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「「続」スマートグリッド社会成熟度モデル(第10回)」
株式会社オージス総研

2011年12月号
  • 「「続」スマートグリッド社会成熟度モデル(第10回)」
株式会社オージス総研   乾 昌弘

1. めざすスマートグリッド社会の具体化

 昨年10月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第4回)で述べましたが、具体的な説明を省略した部分がありますので、改めて整理したいと思います。目的は、スマートグリッド社会成熟度モデルでめざしているスマートグリッド社会を明らかにすることです。

1-1.HEMS (※1)

 前回述べましたように、地デジ化やエコポイント制度により、家電を買い換えたばかりの家が多いです。従って、スマート家電(情報家電)の普及が遅れる可能性があります。それに代わるものとして、スマートコンセント[1]があります。この場合、HEMSの需要側は、スマートコンセントを制御することになります。
 なお、HEMSの機能概要は表1のとおりです。

 (※1) マンションなどの集合住宅の場合BEMSと呼ばれることあるが、ここでは、家庭内についての内容であるのでHEMSとした。
 [1] 松山「『エネルギーの情報化』によるスマートエネルギーマネジメント」インフォテック2011、2011年10月

1-2.住民の理解

 住民の理解の完成形は、「住民に対する啓発活動がなされ、省エネのノウハウが共有され、満足度も高い」ということになりますが、そこに至るプロセスも重要です。

○MaloneのCoordination Process Model[2]
 私は以前、教育システムの研究を10年以上おこないましたが、その中にグループ学習システムがありました。この時に知ったのが、MaloneのCoordination Process Model(協調作業の階層構造)です。(図1参照)住民の理解もこのようなプロセスを経て深化するのではないでしょうか?このモデルを「住民の理解」に対応させてみました。

(1) Awareness ⇔ 見える化
見える化によって、各家庭のエネルギー消費量がわかるだけでなく、他の家庭との比較によって多くの気づきがあり、省エネに努めるようになります。また省エネ行動によって、新たな気づきが生まれる場合もあります。
(2) Communication ⇔ 説明会、啓発活動、SNS
住民に対する説明会、啓発活動、SNSなどへの参加によって、単に説明を聞くだけでなく、意見を述べ合うことにより理解が深まります。この場合は、各自のベストの解が、お互いに同じであるとは限りません。試行錯誤の中で見つけていく必要があります。
(3) Collaboration/Cooperation ⇔ 自治会やエネルギー融通をするグループでの話し合い[I]
エネルギーを地域内で融通しあう場合は、話し合いで共通のルールを作る必要があります。
(4) Coordination ⇔自治会やエネルギー融通をするグループでの話し合い[II]
さらに実践をつんでいく中で、問題が生じた場合は、調整を行う必要があります。

 今後、これに基づき「見える化」と「住民の理解」のレベル分けを見直したいと思います。

 [2] T. Malone. Et al., Toward an Interdisciplinary theory of Coordination," MIT Technical CCS TR#120(1991)

1-3.分散型電源/熱源

 分散型電源及び熱源は既に御説明[3]したとおりですが、例えば地中熱を使った換気システム[4]も、自然を使った冷暖房として有効であると思います。

 [3]昨年8月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第2回)
 [4]ジオパワーシステム

1-4.地産地消

 一戸建ては電力の世帯間融通、集合住宅は電力と熱の世帯間融通を想定しています。9月号(「続」スマートグリッド社会成熟度モデル 第7回)第2章のMOMAプロジェクトで述べましたように、住宅ひとつひとつがエネルギーの自給自足を行い、不足する場合は隣の住宅からエネルギー融通を受けることで、地域レベルでのエネルギーマネジメントを実現する方法がよいと思います。
 また、地域の自給率が高いということは、非常時の備えにもなると考えます。

1-5.付加価値サービス

 付加価値サービスの例は、表1に示したとおりですが、積極的に検討しているWGがありますので、ご紹介いたします。

○「スマートハウス情報活用基盤に関する検討活動中間報告書」より
 今年8月に上記中間報告が公開されました。私も当初は参加しておりましたが、平成21年度はeCOM内のスマートハウス整備WGとして活動が開始され、eCOMが解散したため、平成22年度にJIPDEC内にeSHIPSができて活動が継続され、今回中間報告書が公開されました。
 この報告書の中に、多数のサービスから10の有力なサービスが選択されており[5]参考になると思います。
(省エネ、見守り、管理が中心)
・太陽光発電システム無償レンタルによる発電サービス
・集合住宅における省エネ推進サービス
・子供見守りサービス
・家電の使い方サービス
・家財管理サービス
・家電の買換促進保守サービス
・家のカルテサービス
・癒しサービス
・シンデレラハウス(美容と健康)

 [5] 水上「eSHIPSの活動の紹介」インフォテック2011、2011年10月

1-6.結局、経済的に成り立つことが大事

 昨年12月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 最終回)の第2章で述べましたように、各自が経済性を考えて消費行動を行わせることが重要だと思います。例えば、関西電力管内の今夏の節電は、約4%にとどまりました。震災や原発事故・計画停電を身をもって体験していない、あるいは政府・自治体・電力会社で節電の足並みが揃わなかった、などの理由もありますが、経済的なインセンティブがなかったことも原因であると思います。結局は経済的に成り立つことが大事だと思います。

Coordination Process Model
図1 Coordination Process Model

表1.めざすスマートグリッド社会(住宅地域)
昨年10月号(スマートグリッド社会成熟度モデル 第4回)
めざすスマートグリッド社会(住宅地域)

 執筆者略歴
乾昌弘 技術士(情報工学部門)
株式会社オージス総研 技術部 部長補佐
1979年:京都大学工学部精密工学科卒業
1981年:東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1981年:大阪ガス入社
1991年:オージス総研出向
2003年:財団法人エネルギー総合工学研究所出向
2006年より現職

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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