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「ソーシャルメディアの位置づけと課題 第1回」
株式会社オージス総研

2012年02月号
  • 「ソーシャルメディアの位置づけと課題 第1回」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 ※ 本稿は、財団法人経済産業調査会発行 「特許ニュース」 No.13144 (2012 年1 月12 日発行)への寄稿記事です。

1. はじめに

 ソーシャルメディアが世界的にブームになっている。たとえばFacebookを例にあげると、既に利用者数が8億人を超えている。世界の人口が70億だとすると、およそ8.7人に1人がFacebookを利用していることになる。Facebookの利用者数を国に例えると中国、インドに次いで世界で3番目に大きな国ということになる。そういう今この瞬間も利用者は増加し続けている。インドの人口を越えるのも時間の問題であろう。
 ソーシャルメディアの普及は日本においても同様で、情報・調査企業ニールセン(Nielsen)の2011年の7月の調査によれば、mixiは約1,400万人、Twitter約1,500万人、Facebook約1,000万人と軒並み利用者を増やしている。
 また平成23年版年の情報通信白書※1によれば、全回答者中の25.4%が「現在、複数の」ソーシャルメディアを利用しており、17.5%が「現在、1つのみ」利用している。合計で42.9%の回答者が利用していることになる。
 このソーシャルメディア利用者の爆発的増加は、一過性のブームであろうか。この影響は、マーケティング分野だけにとどまらず、広く経営戦略、市場調査、開発、調達、サポートなど、企業における業務プロセス全般に及び、ビジネスにおいても本質的な変革をもたらすものになるのではないだろうか。
 このソーシャルメディアのエンタープライズ利用について、6回の連載の中で多面的に考えていく。
 まず第1回目の本稿では、ソーシャルメディアの現状を踏まえ、その定義、有効性、位置づけ、課題等について、解説を加えていく。

2. ソーシャルメディアの定義

 ところでソーシャルメディアの定義は何であるか考えていく必要があるが、定義を考える前にまずソーシャルメディアの特徴を洗い出す。それらの特徴に合致していれば、ソーシャルルメディアであると言えるだろうか。
 特徴には以下のようなものがある。

  • インターネット上で利用できるサービスである。
  • 情報の発信が容易である。
  • 情報の発信側と受信側の双方向のやり取りが可能である。
  • リアルタイム性がある。

 しかし、これをソーシャルメディアの定義としてしまうと、そこにおさまりきらない場合がある。たとえば、Twitterは比較的片方向の情報発信が多く、「双方向のやり取り」という特徴に関しては、あまり認められない。又、USTREAMで何らかのイベントを中継し、Twitterで意見、質問を受け付けるなど2つ以上のメディアを組み合わせて双方向のやり取りを実現している場合もある。さらに、ブログやYouTubeなどは、ある程度考え、創作したものをネットワーク上にあげることも多く、それほど「リアルタイム性」は要求されない。
 ここで、Twitter、ブログ、YouTubeなどはソーシャルメディアではないのか。これらのメディアを組み合わせることでソーシャルメディアの特徴を持っていれば、ソーシャルメディアと認めて良いのか。などの疑問が生じる。このように考えていくと、前述したソーシャルメディアの特徴をそのままソーシャルメディアの定義とするには無理がありそうだ。
 ソーシャルメディアはまだ新しい言葉なので、定義が定まっているとは言い難い。そして、Google+など新しくソーシャルメディアと呼ばれるものも出てきており、今後ソーシャルメディアの定義も変わる可能性がある。そのため、現時点ではソーシャルメディアの定義も人により異なり、インターネット上でもソーシャルメディアの定義について、意見の対立が見られるようである。
 そこで、ここではソーシャルメディアについて厳格な定義をせず、前述したソーシャルメディアの特徴を持ったものを広くソーシャルメディアと呼んでいく。
 具体的には、Facebook、MixiなどのSNS、ブログやTwitterなどのミニブログ、YouTube、USTREAMなどの動画、そして価格.comなどの商品のレビューサイト、これら全てがソーシャルメディアに含まれると考えていく。

3. ソーシャルメディアの分類

 次にソーシャルメディアを、次の2つの軸を中心に分類してみる。
  参加者同士の繋がりが強い/弱い。
  情報(投稿内容のテーマ)が発散する/集約する。

 Twitterは、ミニブログと言われ、さまざまなことが投稿される。そのため情報(投稿内容のテーマ)は発散しがちである。半匿名で、一方的にフォローをすることができるので、知らない人も気軽にフォローする。そのため参加者はそれほど親密な関係ではない。それに比較して、FacebookやMixiなどのSNSは、誰かとコミュニケーションを開始するには、友達の申請をして、承認を受けるというプロセスを必要としている。そのため、友人や知り合い同士のコミュニケーションツールという側面が強い。しかし、投稿内容は雑談も多く、情報の発散という点では、Twitter以上に発散する傾向が強い。
 特にmixiは検索エンジンにかからないため、よりクローズドな友達同士のSNSという色合いが濃い。Google+は、Twitterのようにフォローだけにしたり、Facebookのように友達としての関係も築ける。その意味でGoogle+はFacebookの特徴とTwitterの特徴をあわせ持っていると言える。ブログは、書き手の専門によってある程度分野は限られるので情報の発散は限られる。また、繋がりもさほど強くなく、たまたまその記事を検索エンジンなどで見つけて読んだという人も含まれる。
 2ちゃんねるはテーマごとにスレッドが立っているが、様々な人が発言するので、横道にそれやすく情報の発散性は強いといえる。また匿名であり、参加者同士の繋がりは弱く、デマなどが広がり易い。
 参加者同士の繋がりは弱く(ほとんどその場限り)、情報が集約している(投稿内容のテーマがまとまっている)ものとしては、ウィキペディア、YouTube、ヤフー知恵袋、価格.comなどがある。
 比較的参加者同士の繋がりが強く、ある特定分野に情報を集約しているものとして、FacebookPageやmixipageが挙げられる。これらは主に、企業や団体、有名人などがブランディングや、ファンとの交流の場として作成するものである。そのため、テーマは企業のブランド、製品、サービスなどに限定されており、情報は集約傾向にある。繋がりのレベルは参加者よって異なるが、その企業の製品を自発的に宣伝するなど、その企業のサポーターとも言える参加者が何人か存在しており、強い繋がりが存在することが多い。
 また、GREEなどソーシャルゲームでは、参加者の目的は特定のゲームに限られ、そして参加者は強い繋がりを持っている。

ソーシャルメディアの分類
図 1 ソーシャルメディアの分類

4. ソーシャルメディアの有効性と注意点

○宣伝効果
 企業は、今までテレビ、雑誌、新聞、Web(自社)などのメディアにより自社製品やサービスの宣伝を行ってきた。その延長線上でソーシャルメディアを宣伝に使うというのは一番素直な考え方ではないだろうか。しかしここで注意すべきは、ソーシャルメディアは単に今までの既存のメディアの延長線上にあるわけではないという事である。今までのメディアは、その企業自身が自社の製品やサービスが良いと宣伝をしているが、ソーシャルメディアは第3者が納得してはじめて、その企業の製品やサービスの宣伝をしてくれるという点である。
 商品を購入するときに、その商品のレビューを見るという人は多い。特に、友人や家族の推薦は、購買意思決定のカギとなる。その意味で、ソーシャルメディアにおいて、その企業と利害関係がない人がその企業の商品やサービスを推薦してくれるというのは、企業にとって、非常に強力な広告手段である。そのような"ファン"をその企業が獲得できれば、今までのメディアよりはるかに効果的な宣伝を行うことができるのである。
 一方ソーシャルメディアは使い方を間違えると、全くの逆効果になってしまう危険性がある。たとえば、企業自らが"さくら"を使って宣伝をして、それが発覚した場合、その反動はとても大きく、消費者のその企業に対する信頼は一気に低下する。既存のメディアにおいても、"さくら"は存在した。しかし、既存のメディアの場合、もともと消費者もその企業の宣伝であると理解しているので、"さくら"だとわかっても、それほどのショックはない。(もともとそれほどの信頼関係は存在していない)
 一方ソーシャルメディアにおいて、一度その企業の"ファン"になった消費者は、その企業を深く信頼しており、そのぶん裏切られたと感じた時の反動が大きいと考えられる。
 そのため企業はあせらず、まずは、消費者との信頼関係を構築すべきである。信頼関係を築いた消費者は、その企業の"ファン"となり、結果として一騎当千の働きをしてくれる場合がある。
 
○人脈構築
 ソーシャルメディアが普及する以前は、人脈は組織内外で、直接対面することで徐々に築いていくものであった。そのため人脈づくりにはある程度範囲が限られ、またそれなりの時間がかかった。しかし、ソーシャルメディアにより、既存の組織の範囲や時間を超えて、人脈を広げることが可能になった。ある特定の分野で情報発信、受信を行っていると、その分野に興味を持っている人が自然と集まってくる。
 若い人は、Twitterなどで何度か意見交換をし、気が会えば直接会ってビジネスに繋げていくようなことも行っているようである。
 たいていは、継続的に仕事を行っている人とは頻繁にやり取りをしていても、その仕事が終わると、次第にやり取りが減ってくる。また一度会ったが、そのとき、ビジネスに発展しない場合、それっきりになり忘れてしまうことも多い。
 ソーシャルメディアを使うことで、これらの人脈が継続的に維持され、広がり、その後ビジネスに発展することがあるのである。
 
○意見収集
 企業は「消費者はどのような商品を欲しいと考えているのか?」「現状の製品の改善点に関してどのような意見を持っているのか?」という情報を欲しいと思っているが、消費者は、何かを思っていても、あえて企業にメールしたり、電話したりして、それを積極的に伝える人は少ない。積極的に意見を言うのは、クレーマーかその商品にとても愛着を持っている人のどちらかである。大多数の人は、思うことはあっても、何も言わず、せいぜい友達に話す程度であった。今までは、たとえその表面化しない声が大多数の共通意見だったとしても、企業のマーケッターは、このサイレントマジョリティの声を聞くことができなかったのである。しかし、ソーシャルメディアには、今まで消えていたこのつぶやきが数多く存在するようになった。企業のマーケッターは、ソーシャルメディア上に飛び交う膨大なデータを分析、解析し、商品の改善に活かすことができ、また必要に応じて企業側から積極的に消費者にサポート(アクティブサポート)をすることが可能になった。ソフトバンク社の@SBcareは、Twitterにおいてのカスタマーサポート・アカウントである。不満やトラブルがある顧客を見つけ出し、サポートを行っている。
 さらにマスメディアでは報道しない。ちっぽけな情報の収集にも向いている。消費者の好みは多様化しロングテールになってきており、これらの声を収集することも可能である。
 
○共創
 口コミなどにより、顧客の声を積極的に取り入れていくだけでなく、それぞれの顧客の好み、事情、背景などを理解し、顧客の満足を得ることで、信頼関係が高まる。さらには、顧客が企業や商品、サービスなどに共感をして、商品やサービスの作りのアイディアを出したり、実際に作ったりすることで、積極的に企業に参加するようになる。そうなると企業ブランド、商品、サービスは、企業が一方的に作り上げるものではなく、顧客とともに作り上げるものとなってくる。
 企業の話ではないが、ソーシャルメディアの参加者が快挙を成し遂げた例がある。科学者が10年間かかっても解けなかった問題をオンライン・ゲーム「Foldit」をしていたグループがわずか10日で解いたというのである。「Foldit」は、科学的法則に合致するタンパク質の3次元構造を見つけるオンライン・ゲームである。この「Foldit」でエイズの治療法を見つける鍵となる可能性がある酵素の構造を発見したということである。
 このように、ある一つの企業や団体、業界では、解決できないような問題も増えており、それらの解決の手段として、ソーシャルメディアを利用した様々な人との共創がはじまっている。

5. ソーシャルメディアの位置づけ

○B to CからB with C、B to Bは?
 顧客と一緒に、作り上げるという意味で、コンシューマ向けの製品やサービスを提供している会社は、B to CからB with Cに変わっていくと言える。では、B to Bの企業はどうなるのであろうか。B to Bの企業もソーシャルメディアにより変化しつつあると言える。今までB to Bの場合、会社対会社で、関係部署の担当者同士が会話を始めることが多かった。一方の会社の関係部署の担当者が異動になれば、業務は前任の担当者から後任の担当者に引き継がれ、後任の担当者が引き続き業務を行うことになる。この時異動した、前任の担当者と相手方の会社の担当者とは繋がりがなくなる。あくまでも、会社の関係部署の担当者同士でのつながりにしかすぎず、担当者が変わると同時に取引がなくなることも多い。
 ところが、ソーシャルメディアを利用すると、まず担当者同士の日常的なコミュニケーションの中から、信頼関係が生まれ、その後会話の中で、取引が始まるのである。一度取引が始まると、信頼関係で結ばれているので、繰り返し取引が行われることが多い。
 
○現実を拡張するソーシャルメディア
 情報通信白書平成23年版※2によると、「10代の約半数、20代の約3分の1がソーシャルメディアを利用する際に携帯電話やPHS、スマートフォンを主に用いる等モバイル端末でのソーシャルメディア利用が一般化している。」とある。
 若年層ほどパソコンよりも、モバイル端末を主に用いる比率が多くなっている。実際これら若年層はモバイル端末を、朝目覚めてまず手にして、電車で移動するときはもちろん、ちょっとした合間にも、そして夜中に寝りに落ちるまで一日中使っている。このようなソーシャルメディアネイティブな世代にとって、ソーシャルメディアの存在するインターネットの世界は仮想の世界ではなく、現実世界の一部のようである。その意味では、これらインターネットの世界を、現実世界の対立概念ではなく、現実世界をさらに広げるものとして捉えているのであろう。
 社会人になると、身近な会社の同僚や趣味の仲間との交流はあるが、学生時代の友達、転職した人であれば、昔の会社の同僚などとは疎遠になりがちである。しかし、ソーシャルメディアを利用することで、繋がりが復活し、日常的に会話をするようになる。もちろん現在の知り合い、友達との関係も深まる。
 これを、Facebookの筆者のある友達は次のように表現していた。
 「自分の体や五感が拡張されているのを感じる」
 この感覚は、実際にソーシャルメディアを体験してみるとわかる。特に、Facebookなど、実名のソーシャルメディアの場合、現実とネットワークが重なり拡張するのを体感できる。
 
○組織とソーシャルメディア
 次に組織とソーシャルメディアとの関係を考えてみる。会社組織は、上から下へのツリー構造である。つまり上司は部下に対して指示/命令をし、部下は上司に対して、報告、連絡、相談をするという縦のコミュニケーションの関係である。
 一方ソーシャルメディアのコミュニケーションは、上下関係ではなく横の関係である。行われるのは、報告、お知らせ、相談などである。
 会社組織においては、ときに縦の関係と横の関係が対立する。
 ある会社において上司は自分の部署が主幹する業務の全てを掌握する必要があり、そのため上司は部下に報告、連絡、相談を自分にさせる。そうして自分の部署が主管する業務の情報を全て自分に集めるようにしている。
 しかし、ここに、ソーシャルメディアが入ってくると、どうなるであろうか。今まで、部下から上司にしか行われなかった報告、連絡、相談などの一部が、ソーシャルメディアを通して、会社の異なる部署の人に対して行われることになる。
 そうすると、必ずしも、主幹部署の上司のみに情報が集まるとは限らず、また、ときには他部署は知っているが、主幹部署は知らないということも発生してしまう。
 全体最適で考えれば、必要な情報がより広い情報源から得られる、組織間の風通しが良くなる、サイロ化など縦割りの弊害が低減するなどのメリットがある。しかし、主幹部署の上司にとっては、管理上ソーシャルメディアは、邪魔な存在になってしまう可能性がある。
 同一会社内においては、社長はもともと会社全体を掌握しているので、全体最適を押し進めたいと考えるだろう。しかし会社の枠を飛び越えて、他社と交流するようなソーシャルメディアの場合には、社員が異なる会社(の個人)と様々な交流をすることになる。そのため主幹部門の上司はもちろん、社長にさえ全ての情報がいくとは限らないので、カバナンスの方法を変更しないとならない。
 
○信頼関係の構築が重要
 かつて、会社では運動会や社内旅行、業務の後の飲み会などが盛んに行われていた。その後、仕事の忙しさや、プライベートな時間の重視などの考え方から取りやめる会社が増えたが、また最近復活の兆しがみられるようだ。もちろん会社において、これらのイベントは、直接業務に関係するわけではない。またイベントに要する費用と売上の因果関係はなかなかストレートには証明できないであろう。しかし、このような業務外での活動を通して、互いの考え方を理解し、コミュニケーションがスムースになり、信頼関係が築かれ、業務が進みやすくなることは経験上分かっているのではないだろうか。
 社内での、ソーシャルメディアの利用は、従来の運動会や飲み会と同様の役割があると考えられる。小さな会社ならば、ちょっとした飲み会も社員全員で行われるので、コミュニケーションという面では十分かもしれない。しかし大きな会社だと、社員同士名前も顔も知らないということはごくあたりまえにある。同一部署でのコミュニケーションは可能かもしれないが、会社組織を横断したコミュニケーションは難しい。そして最近の仕事では、解決すべき問題が複雑化しており、1つの部署だけ(場合によっては1つの会社)では対処できないことも多いようである。そこに、ソーシャルメディアを活用する場面が大いにある。
 

6. ソーシャルメディアに無関係ではいられない。

 ソーシャルメディアにはメリットも大きいが、だからといってソーシャルメディアを無条件に導入するのは薦められない。
 ソーシャルメディアを企業が使用する場合、気にかかるのが炎上である。特に有名企業や個人を顧客としている企業は炎上がおこりやすい。
 しかし、炎上を怖がって、ソーシャルメディアを全く使わないというのも解決策にならない。たとえ企業が自社で、ソーシャルメディアを導入しない場合でも、全くソーシャルメディアに無関係ではいられないからだ。
 次のような例がある。ホテルの従業員が、有名人がお客さんとして来たのをTwitterでつぶやいてしまった。レストランの店員が来店したお客さんを中傷してしまう、などである。当然、そのホテルやレストランへの批判が集まり炎上する。たとえ従業員や店員がアルバイトであったとしても、結果は同じである。企業はアルバイトも含む、従業員や店員の教育を万全にしておく必要があるということになる。
 それとは別にお客さんがソーシャルメディアを使用していることもあるが、これは止めようがない。
 次にソーシャルメディアを軽視し利用しなかった例と重視し利用した例を挙げる。
 ・コンチネンタル航空 離陸失敗事例
 コンチネンタル航空がデンバー空港で離陸に失敗し、滑走路をオーバーランする事故が発生した。そのとき乗客の一人が機内でTwitterを利用して実況中継を始めた。そのツイートは瞬く間に広がり、多数の人が事故の状況をリアルタイムに知ることになった。その後コンチネンタル航空は公式発表を行ったが、自分が唯一の情報源と思っていたため自分に都合が良い情報を中心に出した。そして、Twitterの情報は無視した。そこで既にTwitterから深く情報を知っていたメディアに、追及され、立ち往生することになった。
 ・サウスウェスト航空 機体損傷事例
 サウスウェスト航空はフライト時に、機体にバスケットボール大の穴が開いているのを発見した。緊急着陸すると、乗客は一斉にTwitterや動画(YouTube)で投稿を始めた。ここまでは、コンチネンタル航空と同じ状況である。しかし、サウスウェスト航空はTwitterを導入しており、Twitterの責任者は、直ちに謝罪するとともに,すべての飛行機を今晩中に検査すること,すべての乗客の運賃を返還することをTwitterで知らせることで事態を早期に収束させ、その結果炎上も免れた。
 

7. ソーシャルメディアの課題

○ルールやマナーの確立
 現実社会においてはルールやマナーは、子供のころから親や、先生、周りの大人から教わってきた。しかしソーシャルメディアは、まだ出来て間もないため、それを使っている人のルールやマナーがまだ整備されていない。
 また、社会的な自分とパーソナルな自分との使い分けも難しい。実名ならば、社会的な自分であるが、仮名(かめい)や匿名だとパーソナルな自分を出し自己中心的になってしまう。
 人は、街中では誰かの目があるので、ルールやマナーを守るが、旅の恥はかき捨てと言うように、遠いところや人目につかないところでは、少し自分に甘くなってしまう傾向がある。インターネットでは旅先と同様にいつもとは異なるところに来たように思え、一見知っている人はいないように錯覚してしまう傾向がある。しかし実際は、インターネット上のソーシャルメディアでは、街中以上にたくさんの人の目があり、また、電子的に残る。そのため一度インターネット上にあげてしまえば、たとえ自分で上げたものを削除したとしても、コピーを取られていれば、インターネット上から完全に削除することは、ほぼ不可能となる。
 炎上や情報漏洩を回避するために、ルールやマナーの確立が重要である。企業においては、ソーシャルメディアのポリシーやガイドラインを確立すべきである。
 
○著作権 肖像権
 仮名(かめい)や匿名とはいえ、著作権の侵害、肖像権の侵害、名誉棄損などになることを、不用意に行ってしまえば、大きな問題になる。完全に匿名なソーシャルメディアでも、その気になって調べれば個人が特定がされる。それは、尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件において、アクセスログなどの解析結果から、YouTubeへの投稿は神戸市内のネットカフェから行われたことが判明し、神戸市にある第五管区海上保安本部・海上保安官が上司に自分映像を流出したと告白に至ったという例を見ても明らかである。
 この法律上の問題については、第5回目に記述する予定である。
 
○セキュリティ
 ソーシャルメディアは、セキュリティに関しても注意が必要である。米国Barracuda Networks社の調査研究部門Barracuda Labsが行った、20カ国以上数百人からのアンケートを分析した結果※3によると、
 迷惑メール91.9%、フィッシング詐欺54.3%、マルウェア攻撃23.3%、アカウント悪用迷惑メール送信16.6%、アカウント乗っ取り・パスワード盗難13.0%など、想像以上の被害が発生している。
 
○犯罪
 ソーシャルメディアは、犯罪にも利用される。フラッシュモブという言葉は昔からあり、E-MAILなどを利用して、不特定多数が、公共の場に結集し、あらかじめ申し合わせた行動をとり、即座に解散することを言う。たとえば街中で突如ダンスをしたり、駅の中で突然大勢の人が動きを止めたり、倒れたり、まくら投げバトルを行ったりする。これらは、まわりに迷惑をかけて問題になることはあるが、いたずらのレベルであった。
  ところがこれとは一線を画す、集団窃盗、略奪、暴行などフラッシュモブ犯罪と呼ばれるものがアメリカを中心に広がってきた。
 アメリカでは、Twitter やFacebookを利用して、数十人もの人が突然現れ、集団で商店や通行人を襲うという犯罪が起きている。コンビニエンスストアなどに現れ、次々に商品をつかむと、そのまま金を払わずに、店の外へ出て行ってしまう。あまりに人数が多いため、店員はなすすべもない。
 
○革命
 ソーシャルメディアは、革命にも大きく関わっている。これが課題なのかメリットなのかは体制側、反体制側によって意見は異なるのであろうが。
 チュニジアで発生したジャスミン革命(民主化運動)では、Twitter、Facebook、Youtubeなどのソーシャルメディアがデモ動員に大きな役割を果たした。もちろんソーシャルメディアが原因で革命が起きたわけではないが、ソーシャルメディアを使うことで、非常に早く情報が伝わった。ソーシャルメディアのように双方向でない、一方的な情報発信のみだと、ここまで広がらなかった可能性が高い。
 また、エジプト革命(エジプト騒乱)の発端となった2011年1月25日のデモでは、複数団体がFacebookを用いてデモ参加の呼びかけをおこなった。このFacebookでの呼びかけがさらにTwitterで爆発的に広がりデモ参加者を増やした。
 

8. まとめ

 本稿では、ソーシャルメディアの位置づけと課題について、考察してきた。ソーシャルメディアは、単にメールやWebの延長線上にあるものではなく、質的変革を伴うものである。
 次回は、ソーシャルメディアの最も大きな課題である炎上の原因と、ソーシャルメディアを形成する技術などを中心に解説する予定である。

※1 情報通信白書平成23年版
 図表3-2-3-1
※2 情報通信白書平成23年版
 図表3-2-3-2
※3 BARRACUDALABS
 セキュリティとプライバシーに関するレポート2011

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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