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「「続」スマートグリッド社会成熟度モデル(第6回)」
株式会社オージス総研

2011年08月号
  • 「「続」スマートグリッド社会成熟度モデル(第6回)」
株式会社オージス総研   乾 昌弘

 

1. スマートグリッド社会成熟度モデルでレベルアップするために必要な施策及び方策

1.1. 概要

 前回まで、課題整理を検討したので、これをもとにして(昨年9月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第3回))で、説明した「成熟度レベルアップのための方策」をもう一度、整理したいと思います。
 まず、表1のまとめを見て下さい。例えばレベル3の場合、太陽光発電が増えるため、「電力の時間帯別料金が設定されていること」が一つの方策になります。これは系統安定化の課題、すなわち、技術的課題、ユーザ負担に対する課題に分類されます。

表1.具体的な施策及び方策例
具体的な施策及び方策例

1.2. 具体的な施策及び方策例

(1)レベル1

 ◎政策・法的課題
 現在取られている太陽光発電、高効率給湯器に対する補助金や電力買取り制度などの施策の継続により、達成可能なレベルです。ただし、温暖化対策中長期ロードマップ試案の目標値は非常に高いため、太陽光発電の代わりに他の再生可能エネルギー由来の発電でも構いません。

(2)レベル2

 レベル2からは、新しい施策やサービスが必要となります。

 ◎住民・関係者の理解に対する課題:
 一人暮らしのお年寄りも多いため、わかりやすい内容であることが必要です。住民に対する啓蒙活動は重要であるため、インターネットを含め何らかの方法で始まっている必要があります。主催者は、エネルギー事業者、スマートグリッド推進者、自治体、自治会などが想定されます。

 ☆コストに対する課題技術的課題、ユーザ負担に対する課題)
 啓蒙活動の結果が反映されるために、例えば15分~30分間隔で、電気(ガス、水道)使用量関連の内容が見られる必要があります。見える化による省エネの効果は、十数%と言われています。なお、見える化はスマートメータとともに普及すると予想していますが、必ずしも必須ではありません。

(3) レベル3

 レベル3では、低炭素社会のカギとなる方策が多く必要になります。

セキュリティの課題技術的課題政策・法的課題住民の理解):
 下記の時間帯別料金の導入のためスマートメータは必須となります。平成23年2月発行の「スマートメーター制度報告書」によると、電力は30分値でガスは1時間値になっています。また、個人情報保護制度に則った対応を求めています。また米国では、スマートメーターに関する訴訟も起きています。昨年12月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第終回)第3章を参照して下さい。

系統安定化の課題技術的課題ユーザ負担に対する課題):
 太陽光発電からの出力が多くなるとゴールデンウィークなどは、電力が余ると言われています。しかし、出力制御に賛成する意見はそう多くないと見受けられます。レベル3では、ある程度の台数、電気自動車の普及を見込めるため、電気料金を下げて自動車への充電を促すのもひとつの方法だと思います。このために、時間帯別料金の導入が必要であると考えています。
 時間帯によって料金が違うと、高い時は系統電力はなるべく使わず、分散電源/熱源を効率よく使い、優先順位の高い情報家電だけを使います。安い時は優先順位の低い情報家電も稼働させ、また電気を貯める方向に消費行動が動くことになります。時間帯別料金は、シーズンオフピーク、オンピーク料金、逼迫時料金、逼迫時払い戻し金、昼間/夜間/深夜料金などがあります。

☆コストに対する課題技術的課題政策・法的課題ユーザ負担に対する課題相互運用性に対する課題):
(1)情報・アドバイス提供サービスが実施されていることが必要です。内容は、自宅の電気使用量が類似家庭と比べられる、対象地域の平均的な使用量がわかる、天候や電力需要量など予測も含めてエリア情報が見られる。各家庭に合ったアドバイスが受けられるなどです。

(2)情報家電の時間設定や優先順位の設定が可能なことです。例えば、洗濯乾燥機の稼動や冷蔵庫の霜取りの優先順位を下げる、冷蔵庫やエアコンの温度設定を上げるなどの機能が備わっていることです。(冷蔵庫の場合、defrosterとモーターのスイッチを分けることが可能です。)

(3)省エネ及びコスト削減が実行できるように蓄電池及び情報家電が普及していることです。定置用蓄電池は高価で場所も占有することからPHEVや電気自動車が家庭用蓄電池としても期待されています。また、蓄電容量が大きいため、エネルギーに対する影響度合いも大きくなります。(例:日産リーフ:24kWh、三菱MiEV:16kWh)

(4)レベル4

◎住民・関係者の理解に対する課題:

 住民が省エネに関して、話し合う場(公民館、SNSなど)が提供されていることが必要になります。実際、アムステルダムスマートシティでは、SNSで市民が参加できる仕組みが作られています。

○安全性に対する課題
 (停電時)家庭内と外部の電力系統の入り切りが自動的にできるようになっている事が必要です。

☆コストに対する課題技術的課題政策・法的課題ユーザ負担に対する課題、相互運用性に対する課題):
 学習制御中心の制御系HEMS、見える化による表示系HEMS及びデマンドレスポンスがうまく連動して、効果的なエネルギーの使い方ができるようになることが必要です。制御系HEMSの効果は数%ぐらいと言われています。表示系HEMSの効果との単純な足し算になるのかどうかわかりませんが、かかる費用は省エネによる費用削減の期待値よりも小さくなければ、やはり普及しないと思います。

(5) レベル5

◎住民・関係者の理解に対する課題:
 レベル1~4の方策内容は、別々の内容になっているため、さらに定量的、定性的な向上を図る目的で、機能、サービスの連携について、コンソーシアムが組織されていることが必要です。

(※)以上の内容は、下記の文献をもとにやさしく解説しました。
[1] 乾昌弘、宗平順己「スマートグリッド社会に向けた課題整理と方策についての考察」日本社会情報学会関西支部第20回研究会、2011年7月

3. あとがき 東京での経験

 (いつものことながら)私ごとで恐縮ですが、2003年8月に東京西新橋にある(財)エネルギー総合工学研究所に出向になりました。出向直前に私は3つの悩みがありました。1番目は東京単身赴任、2番目はエネルギーの知識が豊富でない。そして、3番目は東京大停電の恐れでした。東京電力の不祥事発覚により、原発のほとんど?が停止状態になっていたためです。「8月に東京で大停電が起きるぞ。」と言われたのを今でも覚えています。

 東京に赴任して最初の数日は暑かったので、大停電が起こるかなと思っていました。しかし、その後、雨が降り続いて急に涼しくなりました。涼しくなったいうよりも涼しすぎました。お盆の頃は屋内の水族館が大賑わいだったようです。私は、「東京電力に神風が吹いた」と思わず言ってしまいました。実際、その次かその次の年は、最高気温が39.5度になる猛暑だったのです。

 ある地方の電力会社から出向していた人が、「安い原子力発電か、高い火力発電を選ぶのは使用者だ。」と私に言いました。しかし、未だに使用者が自由に選ぶことはできません。例えば、ドイツでは各家庭で、高いがグリーン電力を選ぶという選択ができます。日本もそうなるのでしょうか?

 執筆者略歴
乾昌弘 技術士(情報工学部門)
株式会社オージス総研 技術部 部長補佐
1979年:京都大学工学部精密工学科卒業
1981年:東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1981年:大阪ガス入社
1991年:オージス総研出向
2003年:財団法人エネルギー総合工学研究所出向
2006年より現職

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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