存在します。
 代表的な分類を2例記述します。

1) 決済の仕方による分類 (リテールの世界では良くある分類)
   ■普通取引
 約定日(契約の成立した日)から約定日を含んで4営業日目に、現金と株券の受け渡しが行なわれる取引のことで、中心となっている取引形態です。更に、実物取引と信用取引に区別されます。
   ※通常、トレーディング業務で主体となるのも、普通取引です。
   ■当日決済取引
 売った株券の代金や買った株券が今すぐ必要な場合や、間違った売買契約を解消するために行なわれる約定日に決済を行う取引のことです。
 クロス取引のみがその対象となります。原則、午前中の取引(前場)の場合は午後に、午後の取引の場合(後場)は翌日の朝の受け渡しになります。
   ■特約日決済取引
 売買が成立した日から15日以内の指定した日に、決済を行なう取引です。現在ではほとんど利用されていません。
   ■発行日取引
 まだ発行されていない増資新株の権利を売買するための取引で、新株を取得できる権利を有する投資家が、実際に新株券を取得するまでの期間の株価変動リスクを回避する為に、新株券の未発行段階で売買を行う取引です。
 取引所が発行会社の申請で承諾し、取引期間や決済日を決定します。権利落日から保管振替機構における新株式の新規記録日の3営業日前まで取引され、決済は売買の約定日に関わらず発行日決済取引の取引期間の最終日から起算して4日目の日に一括して行われます。
 また、同一銘柄について売付株数と買付株数が同数となっている部分は、損益金の授受による決済を行うことが出来ます。
   ※権利落ち:
 権利付最終日が過ぎ、株式分割や新株引き受けの権利、配当を受け取る権利がなくなることを言います。理論的に権利がなくなった分だけ株価が下がります。
   例)
1000株から1500株への株式分割の場合、権利付きの最終株価が300円とすると、権利落ち後の理論株価は、(300円×1000株 +0円×500株 ) ÷ 1500株=200円となります。つまり、前:300×1000 = 後:200×1500 で権利落ち前後では、理論価格は等しくなります。
2)委託・自己取引による分類(ホールセールのトレード業務で重要となる分類)
   ■委託取引(エージェンシー取引)
 オークション方式で東証や大証といった市場で執行される取引です。
 エージェンシー取引は、取引の形態から個別銘柄取引所取引と複数銘柄一括取引(バスケット取引)に区別する事が出来ます。

 取引に掛かる手数料(コスト)は、機関投資家である資産運用会社(バイサイド)と証券会社(セルサイド)間で、顧客(又はその下の口座)単位に基本的な手数料計算方式が決められており、通常はその方式(ベーシスポイント方式/スライディングスケール方式、一口の有無など)に沿って算出されます。又、取引の規模の大小、条件により値引きなどの手数料調整が行われます。

 手数料自由化以後、機関投資家による手数料計算の要求は固有化・詳細化し、個別機関投資家毎に異なる手数料計算を行う事が増えて来たため、対応する証券会社のポストトレード業務システムも複雑化しています。(取引の執行形態別に異なる料率を用いる場合も増えています。・・・次回に詳細を記述します)
   ※オークション方式:
 価格優先原則、時間優先原則のルールに基づき、 売り注文と買い注文の条件を摺り合わせて次々と約定させていく売買成立方法のことです。
   ■自己取引(プリンシパル取引)・・・機関投資家のみ利用可能な取引
 エージェンシー取引が市場通じて広い範囲で取引されるのに対して、プリンシパル取引は、機関投資家と証券会社が一対一の相対で実施される取引です。
 証券会社は自己(証券会社の自身の資産・勘定)で保持している玉(ポジション)や貸借可能な玉をベースに機関投資家との取引を行います。
 プリンシパル取引は、値段・コストの観点から、大きく「決め取引」と「保証取引」に分かれます。概略で言うと、決め取引は、約定値段を決める取引で、保証取引は手数料を保証する取引です。
 又、エージェンシー取引と同様に、取引の形態から、個別銘柄の取引とバスケット取引に区別する事が出来ますが、取引所内外、立会内外の区分けを加味すると以下の様に区分けできます。
 ●個別銘柄クロス取引(取引所立会外)
 ●個別銘柄店頭取引(取引所外取引)
 ●バスケット取引(取引所立会外)
 ●バスケット取引(店頭取引=取引所外取引)

 プリンシパル取引に掛かるコストは、取引の都度に、機関投資家(バイサイドトレーダー)と証券会社(セルサイドトレーダー)との交渉によって決定する事が殆んどです。
  例)機関投資家がプリンシパル取引を行う場合
(1)複数の証券会社に取引対象の銘柄(通常バスケットか/ロットが大きいか)と
 数量、参照価格を伝える。 (固有の証券会社決め打ちの場合もある)
(2)各証券会社は、自己玉の在庫調整にかかるコストと、取引に関わる手数料を
 参照価格に乗せて約定金額を提示する。(決め取引の場合)
(3)機関投資家は、提示された約定金額と証券会社の実績・実力を鑑みて、
 証券会社を決定し、プリンシパル取引を行う。
 ※プリンシパル取引にかかるコスト = 約定金額 - 参照価格
   ※参照価格:
 約定価格の基準となる価格で、一般には、直前の主市場・優先市場における価格とする場合が多い。プリンシパル取引が良く行われるランチタイム取引の場合は、前場終値が参照価格となる。
   ■エージェンシー取引とプリンシパル取引の比較
 プリンシパル取引のメリット・利用理由には以下の事項があげることが出来ます。
 (1)大量の売買でマーケットインパクトリスクを回避できる。
 (2)売り買いのリバランスを一時点の値段を基準にして行うことができる。
 (3)取引所の取引時間外に売り取引を行うことができる。
 (4)流動性の低い銘柄を短期間で売買できる。 ・・・ 等など

 又、一般的にはエージェンシー取引より、プリンシパル取引の方が手数料が低い場合が多いとされています。但し、エージェンシー取引の方が、透明性が高く、実際の取引ではロットの大きな売買や、バスケット取引に対しても買付平均単価が低減する場合や売却平均単価が高騰する場合もあります。
 特に腕の良い、セルサイドトレーダーに「計らい」で注文をだした場合には、エージェンシー取引の方が有利になる可能性が高まります。
 市況、相場を見つつ、どちらの取引を適切に利用するかの判断もバイサイドトレーディングの大事なポイントと言えると思います。
   ※計らい:(計らい注文)
 一定の値幅をもたせた売買注文で、その範囲内でセルサイドトレーダーに裁量を持たせて行う取引です。 ロットが大きな取引ではトレーダーの腕の差が出やすくなります。

次回は、国内株式の取引の執行形態などの記述をしたいと思います。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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