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「Social BPMとKPI BPI:ビジネスプロセスインテリジェンス(その5)」
株式会社オージス総研

2011年10月号
  • 「Social BPMとKPI BPI:ビジネスプロセスインテリジェンス(その5)」
株式会社オージス総研   宗平 順己

 先月号までKPIツリーの構築方法をご紹介してきました。今月号では、そのKPIツリーの賢い使い方を、Social BPMという切り口からご紹介します。

1.Social BPMとは

1.1 Social BPMの必要性

 企業活動の成熟度を表現するために,しばしばCOBITの成熟度モデルを使います。この成熟度モデルを用いるとき,まずはLevel3すなわち定義されオーソライズされた状態を目指し,その後Level5(ベストプラクティス)へ至るために,Level4=モニタリングできる状態を目指すこととなっています。
 企業の業務改革活動が強制された活動から自発的活動に転じるためには「参画」が重要なキーワードとなります。Level3では従業員は定められた標準にしたがって業務を進めることが求められますが,Level4以上では毎日の業務において自らのパフォーマンスをモニタリングし,求められているビジネスゴールを達成できるかどうかを判断するようにならなければいけません。そしてもし,目標を達成できないと判断された場合には,ビジネスプロセスを再構築する必要があります。
 ところが、このような変革のプロセスは,従業員をはじめとするステークホルダーが受け身であっては成立しません。他人が決めたルールに対しては責任を持たず,従わない理由づけにしかならないからです。新しいビジネスプロセスを自分達で設計し,ビジネスゴールの達成に自らコミットすること,このような風土にしなければ強い会社にはなりません。
 コンサルティング会社に委託した業務改革や一般に利用されているBPM製品ではこのようなニーズに対応できません。そこにsocial BPM が登場した背景があります。

1.2 Social BPMの定義

 social BPMの概念はまだ新しく統一的な定義はありませんが,Gartnerは次のように定義しています[1].
 "Social BPM is a concept that describes collaboratively designed and iterated processes. These processes mirror the way work is performed from a 'doer' perspective and experienced from a 'receiver' perspective.

そしてsocial BPM:の実装には次の2点が必要であるとしています。

(1) Design enables a group (for example, customers, partners, suppliers, employees, and the collective) to work on the design of a process
(2) Iteration is the act of harnessing knowledge about how the process is experienced, while it is being performed, and acting on this to change the process to reflect preferences and shifts in the user experience in a better manner. This is design by doing or continual process learning."

 最初の要求はcollaborative workです。最近のWeb 会議システムを使うとデスクトップやWindowsアプリケーションの共有が可能で,フォーラムと組み合わせることで協調作業の環境は随分と整ってきています。当社でのオフショアでのBPM+SOA開発の経験では,Web会議システムに加え,Tracとビジネスモデリングツールの3つを組み合わせることで反復型の開発を効果的かつ経済的に進めることができました。
 2つめの要求は,開発プロセスに関することです。BPMの2つの成功事例,ひとつはSAP BPM ,もうひとつはLombardiのユーザですが,いずれもアジャイル開発プロセスを採用していました。[2][3].
 アジャイル開発では開発過程においてビジネスユーザを巻き込むことから,BPMにおいてアジャイル開発手法を取り入れるのは自然なアプローチかもしれません。
 このように,技術面ではsocial BPMを適用する環境は整っているのですが,プロジェクトマネジメントの観点からは解決せねばならない課題があります。

1.3 Social BPMのリスク

 Social BPMはオープンイノベーションの一形態と考えることができます。そのメリットは言うまでもなく革新的なアイデアを様々なリソースから収集できることですが,一方,デメリットは様々な要求が寄せられるため,そのコントロールが非常に難しいことです。
 ところが,Crowd Sourcingの事例には,この要求の発散をうまくコントロールしているものがあります。
 Salesforce.comは"Idea Exchange"というWebページを準備しており、このサイトではSalesforce.comユーザは新しい機能の開発要求を提案することができます。これに対し,他のユーザはその提案に賛成かどうかを投票し,もし多くのユーザがその提案を指示すればSalesforce.comはその提案を採用します。Dell も"Idea Storm".という同様のサイトを用意していて、クレーマーと真の顧客要求とをうまく切り分けています。
 これらの事例は,ソーシャルメディアを企業が活用しようとする場合,何らかのコントロールメカニズムが必要であることを示唆しています。

2.Socail BPMのコントロールメカニズムの構築

2.1 コントロールの考え方

 図1はGartnerが提案するするBPMの成熟度モデルである。Level4はGoal-Drivenという表現がされています。

Gartner BPM Maturity Levels [4]
図1 Gartner BPM Maturity Levels [4]

 私たちもTo-Beプロセスは戦略実現のために設計されるべきであるとしており,IT投資においても戦略志向が重要なキーワードとなっています。
 以上から,Social BPMのコントロールはゴールの共有であり,ゴール志向参画型プロセスがSocalBPMのCSFとなります。すなわち,BPMとリンクしたゴール共有システムが必要となってきます。

2.2 ゴール共有システムの要求事項

 このゴール共有システムの要求事項を以下のようにまとめてみました。

(1)ツリー構造
 一般に企業活動は経営レベル,マネジメントレベル,業務レベルの3つのレイヤに分けられ,従って,意思決定ならびにそれをサポートするKPIも3つのレベルがあります。
 戦略レベルの意思決定は,経営陣の責務であり,組織全体の方向性を決定づける再決定のできない非常に重要なものです。マネジメントレベルの意思決定は,戦略の枠組み内において,短期的かつ限定された業務範囲におけるコントロールをするためのものです。
 一方,一般にBPMが対象とする業務レベルの意思決定は,個々の顧客,一つの取引,ビジネスプロセス上の一つのタスクに対してのみ影響を与えるなど一つ一つのビジネス価値は小さいものの総量が多く,蓄積された場合の価値は大きなものとなります。そのため,ルール化され標準として一連のビジネスプロセスに組み込まれているべきものです。
 このように、意思決定ならびにそれをサポートするKPIも3つのレベルがあり、それらは相互に関係づけられていなければなりません。

(2)ビジネスプロセスとの関係が定義されている
 当該指標の値からビジネスプロセスの良し悪しを判断する必要があることから、KPIとビジネスプロセスの関係性が明確になっていないといけません。

(3)共通的に利用できる
 異なる工場間、競合他社との比較ができるようにその指標は少なくとも同じ業態では共通的に利用できないと困ります。

(4)Predictive analyticsを実現
 次の行動のためには、オペレーションレベルであっても傾向把握ができないとモニタリングしている意味がない。

(5)設定コストが安い
 KPIの見直しは必然的に発生するが、そのたびに設定にコストがかかるようだと継続的に利用できない。

(6)難しい操作が不要
 毎日のモニタリングで使用するため直観的に利用できないといけない。

3 再びデモサイト

 ずっとご紹介しているデモサイトですが、改めて、じっくりとアクセスして、上記の要求事項と照らし合わせてみてください。(1)、(4)、(5)、(6)が満足されていることがおわかり頂けるかと思います。

https://demo.ahasystems.com:8443/axel/
UserName Viewer@OsakaGas.example.com
(@を半角にしてください)
Password Viewer

 アクセスするとダッシュボード(Flashboardと呼んでます)の画面が表示されますが、
 At a Glance
を選んでもらうとKPIの一覧をツリー構造でみることができます。
 Tier1がトップレベルですので、ここを選ぶと全部のKPIを見ることができます。
 KPIの表示内容については下記のPDFファイルを参照ください。
 Axel使用方法説明書(簡易版).pdf

 Flashboardの画面でも、KPIツリーからでも良いですが、KPIを一つ選択してクリックするとそのトレンドを示す画面が表示されます。Forecastingを選ぶと今後の予測もみれます。
 いろいろとパラメータをいじって遊んでみてください。

*デモシステムに関する問い合わせ
 Munehira_Toshimi@ogis-ri.co.jp
 (@を半角にしてください)

4 ビジネスプロセスとKPIの関係づけ

 要求事項の(2)と(3)については、BSCを用いるだけでは不十分で、ビジネスプロセスモデリングにも工夫が必要となります。
 この点については、次号で詳しくご紹介します。

<参考資料>

[1] Elise Olding (2011), "Social BPM, Organizational Liquidity and Operational Resilience", Gartner Business Process Management Summit 2011, pp3.

[2] Bill Swanton (2011), "Peaceful and Productive Coexistence of Enterprise Applications and BPM", Gartner Business Process Management Summit 2011, pp15.

[3] Mark Cramer (2011), "Allianz Life Case Study - Improving Processes You No Longer Run", Gartner Business Process Management Summit 2011, pp9.

[4] Janelle Hill (2011), "The Early Stages of BPM Maturity", Gartner Business Process Management Summit 2011, pp1.

 

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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