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「IFRSのもたらした経営管理の視点」
株式会社オージス総研

2011年10月号
  • 「IFRSのもたらした経営管理の視点」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 金融庁の自見庄三郎担当大臣のIFRSの強制適用を2017年以降にするという発表を受けて、行われた金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議の中では様々な意見が出されています。その中でIFRSは日本企業の中でも製造業に向かないという意見があります。
 たとえば、次のようなものです。
 「製造業等におきまして、製造設備や土地なども公正価格で評価するということになっておりますが、しかしものづくりにとって、こうした土地や設備というのは市場価格がないことが多くて、そこで評価金額が大きく変動するということは、労働者がつくる付加価値というものにも大きな影響を与える点も懸念されます。」
 「減価償却資産などというものは、時価と言われても、ほんとうはその価格で売買できる減価償却資産なんかありません。特に一品しかない、他に代替可能でない施設を持っているわけでございますから、それ自体を時価で表現する意味がどこまであるかというような気もいたします。」 ※引用1
 これに対してIASBの元理事の山田辰己氏は、8月の講演で次のように反論しています。
 「有形固定資産や無形資産を全部時価評価をして、その評価損益を当期純利益で認識するなんてことはこれっぽっちも考えていない。」として、有形固定資産や無形固定資産は、取得原価主義を基本に考えていくことのようです。
 また、IFRSが製造業に向いていないという意見に関しては、
 「IFRSが製造業に向いていないという話は世界で聞いたことがない。IFRSに対して誤解があるのではないか。」と反論しています。 ※引用2
 このように、様々な意見で議論が深まることは、大変良いことだと思いますが、肝心の各企業の対応はどうなっているのでしょうか?
 ※引用3によれば、
 PwC Japanの支援する企業の約100社では、ほぼ同数の4分の1ずつ以下のいずれかの対応を行うということです。

  1. IFRSプロジェクト自体を休止。
  2. 当初の予定通り、プロジェクトを進めている。
  3. 今年は動かすが、来年以降はプロジェクトをスローダウン。
  4. 今年は動かすが、来年以降は休止。
1. は休止、3. 4. は様子見というところでしょう。実に4分の3が、金融庁のIFRSの対応に右往左往していると言えます。
とりあえずIFRSプロジェクトをやめてしまったり、様子見をしたりしてしまっているようです。
2. の対応を取る企業は、「プロジェクトの目的がIFRS適用だけではなく、経営管理の向上やシステム統合、経理処理の標準化など別にもある。そのためIFRSの動向には影響を受けずにプロジェクトを進めている。」

 ということです。
 IFRSは、投資家視点の会計であり、世界共通のものです。そのため資金調達やグローバル展開を考えた場合は、企業にとても重要なものです。
 しかし、IFRSの視点だけではなく、経営者の視点で考えた管理会計も必要になってきます。経営者視点で考えた場合は、また異なる判断基準も必要になります。それは、IFRSと同様のところもあれば、IFRSにはないところもあります。
 各企業は、IFRSが日本や製造業に適している、適していないという議論に対してや、金融大臣の考え方など外部環境に対する対応に振り回されるのではなく、自分の企業の価値を高めるためにはどうしたら良いのかという検討と分析、そして意思決定がまずは必要なのではないでしょうか?
 そう考えると各企業は、上記PwC Japanの調査で4分の1しかなかった企業をのスタンスをこそ目指すべきではないでしょうか?

○まとめ

 IFRSに対する議論が活発化して、理解が深まることは大切であり、そのための時間ならばそれは有益だと言えます。
 しかし、その議論を横目に見つつ、様子見をしているだけでは、有益とは言えません。企業は、IFRSに振り回されずに、そもそも企業に必要なことを考え、その対策を考える上でIFRSがどのように関わってくるか検討し、企業価値向上の施策を実施していくことが建設的なのではないでしょうか?
 そのために、IFRSを経営管理を行うための新たな1つの視点と捉え、各企業は、しっかりとIFRSが何者かを見極め、経営管理に取り込んでいくことが必要となってきます。

※引用1『6月30日審議会の議事録』より引用
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/gijiroku/soukai/20110630.html
※引用2『「IFRSは製造業に向かない」を元IASB理事が検証』より引用
http://www.atmarkit.co.jp/im/fa/serial/fsa_ifrs/11/02.html
※引用3『「IFRSは日本企業に合わない?」、よくある指摘にPwC Japanが反論』
http://www.atmarkit.co.jp/news/201109/15/pwc.html 

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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